中国の普華(プーファ)からの資金も入り、ようやくOS事業のチームも
これで落ち着いて、今まで以上に開発や販売に専念できると思う。

Goさんが今回のターボシステムズ社の社長に就任して、本当に楽しみです!

彼とはもう9年以上の付き合いなわけで・・・う~ん・・・なかなかそういうことって
ないよなぁ・・・

楽しみなのは、もちろん普華という資金力抜群のパートナーと組めた、ということ
もありますが、それよりも、やはりこれまでは少数精鋭で正直ヒーヒー言いながら
作っていたOSが彼らの陣容(昨年末で開発者50名以上、今年中におそらくは200人
規模)が使えるので、昔からのターボリナックスの良いところを残しながら、より品質に
こだわったものが作れるということ。

それと、当然ながらこれで普華経由での中国の開発案件などが流れてくるので
売上という観点でも期待しています。

---------------------------------------------------------------------

ということで、今日は当社が今回の普華社との合弁で、何を実現できたのかを
書こうと思います。



あらかじめ断っておきますね。





むちゃくちゃ長いです!






まず、ソフトウエアそのものから言いますと、この市場は相当に厳しい。

今、世の中的にソフトが売れて儲かっている会社はほぼ皆無と言って良い
でしょうね。

あのマイクロソフトですら、完全にコンピュータ市場を支配していた頃の趨勢というか
栄華はまったくなく、その影響力もまさに昔と較べると見る影もありません。

やはり全てではないにしろ、この大きな変革はインターネットの普及がもたらした
解放です。
あるいはLinuxやMySQL、PHPといった、オープンソース群が築いた勝利です。


そう言う意味では、オープンソースの世界に飛び込んで10年、それなりの功績は
僕自身も、この会社の仲間と共に残せたのではないか? と少しは自負もあります。

いずれにせよ、今後ますますソフトをわざわざライセンスで買って使用する企業
よりも確実にクラウド(もしくはASP)といったサービスそのものを利用する形態が
増えてくることに異議を唱える人はいないでしょう。

しかし、それでもライセンス市場そのものが完全に崩壊・瓦解することもないでしょう。

ここがポイントです。

今までは、例えば年間の売上が100あって、その伸び率が年率20%だった市場が
規模として半分になり、伸び率もおそらくは3%くらいにしかならない、ということ
です。

つまりは例えばライセンス販売をやっている会社があり、その会社の3カ年計画が
あった場合に、従来であれば 

初年度 売上100
2年目  売上120
3年目  売上144

と言う予定が、今後は

初年度 売上 50
2年目  売上 52
3年目  売上 53

という結果になってしまうことです。 細かいところは四捨五入してます。


つまりは当初の計画と較べると3年目の乖離(達成率)たるやなんと37%しか到達
できないわけです。


当社がこの3年間、苦しみぬいた原理がまさにここにあるわけです。

上のように売上が半減してしまうならば、それに対する手当として、出るコストも
半分にしてしまえば、売上の達成率は悲惨な結果になったとしても、利益に関しては
達成率はともかくも、ある程度は論理的には確保されるわけです。

つまりはこういうことです。

(当初の計画)
初年度 売上100 コスト 90 利益10
2年目  売上120 コスト108 利益12
3年目  売上144 コスト130 利益14

(結果)
初年度 売上 50 コスト 45 利益 5
2年目  売上 52 コスト 47 利益 5
3年目  売上 53 コスト 48 利益 5


しかし、我々のようにOSを開発して販売している企業からすると、これができない。
これがまさにこの3年間の悲惨な結果を生んだわけです。

例えばOSの開発部隊に人が10人いたとする、この10人というエンジニアの人数は
売上で決められているわけではなく、売上が100だろうが極端な話、1だろうが
10人かかることにおいては減らすことができないのです。

なぜかならば売上とは関係なく、OSを開発するという行為自体に10人かかってる
わけですから・・・

とはいえ、まったく対策をしないわけにはいかないので、10人の開発陣を8人に
減らすという、つまりは残った8人は、8人で今までの10人分の仕事をこなさなければ
ならないという非常にスタッフには厳しい選択を行ったのですが、それでも全体的なコスト
で言えば、やはり良いところ15%くらいしか減らすことができなかったわけです。

論理的には10人が8人ですからコスト的には20%の効果がありますが、10人の開発者が
8人になったからと言って、確かにその分の人件費は減ったとしても、それは空き机が
増えるだけでオフィスの家賃は今までと変わりませんから・・・

それでもオフィスも引っ越し、あらゆるものを切り詰め、コスト的にはたぶんですがOS
関連に関しては30%減くらいまでは切り詰められたと思います。
(本当に全てを切り詰めた結果でこれが限界だったと思います。)


しかも悪いことに、我々がいるLinux業界は、ここ数年でまさに市場が動き、RedHat
という会社の製品が市場の約9割を占有してしまい、その結果残念ながら弊社の
OS売上は半減どころかピークの30%くらいまで下がってしまったわけです・・・


結局はこういうことになるわけです。


(当社の結果)
売上 30 コスト 63 赤字33!




