「cocoon」※すごいネタバレ【8/14 追記】 | 中本オンザ乱

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元料理メモブログ。

演劇団体マームとジプシーの舞台「cocoon」を観てきました。
原作は「みかこさん」で有名な今日マチ子さんの同タイトルの漫画です。
すごいネタバレするからこれから読んだり観たりする人は見るんじゃないぞ。






【すごいネタバレの原作あらすじ】
戦時中の沖縄。
主人公のサン、普通の女の子。
サンの親友で東京からの転校生、マユ、背が高くて整った顔立ちの「王子様」。
二人は他の女学生たちと一緒に島の学校に通っている。

戦況が慌ただしくなり、生徒たちは看護隊として、負傷兵を受け入れているガマへ派遣される。
「わたし男の人が怖い!」
サンを元気づけるマユ。
「いいかいサン ここには男の人なんていない」「男の人はみんな白い影法師」
「想像してみて 自分たちは雪空のような繭に守られていると」
彼女たちは少ない食事、負傷兵のむごたらしい傷、血、肉、蛆、死体、友達の死という惨状を目の当たりにしどんどん疲弊していく。

やがて、ガマは日本軍の基地として占有されることになり、女学生たちはガマを出ることになる。
ガマの外にあるのは、火、銃弾、爆弾、飢え。走って逃げる。
足を撃たれて自ら、飢えに力つき、
彼女たちは、一人また一人、命を落としていく。
さらに、水を飲みに一人離れたサンは手負いの日本兵に襲われる。
男を彼女から引き離すマユ。サンは逃げ、マユは男を絞め殺す。
「おまえ… 女じゃ な…」

やがて、とうとう二人きりになってしまったサンとマユは海へたどり着く。
そこでは、女学生たちが輪になり自決をしようとしていた。
二人は海伝いに逃げるために手をつないだまま岬へひたすら走る。
海からの銃弾がマユの腹を貫く。浜に倒れるマユ。
「嫌いにならないでほしい 人を殺した」「好きだよサン」
「わたしも」
マユはかつてサンを元気づけた「おまじない」の言葉をせがむ。
「わたしたちは想像の繭に守られている」
マユを楽にさせるために服を脱がせるサン。

収容所。新しい暮らし。
少年と、作業を終えるサンの睦ましげな会話。
母との再会。
「繭が壊れてわたしは羽化した」
「翅はあるけど飛ぶことはできない」
「だから生きていくことにした」




会場は池袋芸術劇場(学生時代は「迎撃」と呼んでたなぁ)の地下のシアター。
ステージは腰ぐらいの高さで、正面と両サイドから観劇できる仕様。砂が敷き詰めてあった。
私は運良く正面最前列に。
あまり演劇見たこと無かったので、映画を観るときと同じテンションで臨む。


【オープニング】
青柳いづみさん扮するサンの独白から始まる。
走り続けなければならない夢の話。海に向かって逃げる夢。
これは、史実を元に作られた、夢を見ているような話。
普通のことを考えたり喋ったりしている例えば今すぐその辺りにいるような女の子たちが戦火に巻き込まれる話。
「だれも死にたくなんてなかった」
原作はモノローグは特に無く、サンとマユの会話から始まっている。
この舞台では、物語そのものが「夢」だ。
つまり、登場人物たちのものであり、私たち観客のものにもなり得るということだと思う。
離れた安全な位置からの「かわいそう」は求められていない。
そのようにあのモノローグによって案内されたんだろうな。

【学校】
日常の何でもない会話が、角度を変えて繰り返される。
その中で、登場人物(女学生たち)の紹介が進む。
これが「マームとジプシー」の演出らしい。
正直最初はよくわからなかった。
木の枠やゴム紐に何の意味があって、なぜ同じ台詞を何度も繰り返すのか、とか。
でもあれだけ人数がいたら正直繰り返してもらわないと覚えきれないし、
枠やゴム紐は最低限ぎりぎりの舞台装置だ。
何もない舞台を部屋と部屋に分けたり、今誰の話をしているのかは枠をかけることでわかりやすく。
演劇っておもしろいね!

