500㌔を超える雄大な馬格に似合わず、逃げ・先行で粘り込む、器用な脚で牝馬の王道を走り続けた馬。

主役の座につくことはなかったが、牝馬クラシックには欠かせない。

そんな馬がアサヒライジングだった。

父ロイヤルタッチ、母アサヒマーキュリー。母の父ミナガワマンナ。


父ロイヤルタッチはサンデーサイレンス第2世代、ダンスインザダーク、バブルガムフェロー、イシノサンデーとともにサンデー四天王といわれたが、皐月賞2着、ダービー4着、菊花賞2着、天皇賞秋4着と善戦するも、ついにG1は獲れなかった。

サンデー産駒ということで種牡馬になったが、産駒が走らず、廃用寸前にアサヒライジングの出現で引退の危機を免れた。

母の父ミナガワマンナは菊花賞を制し、大名馬シンザンの仔初のクラシック馬(他にミホシンザン、皐月賞、菊花賞、天皇賞春)となった。ミナガワマンナも唯一その血を残すのはアサヒライジングのみである。

母方から、ミナガワマンナ、シンザン、ヒンドスタン。父方からロイヤルタッチ、サンデーサイレンス、他にマルゼンスキー。テスコボーイ。スターロッチ。日本ゆかりの名馬、名種牡馬の名がズラリ並ぶ血統。




血を残す宿命を知ってか知らずか、アサヒライジングは走った。




2005年、9月、新馬デビュー。5番人気3着。

未勝利、サフラン賞を連勝。阪神ジュベナイルフィリーズ・G1では6番人気5着。



2006年、4月、桜花賞。

逃げに逃げて、キストゥヘヴン、アドマイヤキッス、コイウタの4着(9番人気)。


5月、オークス。

2番手から粘り込んで、カワカミプリンセス、フサイチパンドラの3着(7番人気)。


7月、アメリカンオークス(アメリカ)

出遅れて追い上げ、ゴメスの2着。


11月、秋華賞。

好位4番手から粘り、カワカミプリンセスの2着(5番人気)。


11月、エリザベス女王杯。

先行粘り込み、フサイチパンドラ、スイープトウショウ、ディアデラノビアの4着(5番人気)。



2007年、5月、ヴィクトリアマイル

逃げて粘りに粘る、コイウタの2着(9番人気)。


11月、エリザベス女王杯。

2番手潰れる、ダイワスカーレット、フサイチパンドラ、スイープトウショウから離れて9着(4番人気)。

G1、唯一の惨敗。成績が人気を下回った。



その後、脚部不安で1年間休養。復帰戦の府中牝馬Sで左中手骨を骨折、18着惨敗、引退することとなった。



いま、北海道浦河で繁殖牝馬として、第二の馬生を送っている。


つねに全力だった。

有り余るスピードで先頭に立ってきたわけではない。

勝ちたい、少しでも前にいれば、着順が上がる。


単純だった。器用じゃない。がむしゃらだった。ひたむきだった。

この身に受け継がれた血の系譜を途絶えさせないために、

ただ、ひたすら前を向いたアサヒライジング。



日は昇った。


初仔、タニノギムレットとの仔が、


いま、母と父の血を受けて、スタンバイ。