阪神ジュベナイルフィリーズ、勝って『2歳女王』となったタムロチェリー。

逃げて2着に残ったアローキャリー。

桜花賞に一番近い存在、といわれても不思議のない実績を作り上げた。


だが、実際の『桜の女王』候補は他にあった。




サンデーサイレンス産駒シャイニンルビー。

母は重賞・マーメイドS勝ちの6勝馬シャイニンレーサー。叔父にフジキセキがいる良血。


3戦2勝、クイーンカップを勝って桜花賞へ乗り込んできた。

美浦・藤沢和雄厩舎、鞍上は名手・岡部幸雄。関東の藤沢・岡部の名コンビが『桜獲り』に出た。




関西のサンデーサイレンス産駒はサクセスビューティ、チャペルコンサート。


桜花賞トライアル・フィリーズレビューを制して一躍脚光を浴びるのはサクセスビューティだ。

7戦中、逃げた3走はすべて勝利。『逃げるが勝ち』のサクセスビューティ。アローキャリーとのハナ争いか?


エルフィンSを勝ち、桜花賞トライアル・チューリップ賞3着から挑戦するのが、チャペルコンサートだ。

410㌔台と小躯ながら、レースを経験するたびにサンデーサイレンスの血が生きてきた。




フジキセキ産駒。半兄に重賞2勝、皐月賞2着のオースミブライトがいるオースミコスモ。伯母は桜花賞馬シャダイカグラ。

新馬・赤松賞連勝のあと阪神ジュベナイルフィリーズ3着。

桜花賞トライアル・チューリップ賞2着から桜花賞に臨む。


桜花賞へ向けて、まさにエリート・コースを驀進してきたのが、オースミコスモだ。




混戦の中で、不気味さを漂わせるのが関東馬スマイルトゥモローだ。

5戦3勝。フラワーカップを大外捲り、強引な戦法で制した。


桜花賞で豪快な末脚が炸裂するのか?

関東の期待を集めた。




サンデーサイレンスの凄さは、その産駒の種牡馬能力にもあった。

サンデーサイレンス初代産駒フジキセキ。4戦4勝、屈腱炎で早期に引退、種牡馬となった。

大物こそ出現していないが、2年目産駒から皐月賞2着、マイルチャンピオンシップ2着のダイタクリーヴァが出ており、今回の桜花賞にはオースミコスモ、ブルーリッジリバー、カネトシディザイア、ツルマルグラマー、4頭が出走。サンデーサイレンスの3頭を超えていた。




4月7日、桜花賞。

1.スマイルトゥモロー
2.キョウワノコイビト
3.シャイニンルビー
4.タムロチェリー
5.カネトシディザイア
6.ブルーリッジリバー
7.オースミバーディー
8.オースミコスモ
9.アイノブリーズ
10.マチカネテマリウタ
11.ミスイロンデル
12.サンターナズソング
13.シェーンクライト
14.ツルマルグラマー
15.アローキャリー
16.チャペルコンサート
17.ヘルスウォール
18.サクセスビューティ


1番人気シャイニンルビー、2番人気オースミコスモ、3番人気サクセスビューテイ。

4番人気スマイルトゥモロー、5番人気チャペルコンサート。


タムロチェリーは6番人気、アローキャリーは13番人気だった。



大外18番枠から飛び出したのは、サクセスビューティだった。

15番枠アローキャリーはハナを奪えなかった。外17番枠、チューリップ賞を勝ったヘルウォールにも先を越され、3番手。


好位につけたのはチャペルコンサート、オースミコスモだ。


中団にひしめいたツルマルグラマー、オースミバーディー、キョウワノコイビト、シャイニンルビーだ。

中団後方、カネトシデザイア、ブルーリッジリバー。

最内枠、出遅れたスマイルトゥモローが内をついて上がってきた。


最後方は、タムロチェリーだ。




軽快に飛ばすサクセスビューテイ。

先行争いを避けた外枠勢。


オースミコスモ、シャイニンルビーら人気馬が4コーナーへ向かって殺到するが、

先頭で直線に向いたサクセスビューティだ。

2番手そのままヘルスウォール。


伸びきれない好位勢。


先行2頭をとらえて先頭に立ったのは、


アローキャリーだ!



逃げて、つかんだ阪神ジュベナイルフィリーズ2着。2歳№2の座。

実力と認めてもらえなかった。

アネモネS惨敗で、さらに評価は落ちた。


サクセスビューティとのハナ争いにも敗れた。

誰もが、そう見ていた。


地方・ホッカイドウ競馬から中央に憧れて、緑のターフを走りたくて、やってきたアローキャリー。


ハナ切るだけが、私の競馬じゃないッ!



我慢に、我慢を重ねた・・・・・・勝つために。



3番手で折り合った。

息遣いを消し、ひたすら直線を待った。



抜け出したアローキャリー。

一目散にゴールをめざした!


追ってきたのは、ブルーリッジリバーだ!

シャイニンルビーだッ!


馬群を割って、2頭並んで、猛然と迫ってきた。

カネトシディザイアも、追い上げを見せた。



サンデーサイレンス産駒シャイニンルビー、フジキセキ産駒ブルーリッジリバー、カネトシディザイア、『話題の血』が追い上げる。



誰が来ようと、アローキャリーはひたすらゴールをめざすだけ。


もってくれ、私の血、私のスピード!



死に物狂いだった。


明日はいらない。いま、この時を・・・・・・輝きたいッ!




まばゆいゴールを先頭で駆け抜けた、



アローキャリーだった。



桜花賞馬アローキャリー。



1着アローキャリー

2着ブルーリッジリバー

3着シャイニンルビー

4着カネトシディザイア

5着ヘルスウォール


(つづく)