この度,当ブログの新しいテーマとして,「事例紹介本を設けました。

私が今までに担当した事件の中からピックアップして,判決文(当事者等が特定できないよう,一部マスキング・仮名とさせていただいています。)等と共に紹介させていただきます。もちろん,依頼者の方のご承諾はいただいています。

その記念すべき(?)第1弾として,今回は,「サッカークラブ簒奪事件サッカーをご紹介いたします。


【事件の概要】 ※あくまでも,私の依頼者の視点から見た事実です。

スポーツの指導を行う会社(私の依頼者。以下「依頼会社」といいます。)が運営していた,中学生対象のサッカークラブの運営を,同クラブの指導にあたっていた依頼会社の元従業員や,会員の親らが「簒奪」した上,会員ら50名(当時中学生又は高校生)を原告,依頼会社を被告として,依頼会社が取得した会費の返還等を請求した事件。




【結果】
原告らの請求は棄却(1審判決 参照)。原告らのうち35名は控訴するも,控訴棄却(控訴審判決 参照)となり,当方の全面勝訴



【コメント】

本件では,「『依頼会社から会員の親らへに対し,無償でサッカークラブを譲渡する。』旨の合意が成立していたか。」,「返還請求している会費の対象期間において,依頼会社に債務不履行(サッカーの指導等を行わなかった。)があったか。」等が主な争点となりました。

原告ら(実質的には,「簒奪」を行った会員の親ら)は,「合意は成立していた。」,「債務不履行があった。」と主張しました。

しかし,裁判所は,「会員の親らと依頼会社は,サッカークラブの譲渡契約締結に向けての準備行為をしていたにすぎず,無償で譲渡するとの確定的な合意に至ったとは認定できない。」,「依頼会社と元従業員は,締結交渉中であった指導委託契約締結までの暫定的な合意として,元従業員が引き続きサッカークラブを指導をする旨を合意し,元従業員はこの合意に従ってサッカークラブを指導していたのであるから,依頼会社に債務不履行はない。」旨,全面的に当方の主張に沿った認定をしてくれました。


なお,依頼会社は,本件とは別に,「簒奪」をした会員の親らや依頼会社の元従業員等を被告として,サッカークラブを「簒奪」したことについての損害賠償等請求訴訟を提起しました。

この訴訟において,裁判所は,「(被告らには)サッカークラブを簒奪したことについて不法行為責任が認められる。」,「被告らにはサッカークラブの運営によって○○円の利得が現存し,依頼会社は少なくとも同額の損失を被った。」旨を認定し,被告らの不法行為に基づく損害賠償義務及び不当利得返還請求義務を認めました。