最後のキス2 | 秘密の35年☆赤い糸の行方

秘密の35年☆赤い糸の行方

何度別れても、切れることのなかったふたりの糸。二股だったときも、彼が「あの人」と結婚してしまったときも、わたしが海外で暮らし始めたときも。音信不通6年、14年ぶりの再会から、再び動き始めた恋。国境を越えた超遠距離・婚外恋愛。

<「最後のキス1」の続きです。>

 食事が終わった。

「ごめん。スタジオに
戻らなくちゃいけないんだ」

「うん、知ってる。大丈夫だよ」

この日は10時くらいまでしか
一緒にいられないと、
あらかじめ言われていた。

レストランを出たときには
すでに10時半になっていた。

途中、彼が何度か腕時計を
チラチラ見ていたのは気づいていた。

それでもせかすことなく、
ゆっくりとわたしの相手をしてくれた。

もう十分だった。



メールをチェックしながら、

「ごめん。すぐに返信しなくちゃいけないや。
このままホテルの部屋に戻ることにする」

とあわてたように言う。

「ひとりで帰れるからいいよ」

「駅までの道、わかる?」

「えーっとどっちに行けばいいのかな」

方向音痴のわたしはすでに
行きに来た道を忘れていた。

「途中まで行くよ」

建物の外へ出た。

「ここをまっすぐ行って、
あそこを曲がれば駅だから」

「わかった」

そう言ったのに、彼はまだその先も
歩いて行こうとした。

「大丈夫。もういいよ」

背中を呼び止める。

彼が立ち止まって振り向いた。

それから不意にぎゅっと抱きしめられた。

その上、不器用なキスを
二回もしてくれた。

路上でのキスは、彼とは出来ないって
あきらめていたのに。

秘密の28年☆赤い糸の行方

「逢えてよかった」

「うん、逢えてよかった」

思わずオウム返しのように
答えたわたし。

言葉にしながら
本当にその通りだと思った。

「おやすみ」

「うん、おやすみ」

数歩歩いてから、
お礼を言い忘れていることに気づく。

立ち去る彼に向かって、声をかけた。

「ごちそうさま!」

「うん」

それからわたしは
彼とは反対方向に向かって、
歩き出した。

気分は晴れやかだった。

終わったんだ。

でもいい終わり方だったよね。

泣くかと思ったけど泣かなかった。

悲しくなかった。

それどころか幸せでいっぱいだった。

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