『猟奇的な彼女』への不満 | 泉忠司オフィシャルブログ ミリオンセラーの泉

『猟奇的な彼女』への不満

『猟奇的な彼女』をドラマでやってますね。第1話はよかったと思うのですが、第2話でガッカリ。今日の第3話は一応つけてはいましたが、仕事をしながら、片手間に…という感じです。このままではもう見なくなるでしょう。

ちょっと無茶苦茶なんですよね。100%非現実的な演出は問題ないのです。マンガ的というか、そのあたりは、好みはあるでしょうが、OKです。例えば、第3話で、三朗と南が面白いほどにすれ違って、最後に、三郎に凛子が寄り添って寝ているところを見る…なんてのはいいんです。あそこまでやり過ぎちゃえば、完全にマンガになってますから、そういうドラマとして見れば、OKです。

でも、登場人物の心情と実際の行為にリアルさのかけらもないご都合主義な展開は、見ていてちょっと不快になります。例えば、第2話で遊園地に落し物をしたという凛子を三朗が探しに行く場面。それまでに描いてきた三朗の心理描写からすると、隣にいる南を連れて行かないのは絶対に変でしょ…。という類のことが多すぎて…。

物語を作る際に、まずは登場人物の設定をしっかりと行ないます。そして、書いている途中で、執筆前に想定していたプロット通りの展開が、登場人物のキャラクターや、それまでに描いてきた他の登場人物への想いからすると、不自然になるケースがたまにあります。そういうとき、予定通りのプロットにしちゃうと、一気に登場人物が死んでしまうので、僕は登場人物が語るとおりに語らせるし、登場人物が動くとおりに動いてもらいます。

『猟奇的な彼女』は明らかに予定調和的に描かれています。そして、予定調和的に描きたいなら、そういうふうに登場人物が動いておかしくないように描いておかなきゃ…。ってあたりが、どうしても、見ていてイライラしちゃうのです。つまり、大枠の部分では登場人物の相関関係をきちんと描いていても、細部に問題があるというか…。

草薙さんや田中さんをはじめ、キャストはみんな上手に演技をしてるのに、そして、映画版はよかったのに、さらに、脚本が大御所の坂元裕二さんなのに…と思うと、もったいない気がしてなりません。あのドラマ、もっとよくなるのになぁ…。坂本さんなら、もっともっと、あのドラマにリアルな心理描写を描きこめるはずなのに…と期待せずにはいられません。というか、期待が大きかっただけに、不満に思っちゃうのかな…。ところどころ、坂本さんならではの『東京ラブストーリー』的な仕掛けはあって、さすがだなと思う場面も多いのですが。

それにしても、松下奈緒さんはいいですね!演技力という点ではまだ初々しい部分がありますが、映画『未来予想図』でもいいと思ったし、単純に僕の個人的な好みなんでしょう(笑)。