金慶珠『歪(ゆが)みの国・韓国』
金慶珠『歪(ゆが)みの国・韓国』(祥伝社新書 320)
東京 祥伝社 2013年6月 181頁 780円+税
本書の著者である金慶珠(キム・キョンジュ)は東海大学教養学部国際学科准教授で、コミュニケーション論の専門家です。テレビのコメンテーターとして活躍しているので、ご存知の方も多いでしょう。本書は、韓国の歪みを「情報の歪み」(第一章)、「成長の歪み」(第二章)、「対立の歪み」(第三章)の三つに分け、「テレビや新聞などのメディア情報のあり方から、韓国に対する先入観や誤解の原因を見出(みいだ)し、その本当の姿をとらえ直」すことを目的としています(6頁)。
「情報の歪み」(第一章)では、日韓のマスメディアに見られるレッテル貼りが批判の対象とされます。「韓国は日本に似ている」「韓国は日本に似ていない」、「日本脅威論」「日本協力者論」、「日本モデル論」「日本競争者論」、「親日的」「反日的」といったようなものです。このようなフレーム化、ステレオタイプ化の議論は、「わかりやすさ」を伴うけれども、「二者択一」のリスクをはらんでおり、単純化による矛盾を解消するために、強引な情報処理が行われがちだと指摘します。それを避けるには、事実を注意深く多角的にとらえるほかに術はないというのですが、韓国が日韓間に横たわるさまざまな問題について多角的にものごとを検証するなどということは考えられませんし、日本のマスコミが韓国のイメージダウンに繋がる報道を意図的に避けていることに触れられていないのも問題です。
「成長の歪み」(第二章)では、韓国の経済状況が悪化しているという見方に対して、日本よりも韓国の方がマシという議論が展開されます。ここで扱われる統計的データとしては、ジニ係数、相対的貧困率、失業率、非正規雇用率、格差感、GDP成長率、上位10社の年間売上高の対GDP比なのですが、
「対立の歪み」(第三章)では、歴代の大統領が「悲劇的な最期」を迎えていることが述べられ、その背景には韓国内部の対立の構図があると指摘します。対立軸としては、「独裁」「反独裁」、「保守的」「進歩的」、「反共主義」「成長主義」、「慶尚道」「全羅道」などが挙げられます。その中で、日韓基本条約にもとづく有償・無償の支援が、韓国を経済成長へと導いたことが述べられているのは評価すべき点でしょう。韓国は日本に感謝しろとはいいませんが、韓国が最貧国から脱出できた背景には日韓基本条約があることを日本に向けてではなく、韓国国内に向けて大いに喧伝してもらいたいと思うのですけれど、まあ無理でしょうね(笑)。
金慶珠(1967- )主要著作:
著書:
『場面描写と視点―日韓両言語の談話構成とその習得』秦野 東海
大学出版会 2008年2月 185頁
『歪(ゆが)みの国・韓国』(祥伝社新書 320) 東京 祥伝社 2013年
6月 181頁
『日本が誤解される理由』(イースト新書 018) 東京 イースト・プレス
2013年12月 238頁
『悪韓論VS悪日論―日本と韓国はどちらが嘘をついているのか』(井
上和彦と共著)(双葉新書 077) 東京 双葉社 2014年1月 254頁
編著:
『日韓の共通認識―日本は韓国にとって何なのか?』(李元徳と共編)
(東海大学文明研究所監修) 秦野 東海大学出版会 2007年8月
189頁
【追記】(2014年2月1日)
主要著作を改訂しました。