彼の仕事場 | 秘密の35年☆赤い糸の行方

秘密の35年☆赤い糸の行方

何度別れても、切れることのなかったふたりの糸。二股だったときも、彼が「あの人」と結婚してしまったときも、わたしが海外で暮らし始めたときも。音信不通6年、14年ぶりの再会から、再び動き始めた恋。国境を越えた超遠距離・婚外恋愛。

<「いい顔」の続きです。>

わたしが好きだった
歌手Tの話をふってみた。

「ねぇ、Tと一緒に仕事をしていたとき、
コンサート会場に花を贈ったりした?」

「うん、贈ったよ」

そう言った後、彼が急に慌て始めた。

「今日って何日?」

「○○日だけど…?」

「まずい!」

聞けば、今日は長年お付き合いのある
女優さんの舞台の初日だと言う。

「舞台に行けない代わりに
花を贈るつもりだったんだ」

なんという奇遇な話の流れ。

手続きをするには、
会社の方がいいと思われた。

「今から会社に行ったら?」

そう提案してみる。

食事の場所から彼のスタジオは
目と鼻の先だった。



局の前まで一緒に歩いて行く。

懐かしい場所。

Tを追っかけしてた頃は
公開番組に参加するため、
しょっちゅうここに来ていた。

寒い冬、凍えそうになりながら
Tが出てくるのを何時間も
待っていたこともあった。

運良く、他のファンの子たちが
誰もいなかったときに、
車に乗り込んだTが窓を開けてくれた。

あのときはTとたくさん話が出来て
うれしかったな。



「ロビーで待ってるね」

そう言うわたしに、

「いいよ、一緒においでよ」

と誘う彼。

「休日出勤してる人がいるでしょう?」

「大丈夫、大丈夫」

「誰かいたらどうするの?」

「大学の後輩だって言えばいい」

「それは無理があるよ」

彼の大学の後輩になれるほど、
わたしには十分な脳みそない。

「前の会社の後輩は?」

「うん、それがいいわ」

実際、本当のことだし。

堂々としている彼を見ていると、
わたしも隠れる必要はないんだと
思えて来た。

狭い廊下をいくつも曲がり、
スタジオを通り抜けた先に
彼のオフィスはあった。

本棚には雑誌と本がびっしり。

壁には番組宣伝のポスターやら
チラシがぎっしり。

机の上には所狭しと資料と台本が山積み。

机だけじゃ足りなくて、
机の下にもいろんなものが置いてある。

その乱雑ぶりは、昔、
彼とわたしがいた職場に良く似ていた。



思った通り、数人の社員が
休日出勤をしていた。

椅子に座って待っていると
彼が暇つぶしにと
雑誌を数冊持って来てくれた。

たったそれだけのことだけど、
他の社員の目が気になる。

特にわたしのすぐそばにいた女性社員。

ふたりの仲を見破られていないかな。

(続く)

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