午前11:19
Nozooo君からLINEが届く。



彼と話す事と言えば、競馬、裏の話、最近のススキノの勢力図などが大半を占める。
空知管内住んでいようとも、未だ気分はサッポロモンジである。

どうやら彼は土曜の夕刻から深夜まで接待をしていたらしい。いつもの事である。
シャバの企業幹部という物は24時間戦わなければならないのである。お疲れ様である。

昨晩、彼のパソコンに送信したmailを確認してくれたらしく、忙しい時間の合間にLINEで彼の意見を聞く事ができた。感謝である。

彼の本心を聞くべくして未練がましく電話をする。
事、彼の方が大穴を当てる嗅覚は抜群で、泥酔状態で選んだ前日投票が、事もあろうに大穴を開けて100円で30万の馬券を仕留めた事は仲間内では伝説である。

イケメンは、泥酔状態であってもやはりイケメンなのである。少しジェラシーを抱く。

相談の結果、今回は私の予想に分がある事を再確認出来てますます持って勇気が出る。
勝機は我にあり!!などと、思いつつも油断大敵、火の用心、大酒は飲むな、などと親父の小言に記されているような事を思い出し、褌を締め直す。

正午12:00
ブログに投稿する準備を始める。パソコンに再度電源を入れ、立ち上がりを待つ事しばし。パソコンのモニターに反射して写っている自分の顔を見て思わず見とれてしまった。

博奕を打つ前の表情に戻っているのである。

目は三白眼で、眉間にシワ、口からは泡が出ている。まるでイレこんだ馬のようである。
然しながらそれで良い。馬はどうあれ、自分の気合のノリは自分で分かる。
今日も当たる。間違いない。鬼さえ泣きながら避ける予想だな。と、自分にとって非常に好都合な心境になっていく。

ブログを打ち込む事しばし。本日はTwitterにて予想公開をする旨を伝え、一旦、競馬の事を忘れる様に心がける。頭に血が昇り血圧が上昇していく様子を感じたからだ。

好きな事をやり、死ぬのは本望だ。と、どこかの誰かが言ったらしいが、冗談は勘弁である。好きな事をやり、長生きする事が本望である。強がりは良く無い。ヤセ我慢は1ミリの成長にも繋がらない。悔しい時は悔しがり、嬉しい時は嬉しがる。欲しいものは欲しいし、当てたいと思うから当てるのである。
至って普通の感覚である。

ブログ投稿完了後、昼食を取る。
自慢では無いが妻の料理は絶品である。何故なら彼女は私と出会う前までプロの女シェフであり、創作和食店で長きに渡り調理長を務めていたからである。特に魚料理や寿司類は大した腕前で握り寿司等は最高である。

「あんたー!手伝ってー!早くー!」

妻からの招集命令がかかった!

気を害せぬ様、即座に向かう。俗に言う大至急のダッシュ勝平状態である。焦りのあまりテーブルの足に、自分の右足小指をぶつけてしまう始末。激痛が走る。涙目である。痛さのあまり、鼻水まで出る始末。ハナミズキでは無い。鼻水だ。その様子を見ていた妻から冷酷な言葉が発せられた。

「汚い」

もう、矢でも鉄砲でも降って来い状態である。最愛の妻と出会い、はや10年。まさか10年後このような言葉が私に向けられるとは!この先10年後には、どのような言葉が送られるのか?と、考えると私は貝になりたくなってしまった。

日曜のモンジ馬券のブログがチグハグだったのは、このような理由の為であった事を閲覧者の方々にはこの場を借りて報告させて頂きたい。もう少し、実のあるブログを投稿したかったが、妻の命令は絶対である。古今東西世に夫婦と言う制度が出来てから、大昔から現在まで、はたまた、これから永遠に続くであろう未来まで、妻の命令は絶対というフレーズは既婚男性に付きまとうものだと、私は確信している。単勝オッズ1 .1倍位の固さである。複勝に例えると元返しぐらいの鉄板加減である。間違いない。

昼食が済んだ後、しばし睡魔に襲われる。
リビングのソファーに座りテレビを眺めていると、やはり寝てしまった。

時間にして約10分程度寝た。が、変な夢を見た。馬に追いかけ廻されている夢だ。
馬を追いかけるなら、いざしらず、人間様が馬に追っかけられるとは何事か!と、ぶ然とした気持ちで自室に戻る。どうやら余程中山記念の事が頭から離れないらしい。

