実はブログを書かなかったここ数か月、僕は記憶を失っていました。
目覚めた瞬間は何が何だかわからなかった。
どうやらここは病院らしい。知らない天井。知らない手触りのシーツや布団。知らない匂い。
すすり泣くような声が聞こえる。
体は激痛の為全く動かせそうにない、が、かろうじて首を少し動かせる。
苦痛に悶え、横を見やると女が一人。涙で顔をぐしょぐしょにしながら驚きの表情を浮かべていた。
「ここは、どこ・・?きみは・・・?」俺は聞く。
また何か大変な問題でも生まれてしまったかのような困惑した表情を浮かべその女は俺の肩を掴み言った。
「私よ!ジェーンよ!!忘れてしまったとでも言うの!?オーマイガッ!」
その一言に女を思い出そうとするが頭が痛むばかりで何も思い出せない。ホーリィシット!俺は震える手でベッドを打つ。
記憶障害ってやつのようだ。ママのミートパイの味すら思い出せそうにn・・・・・・・・・。
飽きた。
ブログをさぼった理由を記憶喪失で誤魔化そうとしたが全く誤魔化せてない上、やっすいドラマ仕立てになってしまった。反省点としてはお洒落感と「記憶を失ってたならブログさぼってもしょうがないよね」感を演出しようとしてアメリカ文化を取り入れようとした点であろうか。
つか、ジェーンて誰だ。
本題である。
先日、オッサンにナンパされた。
電車内で。山手線内で。お昼前から!
経緯はこうだ。
友人が勤めている居酒屋のママが店内のメニューを作り直したいと依頼してきた。
俺はデザイナー屋さんでもなければ、メニュー作り直し屋さんでもないがお世話になっている店のママの頼みとあっては断るわけにはいかない。
今現在のメニューの原本と修正したい要望をまとめメールでくれといっても、ママも友人も「いんたーねっと」という言葉を最近知ったようなタイプの方々なので手渡しで受け取るしかない。
それを受け取りに向かう最中に事は起きた。
山手線で新宿に向かっていると池袋であっただろうか、何人かのお客が乗ってきたが平日の昼前である。朝のラッシュはとうに過ぎ、空席もまばらにあり足腰の弱ってるお年寄りにも優しい時間帯だ。
が、デカいキャリーを引きずったオッサンは俺の目の前で足を止めた。
俺の横もそこらの席と同じように空いていたため『二席使うほど僕の体の体積はずんぐりむっくりしてはおりまへん。よかったらお座りありんす』と心で呟き、体をちょいとずらした。
すると「いい、いい!コレ大きいから」とキャリーを指すジェスチャーをした。
別に無理して座ってほしい訳でもないので、それならそれで、という風体で顔を窓の外に向けた。んー、いい天気だ!秋晴れってやつだな。洗濯すりゃよかったとか考えていると、視界の隅に先のオッサンが映り込む。
完全に俺を見ている。ロックオンされている。さらには妙なことをオッサンは始めた。
両手の親指と人差し指で四角のフレームを作りカメラマンよろしくそのフレームに俺を収めている。
なにこの状況。
デカいキャリーのオッサンが通路の真ん中で席に座ってそっぽ向いてる若めのおっさんを指で囲ったフレームに収納している。
「え、と。なんですか・・・?」俺は聞く。当然だ。
「あーごめんごめんイ・ビョンホンに似てたからつい(照)」
つい(照)じゃねぇ!!
オッサンは続ける。
「カメラマンもやってるからさ、いいもの見るとついカメラに収めたくなるんだよねぇー」
「僕の奥さんがイ・ビョンホンのファンでさー」と続ける。
ゲイのオッサンにロックオンされたわけではなかったようだが、にしても面倒な手合いに声かけられたもんだ。
も、って言った。どうにも「他には何をしてるんですか?」って聞いてほしそうだ。
サービス精神旺盛な俺は聞いた。
「んー、カメラマンでしょ歌も歌ってるでしょ、詩も書くし、気功師もやってるし手品もやるよ。あ、手品は友達作る時とかによく使うんだ☆」
と言って、頼んでもないのに電車内で手品を始めた。
手品を続けるオッサンに、だんだんめんどくさくなってきた俺は「なんかいろいろやってるんですねー」と話を終わらせようとした。
「うん。要は魔法使いかな☆」
夏を過ぎても頭の中がバカンスしてる人はいるものである。
電車が新宿駅に着き「じゃ、俺はここで。」と永遠にも似たランデヴーに終止符を打とうとした。が、「僕もここなんだよ!縁があるねー!」と、一緒に降りた・・・。
「よかったらお茶でも行かない?」
決まり文句である。しかし地獄の一丁目で電車を降りた時点で時間の許す限り、面白人間観察欲求スイッチが入った俺は根掘り葉掘りオッサンの生態を観察してやろうと決めたのだ。
ひとまず目的であるメニューの原本や要望書を友人から受け取る目的をまずは果たさなくてはならない。友人とは新宿駅構内で待ち合わせしていた。
が、その友人は一向に現れない。メールをしても返ってこない。待つしかない。
待ってる間はオッサンからの質問攻めだ。
「仕事は?歳は?この後の予定は?」
わざわざ嘘をつくほどの事でもないので、正直に「27歳、役者やってます。食えてるわけじゃないけど。この後稽古がある。」と答えた。
「あー!!!役者ぁ!!!道理でぇ!!!」
何かの地雷を踏んだ音がした。何が道理なのかも甚だ定かじゃない。
また被写体を指内フレームに収める作業が始まった。
「んーでも、役者やるには今はまだ腹に気が座ってないかなー」
突然批評が始まった!
「ちょっと握手しよう!」
言われるままに手を出す。
「あー!将棋の羽生さんと同じ気を持ってるね!才能あるよ!でもまだ自分で自分の才能に気が付いてないね!!」
役者じゃなくて将棋の!?
「気が座ってるとね、こうゆうことができるようになるんだよ!」と言って、自分の被っていたキャップをそこらの人溜まりに向かって放り投げた!
突然自分に向かって何かが飛んできた女性たちは軽い悲鳴を上げる。
オッサンは普通に取りに行く。
帰ってくるなり、地図を見ていたおばさんに後ろからその帽子を被せる!
書いてて思うけど、やられた方からしたら結構なテロだよね。
「ね?こうゆうことができるようになるわけ☆」
なにが「ね?」なのか微塵もわからない。
そうこうしていると友人が「寝坊したぁ~ん」と言ってやってきた。
メニュー等を受け取りその場で簡単な打ち合わせをしていると、オッサンはキャリーからカメラを取り出し、何かそこらを回転しながら撮りまくっていた。
友人に事情を話すとオッサンが割り込んできて先程俺にした自己紹介を始めた。
「カメラマンもやってるし、歌も歌ってる、詩も書くし気功師もやってるし手品もやってるよ!要は魔法使いだね☆あと、革命家」
なんか付け足されたァッ!!!
友人も気のいい奴なので革命家を名乗る所以をふんふん聞いてやがる。
まだ時間はあったが、友人まで巻き込むわけにゃイカンと話を切り上げた。
昔から変なオッサンには事欠かない俺であるが、なかなかどうして上級のめんどくさいオッサンに目を付けられたってお話でした。
ちなみに携帯番号は交換しました。
いずれ続くかもね。
つか、ジェーンて誰だ。
ほげほげ