再掲:第百六十九夜・エリザベート・バートリ様 | 時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

2012年8月18日記事

 

「見た目」「若さ」「細さ」に執着する女性・・・

以前、ファッション業界に居たせいか、同僚で結構おられました。

それをどうとらえるかは、人それぞれかな。

でも、ナチュラルに生きてこられた方は、

今も、かなりかっこいい気がします。

妙な自信をお持ちの方は、物寂しいような・・・

 

妄 執

 

「現実」は一瞬にして過去になり、

時が過ぎて、歴史となり、

語り継がれる人々の、どこまでが真実かは、

誰にも断言することは出来ない。

 

 

今月、「金髪」の方を連続してどこまで「夜」出来るか、

挑戦中ですが、今日は久々の納涼第五弾。

(かなり、残虐的な面は差し控えておりますが、

怖がりの方は、中盤くらいでやめる事をお勧めします)


 

静かに美しく坐している、肖像画の美女。

エリザベート・バートリ様(1560年8月7日~1614年8月21日)

ハンガリーの伯爵夫人。正確な発音ではエルジェーベトらしい。


 

 

 

フェレンツ伯爵と結婚しているが、

バートリ家が、ハプスブルグ王家につながる、

ハンガリー屈指の名門で、夫より家柄が飢えになる為、

結婚後も、姓は「バートリ」となり、その名は、

「名門」とは違う所で、名を残すこととなる。


 

蝶よ花よと育てられた幼少期の後、10代になって間なしに、

婚家で、結婚前に、姑から花嫁教育を受けることに。

実際の結婚は15歳。

それまでの間、現代まで語り継がれる、相性の合わない姑から、

軍人の妻としての心得を、一挙手一投足まで監視・指導。


 

こちらが旦那様と思われる肖像画。

夫婦仲は悪くなかったようで、結婚後、姑と暮すのは嫌だろうと、

いくつかの城の中から、妻に選ばせて、

スロバキア国境に近い、チェイテの小城に移っています。

その後、エリザベートさま44歳の時に死去。


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

 

過去に描かれた城。

いくつかある城から、この淋しげな城を選んだ、

エリザベート様は何を想って選んだのか。


時は止まる君は美しい

 

 

現代に残る城跡。

ここで行われた行為を、城は記憶しているのでしょうか。



時は止まる君は美しい

 

昨夜、「また改めて」と書いた、ジュリー・デルビー様の映画

「血の伯爵夫人」が最も有名なようですが、

あまりにも有名な話なので、他にも、映画があるようです。


時は止まる君は美しい

時は止まる君は美しい

 

この二本の映画のスチール写真を拝借しながら、

話しを進めさせて頂きます。


時は止まる君は美しい

 

王族によくある事ですが、長い近親婚の結果、

バートリ家には遺伝的な病疾が幾つかあったと言われます。

エリザベートにも起こったという、癲癇、

残忍、狂気、魔術への耽溺、淫乱(荒淫で夫を二名殺し、

三人目の時は、自分が命を落としている伯母)等が、

各種、文献に共通して出て来ます。


時は止まる君は美しい

 

自らの美貌に、執着したエリザベート様。

美を認められることが彼女のアイデンティティーだった?


時は止まる君は美しい

 

すごいですね、この場面。肖像画の衣装を再現してます。

着たら祟られそうで、怖い。

 

夫の留守中には、何人かの青年貴族と情事を持ったと言われます。

その情事も、自分の美を確認するためだったとも分析されますが、

一方、夫の死後、5年後に再婚を望んだ相手もいたと言いますから、

一方的に、話しを「残虐」一辺倒にする訳にはいかないかも。

広大な領地を管理し、諸外国に遊学する学生らの援助もしています。


 

しかし、どちらにしても、夫の生前から、エリザベートには、

残虐性があり、若い娘が血を流すのを見るのを好んだらしい。

使用人への折檻は夫から教えられたという説もあり、

・・・もしかしたら、そういう加虐的な面で、気の合う夫婦だったのか?


時は止まる君は美しい

 

誰がどのような性格だと言っても、変わらないのは、

誰にでも共通して、時間は流れると言う事。


時は止まる君は美しい

 

四人の子供を出産した後、エリザベート様の容色にも、

衰えが生じ、彼女を脅かす。


 

定着している話しでは、不器用な新人の召使にいらついて、

平手打ちした際に、指輪が召使に傷をつけ、

飛び散った血を拭った皮膚が若々しく見えたという話しと、

癲癇の発作を起こした時に、解放しようとした侍女に噛みつき、

若い娘が血を流し、苦しむ様を見た時、快感を覚えたという話など。


時は止まる君は美しい

 