レース開始まであと1時間程度。当てても外れても、取り敢えず、ブログを立ち上げてから日曜日のメインレースは私にとって一切の妥協を許さない日課となってしまった。

無料公開であってもだ。どうせ公開するなら的中した方が良いのだ。予想行為にお金は頂かない。何故なら博奕だからだ。初めて入店したパチンコ屋でこの台出るよ!と言われて、教えてくれた初対面の人間にありがとう!と、言って金を払う馬鹿がどこにいる?と、いう感覚だからだ。公営ギャンブルと国が認めている博奕行為に対して顔も合わせた事の無い人間に金を払い予想求めてどうする?と、言う感覚だからだ。至ってシンプルな思考である。

人の予想に金を払うぐらいなら、自分の金を馬券に貼り付けて、悔しさも嬉しさも噛み締めた方が余程利口であり賢い。育った環境により人格がほぼ決まると私は確信している。
何事も出だしが肝心である。自分の予想が外れれば、当たるまで研究すれば良い。自分の責任で済むからだ。

これが人に金を払って予想行為を買うとなると、運良く当たれば良いが、外れたら人を恨む気持ちと、自分が馬鹿だった。と、二つの怨が発生するからである。また面白い物で自分のとった愚かな行為は必ず人のせいにしたがるものである。アイツに騙された。とか。
騙そうと思っていなくてもだ。俗に言う余計な親切大きなお世話と言うやつだ。

自慢では無いが、私は俗に言う霊感の類が非常に強い。自分では、霊感とは思わないが、置き換えて言葉を選ぶと、カンが良いのだと思う。E藤さんが私に言った言葉で君は悪運が強いと、言われたのもそのせいかもしれない。金品にまつわる怨みは根が深い。現状が良くとも必ず自分では無く身内から不幸が始まる。金が飛び交う博奕行為においてよくよく考えなければならない。

だから私は必死に考え、無料公開と言う形で、自分の買い目を晒すのである。
尚更有料予想を売りにしているサイトには負けたくないのである。男気である。博奕は男気以外の何者でもない。

などと、自分勝手に我を奮い立たせ馬券購入準備に取り掛かる。裏口座であるネットバンクにアクセスし再度残高を確認し、インターネット投票用の口座に出番を今か今かと待ちわびた学問の勧め的先生方に招集をかける。

その数!は、秘密。これだけは言えない。

先生達の人数を数えるとやはり、躊躇する。僅か数分で、のるか?そるか?の結果が待ち構えているのである。

そんな時は高杉晋作の言葉が頭によぎる。

「おもしろき こともなき世を おもしろく」

やらいでか。はたまた勇気凛凛ルリの色である。私の好きな小説家の1人に浅田次郎先生がいる。浅田先生も大の競馬好き。数々の勝負がエッセイとして書かれており非常に励みになる。私は勝負に出た。

Twitterに公開した買い目の1枚目は的中確率は高いが低配当の目である。ここはかなり厚めの金額で貼付けるのである。

2枚目の方は1枚目よりかは幾分配当は付くがどうも1枚目の方が的中する気がしてならない。2枚目はやはり若干薄目の金額で勝負する事にした。

レース開始前である。

妻がテレビの前から離れない。嗚呼...

ラジコで中継を聞く事にする。昭和の親父さながらの気分ではあったが、阪神のレースを取っていたので気分は良い。

さあ、レースの始まりだ!


数分後 ...

やったぞーー!!!我が息子よーーー!!!

ガンガンスラッシャーは君の物だ!!!!!

良かった...
本当に良かった....

貼った金額の大きさに喜んでいるのでない!
マグレ大当たりの演出が達成出来た事が嬉しいのだ!!!

すぐ様、的中画像をコピーして、ネットバンクに...裏口座に...急いで送金しなければ!!

焦りを堪えつつパソコンの前で処理する事数分。妻が珍しくコーヒーを持ってきた!!!

努めて冷静を装いつつ振り向き

「お?コーヒー入れてくれての?あんがと!」

「どうだったの?競馬?」

「うん?ちょっとだけ儲かったな!」

「借金してないよね(怒)?」

「してませんが?」

「フン」部屋を出ていく妻。

あっぶねー!!!残高見られるとこだったぜ何だ?あいつは?金の匂いでも分かんのか?
などと、心の中で叫びつつも、パソコンの画面はAmazonにジャンプ。
俺プライムだしーなどと、思いつつ...

「フムフムこれね?あっぶねー!後、残り2個しかないじゃん!!??なにこれ?品薄って!!!またしてもバンダイめ!!!!いきなりレア扱いにするつもりかよっ!!!」

日曜日は悪運が強い。

我が名はソラチモンジ。

家族を愛するただの親父だ。