【役者さんたち】
多くてびっくりした。
原作に名前付きで出てくるのは、
サン、マユ、エッちゃん、ひなちゃん、マリとユリ、タマキさん。
舞台上にいる女学生は17人!
ちゃんと覚えてるのは何人いるかな…
さとこ、モモちゃん、カナちゃん、なっちゃん、コウちゃん、きっちゃん、(サザエさん気味の髪形の「何ですかだらしないですか」の人)、カズハ、的場さん、あと一人多分学級委員長!
二人名前覚えられなかった。悔しい。
あのね、マユが王子様すぎてびっくりした。
イケメン!!っていう感じじゃなくて、かっこいい女の先輩って感じで。
女子校だったらめちゃくちゃモテる感じの人だった。ドキドキした。
青柳さんはどこかでお見かけしたことあるけど華奢でかわいらしい人だった。
でもふくらはぎが意外としっかりしててその後の演技も見て役者さんって大変なんだなって…
タマキさんは絶妙ないけすかなさだった笑
美人すぎないのが逆にいいね。
原作はいけすかない美人だったけど、舞台のタマキさんはいけすかないやや可愛い人だった。
よりいけすかない!笑
みんなめちゃくちゃ走ってた。何やってるのかわからないぐらい。
でもあれぐらい意味の分からないほど走ってるのが、戦火から逃れるときの感じなのかも。

【看護隊としてガマで】
このあたりからもう泣いてました。
やっぱりリアルタイムで役者さんが叫んだり泣いたりしてるの見ると、
同情とかよりも同調してしまう。もし自分がここに居たら…って。
「男の人」役の尾野島さん(?)が怖かった。
威圧感とかじゃなくて、得体が知れない感じ。
テンションとか言ってることとかわけわかんなくてぞっとした。
私もちょっと男の人嫌いになりそうだった。よく出来てます。

【ガマを追われて】
辛い…。
死には慣れたくないです。そういう感想。
誰かが死ぬシーン、大げさじゃないの。
だから、あ、死んじゃった。みたいな気持ちにちょっとなる。
死ぬ人は本当に必死で、生きたくて仕方ないっていうのが弾けそうな感じ。
それでも死んでしまうときの動きとかはただ地味で。
普通にどうでもいい会話してた女の子が急に死から逃げて、逃げても逃げ切れなくて、精一杯がんばったのに「ハイ終わり」って死んでいくのは、怖い。

【星空の下で】
サンが強姦されて、マユが男を殺すところです。
気持ち悪かった。
この頭のおかしくなった日本兵の役も尾野島さん。
ここまでで完全に「男怖い、気持ち悪い」という印象に加え、
何と言うか…ちょっとリアルなのに淡々としているというか…サンも犯されながら台詞は続けてるし。
マユに「女じゃないな」っていう台詞は使われてなかった。

【集団自決】
サンに対してモヤモヤした気持ちになったのは、
「『敵に純潔を奪われるぐらいなら死ぬ』という輪に(既に純潔でない)自分は加われない」というサンの気持ちからだと思う。
私は結構前に純潔を無駄づかいしました。別に後悔はしていない。
でも、「純潔でないがために死を選ぶことすらできない」サンに対して、
正直少し悔しくなったんだと思う。

【マユの死】
ええ、まあサンに対して悔しいと思っていることは自覚してましたよ。
だってマユが素敵すぎるから!
ただね、正直もっと百合百合(?)してて欲しかったなぁ…
サンがマユのこと好きだっていう描写はあった。
「マユのことばかり考えていた」「私、クソだな」
でもマユはこの話の中ではただサンを守ってる感ばかり強くて…
男だってサンに知られる描写無かったしね。きれいに終わっちゃった。
「僕」とは言ってたけど、殺した日本兵の台詞も無かったから伏線も無いし唐突だった。
曖昧にしておきたかったのかな…
舞台にはあとがきみたいなのが無いから時代背景も説明しづらいしね。
なんかもっとそこでドキドキできたら…と思ってしまう。
タマキさんともっと取り合ってくれても良かったかもなー。
戦争というモチーフ外したらひとつのラブストーリーですよ!ぐらいの。
そういう話だったんじゃないかな。学園モノに戦争がなだれ込んできた感じの。

【全体】
初めてまともに見る演劇としてはかなりアバンギャルドだったと思う。
でもすごく良かった。
映像みたいに何テイクも撮ってそこからいいところだけ選んで編集するのと全然違う。
登場人物は見えている限りずっとそこに居て何かしたり考えたりしている。
そこには緊張感だけじゃなくて、もっとどうでもいいものもたくさんあると思う。
あ、おなか減ったわ。とか。背中かゆい。とか。
キャラクターしながらそういうのが出てくるのも面白い。
音楽もよかったね。クラムボンの人ですって。
衣装も素敵だった。現代っぽくて昔っぽい。
劇中の台詞に、いまはどの時代ですか?そこにあるのは私の知ってる海?知らない海?とあったように、
私も普通に知ってるようなものを舞台に置いたり身につけたりしてるから、
境目がよくわからなくなる。ここはどこだ。私は今本当にここに座って見てるだけなのか。
いや、文章にしてみてよくわかったけど本当にしっかり作り込まれている。
面白かったなぁ…もう一回ぐらい見たかった。時間無いや…

雑ですが感想はこんな感じです。
また機会があったらマームとジプシーや他の演劇団体の舞台も見に行きたいです。