つまり売上を超える赤字が出るという、常識では考えられない結果が生じた原因は
ここなわけです・・・


これには本当に、血反吐を吐くくらいに苦労し、悩まされました。


気が狂いそうなくらい考え、あらゆる方策を検討しても・・・必ず答えは、ある一つにしか
帰結しません。






OS事業を止める



それしか無いと・・・



そこで、最後の解決策として、我々が模索したのが、我々と同じ課題を持っている
企業との共同開発です。


最初は開示もしましたし、実際にテスト的にも動きましたがフランスのマンドリーバ社が
候補でした。

つまり狙いをこうするわけです。

(現状)
当社 売上 30 コスト 63 赤字33!
M社 売上 30 コスト 63 赤字33!

(狙い)
当社 売上 30 コスト 32 赤字 2!
M社 売上 30 コスト 32 赤字 2!


(これでも黒字にならないと言うことは根本的な解決ではないんですが・・・泣)


しかし問題は我々は補完的な関係にはなれなかった、と言うことです。

つまりは以下の問題が生じたわけです。

(1)お互い自社の技術にプライドがあり、どちらかが自社の独自カーネル技術を
   捨てざるを得ない。

(2)両社とも・・・貧乏・・・(号泣)


よって、どんどんハードルが上がるわけですが・・・我々が組むべき相手は


(1)ターボリナックスの独自カーネル技術を必要とするところ
(2)リッチなところ・・・



もうこれは殆ど無い物ねだりなわけですが・・・・


ここにまさに奇跡というか神風が吹いたわけです!



普華社の登場です。



彼らは中国という国が、新たなきちんとした国家OSを作るべく肝いりで作られた
会社です。
つまりは超リッチなわけです。

開示していますが、中国政府のこのOS開発プロジェクトの予算は10億元(150億円)
で、すでにその予算から彼らに注入されている資本金は45億円です・・・

・・・もう笑うしかない超リッチです・・・ハハハ


そして、彼らが当社に望んだのが、まさに


独自カーネル技術だったわけです。


先にも書いたように、もはや世界はLinuxにおいてはRedHat社が寡占しており、
(これはこれでいつかきっちり何故そうなったかを書こうと思いますが・・・)

殆どのLinuxベンダー(つまりは同業他社)は、RedHat社のコピーを単に焼いては
売るという、基本的に技術を捨てた連中ばかりになっています。

実は中国にはRedflagというOS会社があり、そこが中国国産OSの標準と思われて
いますが、そこの社名からわかるとおり、所詮、そこもRedHat社の焼き直しを
作って売っていることに中国当局も気づき、


独自カーネルでのOS開発


という絶対命題が普華社に下ったわけです。


もはや世界の中で独自カーネル技術を持っているのはターボリナックス社と
アメリカのノベル社と先のマンドリーバ社くらいしかなく、


間違いなくアジアで独自カーネル技術を持っている会社は


ターボリナックスしか無かったわけです!




そこで協議をし、今回の合弁になり、しかもターボシステムズ社(合弁企業)は
彼らが過半を持つ形にしたので

これからのターボリナックスの事業はこうなります。



売上 30  コスト(ターボシステムへの支払い 約25) 利益 5



もう・・・むちゃくちゃに長くなってしまいましたが、私が再三再四、OSの悲惨な
赤字体質からの脱却がこれでできた・・・という流れを説明しました・・・

最後は時間切れで、相当にはしょりましたが・・・ご理解いただけたでしょうか・・・・


よく考えてみると・・・つまりはこれで中国国産OSの標準って・・・


ターボリナックスになるんだぁ・・・




ブルブル・・・すごいかも・・・!




いずれにせよ、こういう形で、オープンソースを「売る」という事業体と、新しく
オープンソースを「使って」収益を上げるCJ-LINXという両輪が整ったことは
本当にしんどかったですが、苦労した甲斐がある、というもんです。

視界良好、発進!

あとは・・・




儲けるのみ!


ではでは良い週末を!