さて、めでたい話題は兎も角、肝心の(?)参院選である。



以前(まだ、鳩山さんだったが)、参院選の争点が見えない、と書いた。大まかには状況は変化していないと思われるが、ところが、ここにきて何故か急浮上したのが消費税アップ



10%という数字だけが(大して根拠も無く)独り歩きし、もはや既定路線の様相すら呈する。



争点といっても、微妙なのが、民主vs自民、という大筋の選挙戦でいえば両党とも結論に差が無い、というところ。正確には、菅さんが「10%という自民党の数字を基に議論」などというものだから、卑怯だなんだ、と国民・有権者から見ればどーでもいい争いのようになってしまっている。



これに対して少数政党は無駄使い削減が先、とか何とか、消費税増税反対を打ち出すが、かなり弱い。



ところで、このブログでも再三取り上げた(と思う)が、消費税増税の陰で、これも至極当たり前のように議論すらされずに結論つけられそうな勢いなのが、法人税引き下げ



これにいたっては、「主要国並み」とか、いくらなんでも曖昧な表現に終始しており、具体像は見えない。それにしても、気になるのは、法人税を下げれば日本企業の競争力が増す、ということが実しやかに(マコトシヤカニ)言われる点。



典型的なのが、「みんなの党」なのだが、ツイッター上でフォローしている柿沢未途議員に至っては、外資系アナリストとのミーティングで期待していると言われて有頂天のように呟いている。



分かり易く、ハッキリ言えば、『アホか?ショック!



アナリスト、というのは、株価が上がるか下がるかを予想するのが仕事だ。日本の経済成長がどうこうとか、ましてや雇用がどうこう、とか議論する人たちではない。



株式投資家(特に法人税その他の一般課税を受けない外国人投資家は特に)の観点から言えば、法人税引き下げは税引き後利益の上昇=株価上昇要因、であるため、主張するのは当然のこと。彼らは日本で消費して消費税を払う人たちではないのである。




単純な法人税率引き下げには反対である。




考えて欲しい。法人税が引き下げられて、企業が成長する場合、2つしか道は無い。



即ち;



<1> 支払い法人税額が減少することで、その分、投資(研究開発投資や設備投資、また、人員投資など)に回され、成長に繋がる。



<2> 引き下げられた法人税分を原資として、製品・サービス価格が引き下げられ、国際競争力が増す。



全ての企業が上記<1>に全額回せばもちろん、問題は無い。しかし、そうなる保証はどこにもない(だから、単純な法人税率引き下げには反対だ)。



ましてや、<2>の場合、単に値引き合戦の促進が図られるだけに終わる可能性が大。グローバルに行われるなら兎も角(世界的にはデフレ状況にはない)、これが国内で為されれば、一層デフレが進行する恐れだってある。また、一般に税金を払っている大企業であればこれを原資とした競争戦略が出来るが、そもそも余り税金払っていない中小企業の場合であれば、税率引き下げされても原資は生まれない。法人税率引き下げが大企業による中小企業の淘汰を生み出すことすらあり得る。 *なお、これは飽くまで一般論。




折角、法人税引き下げの議論をするのであれば、もっとキメ細かい議論をして欲しい。具体的に提言するのは、以下の3つ:



X. 研究開発投資については、損金繰り延べ年限を大幅に緩和(永久でも良い)。


Y. 設備投資については、加速度償却を認め(特に定率法の利用促進、資産によって定額法と定率法を併用してもよい、なども考えられる)ること。


Z. 人員投資については、人件費の割増損金算入制度(例えば、掛かった人件費の単純2倍を法人税計算上は損金算入してもよい、とか)の導入。



こうしたキメ細かい、真に投資促進・雇用促進のための法人税引き下げは大歓迎である。そうでなければ、結局、減った分を消費税で取られるのは甚だ疑問。