みなさんは食後の血糖値をどのくらい気にしていますか??
私の個人的な見解ですが、、
IDDMの方が食後に血糖値を測る意義は、
「補正ボーラスを実施するため」です。
食後血糖については専門家であればあるほど意見が分かれます。
ただし、おそらく共通しているのは、
「食後血糖よりもHbA1cの方が重要だろう」です。
今回から「食後血糖」をテーマにしてみます。
【其の1】では食後血糖がなぜネットなどで注目されている理由。
【其の2】では食後血糖を下げると心筋梗塞が減るとは言い切れない。
【其の3】では食後血糖よりもHbA1cを意識するべき理由。
について書いてみます。
そもそもなぜ食後血糖は意識されるようになったのでしょうか?
1つ目の理由は、、
健康診断で糖尿病をスクリーニングする際に、空腹時血糖を測定するからです。
一般的に、境界型糖尿病の方は「空腹時血糖は正常。食後血糖は上昇。」のパターンになります。
食後血糖を軽視すると、多くの境界型の方を見逃してしまいます。
実際の日本人の経口ブドウ糖負荷試験の結果をお示しします。
境界型の人(青)は負荷前(0分)の血糖値(左のグラフ)は上昇していません。
ところが、負荷後は血糖値は急激に上昇し、なかなか下がりません。
つまり、境界型糖尿病の人は、「食前血糖は正常。食後血糖が上昇。」のパターンが大半です。
これは「空腹時血糖値の検査のみでは、糖尿病を見逃しやすい!」という警鐘です。
2つ目の理由は、、
健康診断のデータをおいかけていくと、
「食後血糖が高い人は、その後の心筋梗塞などを発症する確率が高い。」ことが明らかになったためです。
ただし、ここでトリックが存在します!
負荷後血糖値が上昇する人はどんな人でしょう?
そう!「メタボの人は境界型糖尿病になりやすい」という事実が存在します。
そしてメタボ自体が心筋梗塞発症を2-3倍に増やしますので、
このデータはメタボ→食後高血糖→心筋梗塞を見ている可能性があります。
(これをバイアスといいます)
これから示すデータは「観察研究」と呼ばれます。
食後血糖値を下げることで、本当に心筋梗塞が減るか調べるには、
薬や栄養指導によって実際に食後血糖を下げたときの反応をみる「介入研究」が必要です。
食後血糖値が高いIGTの人は、食後血糖は高いけど食後血糖が正常なIFGの人と比べて、
生存率が低いことが示されています。
つまり、「食後血糖は悪い!」ということができますし、否定はできません。
*ただし、先ほど示したように食後血糖が高いひとはメタボかもしれません。
空腹時血糖が110未満で、食後血糖が200以上の左奥の人は、
空腹時血糖が126以上で、食後血糖が200以上の右奥の人と
グラフの高さ(心筋梗塞などのなりやすさ)が同じことがわかります。
これらのデータは
「食後血糖が高い人は将来、心筋梗塞や脳梗塞が増えるかもしれない」
ということを間接的に示します。
*繰り返しますが、メタボなどが原因で食後血糖が上昇している人を含みます。
すべてを加味すると、
食後血糖が高い人はダイエットや食事をゆっくり食べて食後高血糖を抑制することで、将来の心筋梗塞を抑制できるかもしれない。
ということになります。これには賛成しますし、是非おススメします。
ただし、IDDMで食後血糖が高いからと言って、心筋梗塞や脳梗塞が増えるということは言えません。
さらに「食後血糖を治療によって下げると心筋梗塞や脳梗塞が減る」ということもできません。
これを言うためには介入研究が必要です。
次の記事で「STOP-NIDDM」という大変議論を呼んだ研究を紹介します。