社台レースホースが送る『ダイナ』の女優ダイナアクトレス。

新馬戦から3戦、5馬身、6馬身、5馬身、他を威圧する強さで輝いた。

大女優、名女優への道を何の戸惑いもなく突き進む黒鹿毛の麗人。


4歳となった3月、桜花賞を意識してすみれ賞から新たなスタートを切った。

430㌔、まだ少女っぽい華奢な馬体だが、パドックで見せる動きには全身バネと思えるほどの躍動感があり、黒い馬体からは独特のオーラを感じさせた。

この日、ダイナアクトレスに何があったのか? 気性の激しいダイナアクトレスはゲート入りを嫌った。無理やり押し込まれたゲート内で暴れ、後ろ脚を蹴り上げゲート側面の台に乗り上げてしまった。検査の結果、馬体に異常なし。発走となったが、精神面の異常は定かでない。

パニック状態からの発走、8頭立て8着に終わった。


これがダイナアクトレスの女優運命を大きく変えた。

3歳夏で3連勝。深管不安もあって大事をとって休養、4歳を迎えた。その間に出現した4戦3勝、メジロラモーヌ。最優秀3歳牝馬。

『メジロラモーヌに勝利するために』、牝馬クラシックに照準を当てられた、はず。

枠入り不良、1か月間の出走停止。桜花賞への出走は不可能となった。



メジロラモーヌ。生まれた時から覇気を感じさせないほどの性格の大人しい牝馬。

ダイナアクトレスと同じ黒い馬体。その毛色は青鹿毛。茶系黒褐色の黒鹿毛ダイナアクトレスと違い、青系黒褐色のメジロラモーヌ。

神秘の青毛、紫色の輝きを持つ漆黒の馬体に近い。光を浴びた部分が青みを帯びる。

まさに輝ける時まで、その神秘を隠していたか?

デビュー新馬戦・ダート1400mで出した約20馬身差、3.1秒差の大差勝ちは、メジロラモーヌ神秘の欠片だったのかもしれない。


4歳初戦、1月のクイーンカップは謎のままの4着と敗れ、まだまだその強さに不安定感をもっていたメジロラモーヌ。

3月、桜花賞トライアル・4歳牝馬特別に出走。関西の河内洋に鞍上を託した。のちに『牝馬の河内』といわれるようになった、その発端となったのがメジロラモーヌだった。

中団からクビ差だが差し切り快勝。最有力候補として、桜花賞へ向かった。



ダイナアクトレスが抜けた『ダイナ』から桜花賞を狙うのはダイナフェアリー。3歳牝馬Sでメジロラモーヌの2着。4歳になって京成杯を勝ち、きさらぎ賞3着、トライアル4着で桜に臨む。


トライアル3冠、ダービー2着、菊花賞2着、ついに『冠』を獲れなかったサンエイソロンの全妹レイホーソロン。チューリップ賞を制し、兄の果たせなかった夢の『冠』獲りに挑む関西の気鋭。


阪神3歳S2着ノトパーソ。恵まれた資質など持ち合わせていない。だが、誰にも負けない心の強さを持っていた。走るからには、1頭でも多く追い抜いて見せる。

たゆまぬ闘争本能が、彼女を強くした。


チューリップ賞2着、マヤノジョウオ。

彼女もまた、走って走って強くなった。素質馬、評判馬には、負けたくない。




4月6日、桜花賞。

1.ポットテスコレディ
2.スイートシャルタン
3.マツオリアーナ
4.マヤノジョウオ
5.サウンドジェット
6.ノトパーソ
7.リキビーナス
8.ダイナフェアリー
9.カツダイナミック
10.ユウミロク
11.グリーンサツキ
12.ワンダーブレシング
13.メジロラモーヌ
14.ハイブリドーマ
15.ジューンブライド
16.エイシンゴーディー
17.シンレッド
18.オギカテリーナ
19.マチカネエルベ
20.レイホーソロン
21.チュウオーサリー
22.モガミアレン


1番人気メジロラモーヌ、2番人気ダイナフェアリー、3番人気レイホーソロン。

4番人気ノトパーソ、5番人気マヤノジョウオ。



ゲートが開いた。激しい先頭争い。

カツダイナミックが飛び出したが、外19番枠、マチカネエルベが強引に行って、先陣を切った。

速い、速い。

カツダイナミック、チュウオーサリーが追う。

ダイナフェアリー、サウンドジェット、ハイブリドーマ、速い流れに輪をかけた。


中団、外に付けたメジロラモーヌ。慌てず騒がず、鞍上・河内洋との息もピッタリ合った。

マークするレイホーソロン。

後方ノトパーソ。マヤノジョウオは後方3頭目。ひたすら直線に賭けるか?



半マイル45.7、魔の桜花賞ペース。

3コーナー過ぎ、早くも息切れし始めた先行群。


メジロラモーヌは進出を開始した。

外を加速、4コーナーで3番手に上がった。


逃げて、逃げて先頭を守るマチカネエルベ。

脚色は衰えない。驚異の粘り12番人気。父はアローエクスプレスだ。


直線に入った。


直線半ばで、力尽きたマチカネエルベ。


突き放したメジロラモーヌ。


内から伸びるチュウーオーサリー、外から来るレイホーソロン。

だが、勢いはマリカネエルベもとらえられない。


外から、一気のの末脚を見せたのは、マヤノジョウオだ!

レイホーソロンをとらえ、マチカネエルベをとらえたッ。


そこまでだった。


青き輝きをもった黒い馬体。

メジロラモーヌの突き抜けには、到底及ばなかった。


桜花賞1冠、『桜の女王』に輝いたのはメジロラモーヌだった。


メジロラモーヌの狙うものは、『樫(オークス)の女王』『エリザベス女王』。

グレード制で新制なった牝馬3冠。


1着メジロラモーヌ

2着マヤノジョウオ

3着マチカネエルベ

4着レイホーソロン

5着チュウオーサリー


(つづく)