近年、インスリン抗体の精度は徐々に改善してきており、
それにともなって、インスリン抗体測定結果に対する
対応も変わってきています。
そこで、今日は「インスリン抗体(抗インスリン抗体)」についてまとめます。
一言で「インスリン抗体」の測定といっても、実はキットによって、
測定結果や正常値は異なります。
最新のインスリン抗体の測定結果は
①血中濃度
②結合率
の2項目が表示されます。
通常、①血中濃度に注目するのがよいでしょう☆
…ところで、
そもそも抗インスリン抗体を測定する意義は2つあります。
【抗インスリン抗体の測定意義】
A. 1型糖尿病の診断
B. インスリン自己抗体症候群の(除外)診断
A. 1型糖尿病の診断
血中濃度が重要になります。
また、従来通り抗GAD抗体や抗IA2抗体を併せて測定することで、
抗GAD抗体陰性の症例もより正しく診断することができます!
1型糖尿病かな?…と思ったら、後述の理由でインスリン注射前に
この抗体を測定しておくことが大事になります。
B. インスリン自己抗体症候群の(除外)診断
インスリン自己抗体症候群は、
インスリンに対する抗体ができることで、
血糖値が乱高下する病気です。
以前は抗インスリン抗体を測定することで診断する
医師が多かったですが、最近は少し違う使い方をします。
昔は、一部の先生はインスリン抗体を抑制するために、
ステロイドなどの免疫抑制剤を投与していました。
(最近でステロイド治療するとか言い出すと、
僕はかなりおかしいのでは?と感じます。
インスリンの種類を変更することは今でもよくありますし、
"疑わしきは罰する”カンジの有効な方法だと思います。)
しかし、最新の抗インスリン抗体キット(社名はないしょ)の調査では
インスリンを注射したことがある人の実に82%は抗インスリン抗体が陽性にでます。
つまり、、
血糖値の乱高下とは無関係に、
インスリンを打った経験がある人の82%では、
抗インスリン抗体が陽性であったということです!!
つまり、、
インスリン自己抗体症候群が疑われるときに抗インスリン抗体を測定するのは、
陰性だったときに、
「あなたはインスリン自己抗体症候群でない」
と除外診断するためです。
けっしてこの抗体が陽性(=高く)でも
「あなたはインスリン自己抗体症候群です」
ということはできません。
ましてや、1型糖尿病の診断に用いられる検査なので、
1型糖尿病の方では、血糖値の乱高下と無関係にこの抗体が
陽性になる場合が多いです。
またこの検査は、陽性か陰性かを見分ける力はとても高いですが、
値が2000を超えるような高い場合には、
測定のたびに2000~3000くらいの数値がランダムにでる可能性があります。
別に数字が前回よりも高くても、悪化しているわけではありません。
あくまで、陽性か陰性かを見極めるために使用するのが好ましいと思われます。
注意!!
特殊なインスリン抗体の測定法では、
インスリン抗体が実際に血糖値の乱高下の原因か
見抜くことができます。
先生が頑張って特殊測定をしている可能性もあるので、
まずは話をよく聞いてください!
*詳細な内容は非公開ですので、販売元に問い合わせる必要があります。
「インスリン注射をしてる人の何%に陽性にでますか?」と聞いてみましょう。
*有名検査会社の三菱化学メディエンスのHP中の
「臨床的意義」の中にも同様のことが書いてあります。
HP: http://data.medience.co.jp/compendium/main.asp?field=03&m_class=08&s_class=0003