外国産ダービーといわれるようになったNHKマイルカップ。

18頭中11頭の外国産馬が出走してきた。


朝日杯3歳Sを勝った外国産馬エイシンプレストンは4歳になり、初戦のきさらぎ賞を9着のあとアーリントンカップ、ニュージーランドトロフィー4歳Sを連勝。

最有力候補となるはずだったが、骨折が判明、休養を余儀なくされた。




エイシンプレストン不在のなかで、武豊騎乗で人気になったのがマチカネホクシンだ。

3歳時は朝日杯3歳Sをエイシンプレストンの3着。

4歳になって共同通信杯4歳S、イーグルカフェの5着。ニュージーランドトロフィー4歳Sをエイシンプレストンの2着。

後方一気、鋭い切れ味で上位を賑わした。ただ、勝ち切れないのもまた、マチカネホクシンらしかった。

武豊騎乗で勝利をもぎ取れるか?期待と不安が交錯した1番人気だった。




50歳を超え現役を続ける名手・岡部幸雄が乗る外国産馬イーグルカフェ。

マチカネホクシン同様、後方一気の脚質。


3歳時、3,2,1着、3戦目で未勝利を脱出。

4歳、いきなり重賞・京成杯、9番人気で2着。

共同通信杯4歳S、4番人気で初重賞制覇。潜在能力を見せつけた。

ニュージーランドトロフィー4歳Sはエイシンプレストン、マチカネホクシンに敗れた。2頭ばかりではなく、NHKマイルカップ出走のアグネスデジタル、トーヨーデヘア、ネオポリスにも先着された・・・・・・7着。

不安定さを見せたイーグルカフェ。

超ベテラン、名手・岡部幸雄に『NHKマイルカップ勝利騎手』の称号を与えることはできるのか?




『スイート』の冠で走るシンボリ牧場の外国産牝馬スイートオーキッド。

クリスタルカップ(G3)・芝1200mを制し、外国産ダービーに参戦。

スプリント戦を制したスピード牝馬が挑むマイルの頂点。




ダート6戦3勝、2着2回、3着1回。地方G2・全日本3歳優駿を勝った外国産馬アグネスデジタル。

芝では3戦0勝、3着2回。クリスタルカップ3着、ニュージーランドトロフィー4歳S3着。

芝でも走る!

栗東・白井寿昭調教師、自ら資料を集め、厳選し、生産者と直接取引で日本に輸入したアグネスデジタル。

きっと芝でも走る! 熱い思いのNHKマイルカップ挑戦だった。




デビューから単勝1.5倍・1着、1.5倍2着、1.4倍1着。圧倒的人気を得ていた外国産馬トーヨーデヘア。

アーリントンカップ・4着、ニュージーランドトロフィー4歳S・4着。

やや翳りが見えた逸材。


アーリントンカップから手綱を取った後藤浩輝にとっても、踏ん張りどころの一戦だった。

1992年デビューの後藤浩機輝。師であるはずの所属調教師・伊藤正徳と折りが合わず、騎乗馬に恵まれなかった3年間。4年目にフリーとなり、5年目には独力でアメリカへ半年間、武者修行。

良きも悪しきも後藤浩輝の『我の強さ』が、騎手の始まりから一貫していたといえる。


競馬界に何のコネクションもなく飛び込んだ後藤浩輝。『ステッキ一本で道を切り拓くしかない』、その思いが技術を向上させた反面、人間関係で多くの確執も産んだ。

前年、1999年にはレースにおける確執から後輩・吉田豊を暴行する事件を起こし4カ月の騎乗停止を受けている。

復帰し、レースにより一途に取り組むようになった後藤浩輝。自分が乗るようになって4着、4着のトーヨーデヘア。


このままでは終わらせられないッ!トーヨーデヘアを勝たせる。




5月7日、NHKマイルカップ。

1.ファイターナカヤマ
2.トッププロテクター
3.トーヨーデヘア
4.アグネスデジタル
5.ノボジャック
6.マイネルブライアン
7.スイートオーキッド
8.ハセノバクシンオー
9.プラントタイヨオー
10.マチカネホクシン
11.ミスターサウスポー
12.イーグルカフェ
13.ユウマ
14.ラヴィエベル
15.ダイワカーソン
16.マルターズスパーブ
17.ネオポリス
18.ピサノガルボ


1番人気マチカネホクシン、2番人気イーグルカフェ、3番人気スイートオーキッド。

4番人気アグネスデジタル、5番人気トーヨーデヘア。



外からユウマが飛び出し、内からトッププロテクター、ファイターナカヤマが続いた。

ユウマが敢然と先頭を主張。


外枠勢がグングン追い上げ、マルターズスパーブ、ネオポリス、ピンク帽が2,3番手。

トッププロテクター、ダイワカーソン、スイートオーキッド、ファイターナカヤマ、ひと塊の集団が続く。

アグネスデジタルもその中にいた。


中団から進めるのはトーヨーデヘア。


後方から行くイーグルカフェ・岡部幸雄。

マチカネホクシンを意識したか?


後方でもマチカネホクシンより前だった。


マチカネホクシン・武豊は、ピサノガルボとともに最後方。

いつも通り、追込みに賭けた。



3ハロン、34秒2。


速い流れの中で、3,4コーナー、激流に耐える先行馬。


直線、消耗が現実となった。



いち早く消えたユウマ。先頭に立ったマルターズスパーブ。

すぐ消え、内からスルスルと先頭に立ったスイートオーキッド。


馬場のど真ん中を突き抜けてきたのは、トーヨーデヘアだ!


粘るスイートオーキッドに並び・・・・・・交わし・・・・・・先頭に立った。


後藤浩輝、馬群で耐え、忍び、機を待った。

直線半ば、馬群を抜けたトーヨーデヘア。後藤浩輝は渾身のムチを振った。



大外から、やって来た。


岡部だ、イーグルカフェだ!


武豊だ、マチカネホクシンだ!



強烈に伸びるマイチカネホクシン。


同じだ伸びだッ!

岡部は感じた。イーグルカフェの手応え、伸び。


手綱に伝わる感触に確信した。

マチカネホクシンには、負けない!



マチカネホクシンより1馬身、前にいるイーグルカフェ。

あとは前にいる、トーヨーデヘアをつかまえるだけ。



伸びたイーグルカフェ。マチカネホクシンを従えて、最後の伸び脚で迫った!



勝てる、勝つ、勝つんだぁーッ!

内へ持たれながらも、最後の力を振り絞るトーヨーデヘア・後藤浩輝。



大外を伸びるイーグルカフェ・岡部幸雄。



内・・・・・・外、離れて、同時にゴールへ飛び込んだ!



ハナ差。



勝ったのは、イーグルカフェだった。



51歳、大ベテラン・岡部幸雄。また一つ、勲章が増えた。



1着イーグルカフェ

2着トーヨーデヘア

3着マチカネホクシン

4着ミスターサウスポー

5着スイートオーキッド


(つづく)