横浜ベイスターズがモバゲースターズになるとかならないとか
球団買収の動向が注目されています。
プロ野球球団を持つとどんなメリットがあるのか。
言うまでもなく、最大の効果は広告宣伝でしょう。
バブル真っ盛りの昭和63年(1988)のシーズン終了後、
阪急ブレーブスがオリエント・リースに売却されました。
「へ~オリエント・ファイナンスがプロ野球球団を持つんだ・・・ん?え?違うの?」
と、当時は大騒ぎになりました。私などもてっきり、球団を買収したのは
オリエント・ファイナンス(現・オリエント・コーポレーション、略称オリコ)
だとばっかり思っていたら、オリエント違いで(笑)、
オリエント・リースという全然違う会社だったことに驚いたものでした。
オリエント・リースは翌年オリックスと社名変更する予定だったので、
新球団名は「オリックス・ブレーブス」となりました。
そしてその後、イチローを擁して日本一になるなど、プロ野球界に
その名を轟かせることになった訳です。
同時に、オリックスは一気にその知名度を挙げ、いまやその名を知らぬ人は
いないと言っても過言ではないでしょう。むしろ、オリコの方がマイナーに
なってしまったかもしれません。
その意味で、オリックスがプロ野球球団を持ったのは大正解だったと
言えましょう。
このように、一企業がプロ野球球団を持つというのは、かなりの
広告宣伝効果があることは間違いありません。
しかし実は、さらに税法上も大きなメリットがあるのです。
昭和29年(1954)に出された法人税の個別通達で、こんなものがあります。
職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について
これはどういうものかというと、
1 プロ野球球団の親会社が球団に対して支出した広告宣伝費は
損金(経費)にできる。
2 プロ野球球団の親会社が球団の損金を補てんした場合、
それも損金(経費)にできる。
3 プロ野球球団の親会社が球団にお金を貸した場合、
それが損失補てんの目的であれば損金(経費)にできる。
4 プロ野球球団の親会社が球団に貸しているお金を、
球団が返せないからと償却したときも、親会社では損金(経費)にできる。
といった内容のものなのです。
要するに、プロ野球球団の親会社が球団のために出したお金の多くが
経費にできるということなのですね。
一般には、子会社とはいえ別会社ですから、上記のような支出は、
経費として認められることはありません。
しかも貸付金が経費になるなんてことは絶対にありません。
しかし、プロ野球球団では、それが認められている。
プロサッカーやプロバスケットボール、バレーボールには、
認められておりません。
なんでこうもプロ野球ばかりが優遇されているのかというと、
一説には、当時の読売巨人軍のオーナー、正力松太郎氏の政治力
の賜物(彼は戦前、警察官僚でした)だったという噂もありますが、
真相はわかりません。
しかし、上の個別通達には、最初にこう書かれています。
「映画、新聞、地方鉄道等の事業を営む法人(以下「親会社」という。)が、自己の子会社である職業野球団(以下「球団」という。)に対して支出した広告宣伝費等の取扱を、左記のとおり定めたから、これにより取り扱われたい。」
昭和29年当時のプロ野球球団の親会社は、
読売新聞社、中日新聞社、阪神、国鉄、阪急、近鉄、南海、大映、松竹、東映
と、まさに、「映画、新聞、地方鉄道等の事業を営む法人」ばかりだったのですね。
これらが、プロ野球球団を持つことで税制上優遇されたことは間違いありません。
特に読売や中日などの非上場会社は、かなり大きなメリットがあったことと
思われます。
しかしながら現在では、上場会社にとって「損金にできる」ということが
プロ野球球団の保有メリットにはならなくなりました。
なぜならば、上場会社にとっては、利益を出すことが至上命題ですから、
子会社の赤字を補てんするなどもってのほか。
そんなカネ喰い虫なら売却してしまえ!!!ということになるわけです。
近年、近鉄がバファローズを手放したのはそのいい例だと言えましょう。
従って、あまり儲からないプロ野球球団を持つメリットというのは、
必然的に、広告宣伝効果を期待する以外になくなるわけです。
だから、カネをもっている新興企業が保有に名乗りを上げてくるのは当然の
ことなのですね。
モバゲーが球団を保有する可否はともかく、すでにプロ野球自体が
魅力のある世界なのかどうかというのも、考えなくてはならない時期
なのかもしれませんね。
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