前回の「代理ママを雇ってみたら大赤字に。」の後日談になります。

大赤字の居酒屋は潰れてしまうのか、あるいは黒字化できるのか?

 

ここで少しの間、私の妹を紹介させていただくことにお許しを願います。

妹の初めての就職先はアパレル業で、女性服の販売員をしていました。

接客の売り上げで成績が決まる厳しい競争の世界で、妹が店長職に

昇進したときは、母の居酒屋の跡目を継ぐのにふさわしく思いました。

 

アパレルで培った妹の腕前は、居酒屋の世界においてもさぞや大いに

発揮されるものと、私も母もそう信じていました。そしていつかは、母を

超えるような人物になるのかもしれない、今は臆病に見えても、業務に

馴れたら、いまは眠っている才能を開花させてくれると思っていました。

 

夜間に1人で居酒屋を経営することなんて怖くてできません、と怯える

妹をサポートするために、私は妹と共同経営を始めることになりました。

妹がこの業務に馴れてこの仕事に自信がついたときは、ここの経営は

妹1人に任せようと、共同で始める前からそのようにきめていたのです。

 

妹との共同経営を始めて、一年後には常連になる人がつき始めました。

しかし売り上げを黒字化することまではできず、毎月の赤字を少なくする

ことで精一杯でした。黒字にすることで、妹に自信を与えられると信じる

私は、どうにかその突破口をつくろうと、毎日真剣に悩んでいたものです。

 

分析をしてみると、私の店で常連になっていた人は、小口の売り上げに

貢献する人が大勢で、収入の柱になる大口のお客様はいませんでした。

小口の常連さんたちはお行儀の良い人ばかりで、扱いが楽である反面、

黒字化を目指すのなら、そうした人も上手に取り込む必要がありました。

 

うつ病を患っていらして、つい先ほどまではニコニコと笑っていらしたのに、

次の瞬間には大声で怒り出して、周りの人たちにご迷惑になる困った人が、

一ヶ月に一度ほど私のお店にお見えになることがありましたが、この人は

大口様でした。黒字化を目指すのにはお客のえり好みはしていられません。

 

頑張りの末に、その大口様を私のお店の常連に加えることができました。
ですが、そのかわりに小口の常連様たちを失っては元も子もなくなります。

大口様のご迷惑が他のお客様に及ばぬよう、常に気苦労がありましたが、

そうした努力を実らせたことで、赤字からの脱出が可能になったのでした。

 

更に一年間が経って、新たな常連も多く増えて、経営は軌道に乗りました。

この時点で問題のある大口客は店から追い出しました。これまで有り難う。

妹と共同で経営を始めてから丸2年で、大赤字を毎月生んでいたお店は

黒字をだせるようになりました。経営のバトンはこのとき引き継がれました。