食後血糖を下げると本当に心筋梗塞などが減るかどうかは、
専門家の間でも議論の余地があります。
知識のある人ほど、明確な答えは出せないでしょう。
いくつか研究をお示しします。
1つ目。STOP-NIDDM。
食後血糖の高い人に1429名を対象にアカルボース(αGI)あるいは偽薬(プラセボ)を投与。
食後血糖の抑制が①糖尿病の発症を抑制するか?、②心筋梗塞などを抑制するか?を平均3.3年間評価。
①の糖尿病発症は、アカルボースを内服することで抑制されました(おめでとう!)
②心筋梗塞の結果を下に示します。
(JAMA, 2003, 290, No.4, p486)
これによるとアカルボースにより、心筋梗塞が有意に減ったとのことです。
…ただ、心筋梗塞発症が非常に少ない。。
1429名登録してtotal 13件の心筋梗塞の発症では、エビデンスになりにくいでしょう。。
しかも、心筋梗塞の手前の病気といえる狭心症では全く差はなし。
食後血糖は下げた方がいいかも!とは言えますが、
食後血糖を下げたら、心筋梗塞がぐっと減るっていうことはできません。
2つ目。NAVIGATOR研究。
ナテグリニド60mg以上(超速効型インスリン分泌促進薬)あるいは偽薬(プラセボ)を食後血糖の高い人に投与。
食後血糖の抑制が心筋梗塞や脳梗塞の発症を抑制したかを評価した。
*ナテグリニドは一般的に食後高血糖を改善するための薬です。
(N Engl J Med. 362; 2, 2010, p1463)
結果、差なし。。
この研究は非常に解釈が難しいので、なんとも言えませんが、
境界型糖尿病でナテグリニドを積極的に飲む必要はなさそうです。。
食後血糖の抑制と心筋梗塞の影響は評価できず。
3つ目。MeRIA7。。
アカルボースを投与して、食後血糖抑制による心筋梗塞などの発症予防効果を検討した7つの研究を寄せ集めて検討。
これはメタ解析というものです。
MeRIA7はいい結果。でも寄せ集めでしょ!?ってクレームがつきます。
(European Heart Journal (2004) 25, 10–16)
他にも細々と食後血糖抑制による心筋梗塞予防を検討した研究はありますが、
結局、食後血糖を抑制してはっきりと心筋梗塞を抑制できた研究はありません。
僕は太った2型糖尿病やメタボの方には食後高血糖の注意をしますが、
もちろん、ゆっくり食事をしたり、メタボを解消して食後血糖を下げるのには大賛成です。
でもIDDMの方には特に注意をしません。
なぜならば、食後高血糖の抑制が真に心筋梗塞や脳梗塞を減らすという証拠が少ないためです。
また、食後2時間血糖をターゲットとした治療は食後3-4時間の低血糖を非常に起こしやすくなります。
では、なにを気をつければ、心筋梗塞などを減らせるのでしょうか?
やはりHbA1cです!
みんながこの意見に賛成する素晴らしい研究があるので、次回ご紹介します!!