本当に、あんなご飯なのかな?
沖田修一監督作品、日本、125分
堺雅人様、生瀬勝久様、きたろう様、高良健吾様、豊原功補様、
西田尚美様、古舘寛治様、嶋田久作様他
昭和基地より、ずっとずっと奥地?の衝撃の寒さで、
ペンギンやアザラシやウィルスも住んでない観測所。
海上保安庁で、そこへ派遣されるのを夢見ていた隊員に、
遂に辞令が出て、感激で夢いっぱい・・・もつかの間、
交通事故にあって、あえなく赴任不可能に。
二十年越しの夢がああああ。
そこで、船長嶋田久作様から、「そういうことだから、おめでとう」
「え・・・家族と相談させて下さい」
「おめでとう」
「いえ、か、家族に・・・」
「おめでとう!」
といった展開の元、西村はウィルスも居ない南極の最果てに。
平均気温、-54度。標高3800メートル。
空気も薄い中、自分も合わせて八人だけで過ごす一年以上!
1997年という設定だから、今は、多少は生活環境変わってるかな。
電話も一分740円なので、そうそうかけられない。
「娯楽」なんてほぼない環境で、食は重要な楽しみ・・・な筈。
あ、朝ごはん?これ?旅館並じゃん!なご馳走。
しかし、なんたって親爺軍団。丁寧に作られたぶりの照り焼きに、
醤油をどば~っとかけちゃったり、
椎茸を一枚一枚より分けたり。
翌朝は、お魚、塩焼きでした。
毎日、意匠を凝らし、喜んでもらえるよう料理してる、
西村にとっては、それは微妙な気持ちにもなろう。
堺雅人様って、そういう、うっすら表情を現すのお上手ですねえ。
しかも、中毒並なラーメン好き。どんどん食べてしまって、
ラーメンがきれる。中毒並なので、大変つらい。
麺を作れないか?とも言われるが、無い材料がある。
「蟹なら沢山ありますから」と、蟹がど~ん。
誕生日会を・・・と企画し、「何か食べたいものありますか」と探り。
「別にメシ食うために南極に来てるわけじゃないしさあ」すげない答え。
めげすに聞くと「肉」「肉って」「だから肉だよ」
とにかく沸点が低いので、塊肉があっても、ローストビーフ難しい。
しかし、必要は発明の母、何とかするもんだなあ・・・
普段、こういうお肉の塊、食べないんだけど、食べたくなっちゃいました。
伊勢海老が見つかると、全員が「エビフライだ!!!」。
伊勢海老です。西村「伊勢海老ですよ、他に色々あるでしょう」、
抵抗を試みるが、「西村君、僕たち気持ちはすっかり伊勢海老だから」。
で、これ。
食べにくいってだけの結果に。
「やっぱり刺身だな」にほくそ笑む西村。
出発前日に抜けた娘の乳歯を、騒動の中、
海中(氷中?)深くに落とされた時は、温厚な西村が寝込む。
彼の代わりにと、団員全員が作る唐揚げ。
油を高温に出来ないので、べちゃべちゃした唐揚げに。
これが、妻が作った唐揚げを思い出させる。
「僕の身体はね、ラーメンで出来ているんだよ」と言うきたろう様。
さりげない、隊員からの元素構成のアドバイス。
ラーメンを作るのに足りなかった素材も、工夫で補い、
完成した時の、全員の歓び。
そんな閉ざされた空間での日々が紡ぐ人間関係。
帰国した後、「あの日々はなんだったんだろう」。
「当たり前」の生活の中、家族で過ごす幸せ。
でも、人生のほんの一瞬の、特殊な生活。
それは、大変でも、とてもとても貴重な日々だったのかもしれない。
子供と幼児と共に待つ妻の、淡々と冷たいようなファックス・電話の内容。
それも、夫に郷愁を強く感じさせないためのもの。
西田尚美様ならではの、独自のニュアンスが素敵でした。
離れているからこその、思いやり。
お話は、実在の西村淳様のエッセイですが、
さすがに、ロケ地は南極ではなく、網走だったそうです。