続・魔法の薬 | 一斗のブログ

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2011年6月15日に小説を出版しました。
出版をするにあたっての様々なエピソードや心の葛藤、病気の事等書きました。今はショートショート(超短編小説)やエッセイ等を載せています。宜しくお願いします。


お久しぶりです。

昨年に書き始めたショートショートをまとめました。

『魔法の薬』の続編です。

魔法の薬
魔法の薬2
魔法の薬(完)

↑まだ読まれていない方はこちらからどうぞ!









『続・魔法の薬』



神様がくれた未来に起こる戦争や災害の書かれた紙の

おかげで、国の要人として人生を過ごしてきた。

その紙の予言はまさに神がかりで全て的中しており

災害は前もって国が対策を練って最小限の被害に

抑えることができた。

最初のうちは他国から日本はたまたま運がいい国だと

思われていたが、しだいに日本は特殊な能力を持つ何かを

開発したに違いない。と疑われ始めた。

その紙にはその際の対策法さえも記されていた。

それは某大国にだけすべてを明かせば良いという

内容だった。

これにより災害だけでなく起こるはずだったテロ行為、紛争までも

事前に防ぐことができ世界中が数十年に渡って不幸に見舞われない

という奇跡的な時代が続いた。

やがてその紙に書かれている予言も残り1つになったとき

私は焦った。

なぜなら、私は紙を手にして20数年ほど経ったときに

あの時の神様は自分自身だと気がついていたからだ。

そして、私が79歳を迎えるまでにタイムマシーンが開発される

ものだとばかり思っていたからだ。

タイムマシーンに乗って私が若い頃の自分自身にこの紙を

手渡しに行かなければいけないと思っていた。

しかしそれは違っていた。

このままでは、昔SF小説で読んだ内容のように、この幸福な未来と

もう1つの戦争や災害で不幸にも大勢の人が亡くなられる未来に

パラドックス現象が起こり2つの未来に分かれてしまう可能性がある。

それでは幸せになったのは私1人だけだということだ。

特別な正義感があるわけではないが、あまりにも理不尽な話だと

頭を抱え込んだ瞬間そのまま気を失い、

気がつくとあの52年前のベンチに私は座っていた。


そして横を見るとやはり52年前の私が座っていた。

気づかれないようにいつも被っていた帽子をさらに目深に被り

52年前と同じように若い私に話しかけた。

52年前に私が言われたある試練という言葉の意味は

今の私には理解できていた。

52年前と同じような祭りの風景ではあるが

私は本来とは違う未来からタイムスリップして来たのだから

この時点でこの過去の世界があの52年前と同じ過去だという

保証はない。違う過去に戻っているというパラドックス現象が

起こっている可能性も充分に考えられる。

しかし私は52年前の若い私に話しかけ試練を与え

今の私が52年前にとった行動と同じ行動を、

隣に座っている若き私がとるかどうかを試すしかなかった。




すると、若き私は52年前の私と同じように何もしないという

同じ行動を取ってくれた。私はそのことがとても嬉しく

思わず顔がほころび微笑んでしまった。

そして彼にこの時代にまだ開発されていない

一時的に脳の動きを停止させるクスリを噴霧し

その場を立ち去った。

その瞬間、私はまた52年後に戻り残り1つの予言の意味が

やっと理解できた。


残り1つの予言に書かれていたのは、この一言だった。










『 自分を信じなさい 』








一斗