今年はどんな1年だったかと聞かれたときに、私は「良いこと8割・もうちょっとだったなということ2割」と言うでしょう。
それなりに、その時できることを頑張って、とりあえず健康に何事もなく生きている。
それだけで、だいぶ今年ははなまるだったな、と思えるのです。
そこのあなたは、振り返ってみてどうですか?
「今年は、色々あったけど、いいことの方が沢山あった年だったなあ」
と思い出して笑顔になっちゃいますか?
それとも、
「いやいや、悲しかったり大変なことが結構あって、ちょっといつもより辛い年だったよ…」
とため息が出ちゃいますか?
今回紹介する本は、
いとうせいこう/星野概念『ラブという薬』(リトルモア,2018)
「心がちょっとモヤモヤした時に、悩みをオープンにして話せる人なんて、
そんなにいないよな~」
という方に読んでほしい1冊です。
この本の中では、いとうせいこうさんと、バンドメンバーであり精神科医の星野さんが、
対話をしていきます。
テーマはずばり、辛くなったときに気軽に相談に行こう!
いとうせいこうさんの主治医でもある星野さんとの対話は、最初こそ相談に行くまでの話がメインですが、次第に色んな話に道草していきます。
例えばSNSでの「いいね!」がつくと無条件に嬉しくなってしまうなんて話や、
ネットの世界に触れていないと、なんだか不安になってしまって、逐一スマホが気になるという
依存の話も。
あー、分かるその気持ち。
2人の対話をたどっていくと、自分の中で言語化できていなかった部分が浮かび上がってくるような感じがします。
思わず頷いてしまうような、小さなヒントが転がっているような印象。
いとぽんなりに『ラブという薬』を解釈すると、「よき理解者と一対一で話すことが、最高の薬になる」ということかなと思いました。
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今年を振り返ったときに、身近な人が病気で亡くなってしまってショックを受けたり、
なんでこの人が、という人が自分で命を絶ってしまった経験をした人もいるでしょう。
10年程前に、商店街の店舗で本屋をやっていた頃の話ですが、
まだ若い常連さんが、自ら命を絶って亡くなってしまったことがありました。
それは、自分にとって初めての出来事で、とてつもない衝撃を受けました。
私の目からは、明るくて未来に前向きにな人のように見えていたからです。
「もっと親身に話を聴けばよかったのではないか?」
「前向きそうに見えたのに、そんなに深い悩みがあったのか?」
「本屋をやっていても、誰かの助けになってないんじゃないか?」
そんな疑問と後悔がぐるぐると長い間、頭を巡りました。
この『ラブという薬』を読んで思ったのは、自分の悩みは自分ひとりだけで解消しなくていいということ。
真面目に悩んじゃうと、「友人にこんなこと相談できない。話したら、相手の負担になっちゃうし」となる。
そこをもっとゆるく考えて、第3の誰かに話してみるという選択肢があることに気づかせてくれます。
いきなりお医者さんに相談に行くのはハードルが高いので、例えば身近にカウンセリングルームがないか調べてみたりするのもいいんじゃないかな。そもそも、いろんなお医者さんやカウンセラーがいる。相性は、会って話してみないと分からないしな。
万が一自分が、「ずっとモヤモヤしてて、自分の心の状態なんかヤバい!!」となった時。
すぐ相談できるように、元気なうちに予防として定期的にカウンセリングに行くのは、私はとっても良いと思うんです。
体の健康は、食べ物に気をつけたり、適度に運動したり、健康診断をして対策している人も多いでしょう。
それと同じように、心の健康対策として、リラックスできる方法をたくさん持ったり、オープンに話せる相手を見つけておくのが大事だなと。
『ラブという薬』は、自分自身はもちろんのこと周りの人にも、モヤモヤした時のお守りとして
手に取ってほしい1冊です。
心をオープンに対話できるような人が、まだいないという人。
来年こそは見つかることを願っています。
いとぽんより
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