やがて、伯爵の死後、あの城に奉公に上がった娘は、

帰って来ないという噂が広まる。

やがては、下級貴族の娘に「礼儀作法を習わせる」と誘い出すに至り、

また、監禁されていた娘が、一人、逃亡する事に成功し、

遂に、捜査の手が伸びることとなる。


時は止まる君は美しい-「鉄の処女」

 

このような「鉄の処女」と呼ばれる、拷問道具などで、

集められた若い娘たちは、刺し、切り刻まれて、

苦悶のうちに、血を抜き取られ殺されていた。


時は止まる君は美しい

 

エリザベート様はその血を浴び、血を満たした風呂に入る事で、

若さが保てると信じ、また、娘たちの苦痛を眺めるのを楽しんだ。

 

 

その手伝いをしたと言われるのが、ヤーノシュという小人の下男と、

イロナとドルコという侍女で、3人とも、自供の上、

死刑に処されています。


時は止まる君は美しい

 

裁判では、拷問の詳しい内容が、様々語られたと言います。

しかし、当時の取り調べ自体が拷問を伴ったと思えば、

同性愛説まであって、どこまでが真実かは闇の中。

しかし、捜査が城に及んだ際、門は開けられていて、

様々な拷問の跡がそのまま残されていたというのですから、

全てが作り話とは考えにくい事件です。


時は止まる君は美しい

 

エリザベート様自身は裁判に出廷していませんが、

一切の犯行を否認したそうです。

しかし、本人の記録に650人の犠牲者が記されていたとか、

関係者の手紙によると、300人と認定されたとか、

裁判では、80人が認定されたとか諸説あり。


時は止まる君は美しい


時は止まる君は美しい

 

家柄から、エリザベート様自身は、処刑は免れています。

その代わり、城の自分の寝室に、生涯幽閉されることに。


時は止まる君は美しい

 

水と食料を、一日一度送りこむ為の、小さい扉以外は、

窓も、石や漆喰で埋められた、暗黒の中で、

それでも、三年を生き伸び、54歳で世を去る。


時は止まる君は美しい

 

城の上の四隅には、絞首台が据えられ、

死刑となるべき罪人が入っている事が告示され、

後世にまで残されたそうです。


時は止まる君は美しい

 

犠牲となった、無数の娘さんたちの叫びさえ、時はのみ込み、

今は、伝説だけが語り継がれています。

若き娘の生き血を吸う所から、女吸血鬼のモデルにも。

シェリダン・レ・ファニュの「カーミラ」が有名。


時は止まる君は美しい-カミーラ

 

こちらは「カミーラ」の映画化のスチール。


時は止まる君は美しい-カミーラ亜弓

 

日本では、美内すずえ様の「ガラスの仮面」の中で、

姫川亜弓様がカミーラを演じられました。

美内すずえ様は、それ以前(だからかなり前・・・)にも、

エリザベート・バートリさま幽閉をモチーフに据えた作品を、

描かれていらした記憶があり、この題材に感じられるものを、

お持ちだったのではと思われます。


時は止まる君は美しい

 

池田理代子様の「ベルサイユのばら」の外伝でも、

この事件が題材として取り上げられており、

その巧みな、フィクションとノンフィクションの結合で、

池田理代子様ならではの物語となっていました。

 

家紋↓


時は止まる君は美しい

 

ここに残る、一通の手紙。

新婚の妻が、姑に書き送ったという一文。

 

「御存じのように、夫は出陣されました。

夫の留守の間、もう一度、お義母様のご訓育を仰ぎたいのです。

なぜならば、夫はわたくしを美しいとおっしゃいます。

どうすれば、お義母さまのように醜くなれるのか、

再度教えて頂きたいのでございます。」

 

夫が、戦地で家庭に未練を持たないように、

男性を惹きつけてはいけない、毅然と、厳しく、

と教え込んだ姑に送った手紙。

姑からは、あんたの手紙で、私なんかより、

あんたの方がずっと醜いって解るわよ、

教えることなんぞないわいっ!

というのがお返事だったそうで。


時は止まる君は美しい

 

真、自己顕示欲・自己愛というものは恐ろしい。

 

外伝


時は止まる君は美しい

 

吸血鬼のモデルというと、ルーマニアの、

ワラキア公ヴラド3世(1431年11月10日~1476年)

時は止まる君は美しい

 

大量誘拐殺戮というと、フランスの伯爵、「青ひげ」のモデル、

ジル・ド・レイ伯(1404年9月10日~1440年10月26日)

 

と、有名な男性もいらっしゃいますが、

ヴラド公は、ルーマニア独立のための戦、

ジル・ド・レイ伯も、最後には涙して懺悔。

 

・・・真に、女性の「若き美貌」への執着は怖い・・・

           ↑ が初めから無い私は、怖くない。