突如降って湧いた旅。宮城県最南端の丸森から目指すは最北端の栗原。

どんなとこへ行くか、前情報はほとんど入れていなかった。古民家ギャラリーで陶器の展示があり、その間のイベントに舞踏がある、という大まかなものだけ。

誘ってくれたシーナさんと2人、ひたすら北上。おもしろいものだ。舞踏には全く興味がない。そして踊り手は学生時代に大学で存在は知っていたが関心もなかった人。何が自分をここまで来させたか、一般的説明は難しい。流れというほかない。

3時間ほどかけて目的地「風の沢ギャラリー」に到着。
STONE SCULPTURE-風の沢1
とても気配りされた場所。ひとつひとつのもの、草木や竹、石すべてのものがあるべき場所におさまりよく落ち着いている。どれひとつも妙な主張をするわけでなく、とても調和のとれた空間。そしてそれらを維持するべく手入れがいきとどいている。あまりに自然すぎて見落としがちだが、ここまでのバランスは見事というほかない。よほどランドスケープデザインを熟知している人間だろうと思った。

STONE SCULPTURE-風の沢2

聞けばオーナーの女性が全体のイメージをすべて取り仕切っているというので驚いた。その筋の関係者ではない、というところが逆に学術的ハリボテにならずに済んでいるのかもしれない。感性が図抜けている。

一回りしたところでオーナーとご対面。当初東京の方と伺った。が、その言葉に違和感がある。西だ。何故だろう。そして最初の違和感は親近感に変わる。我慢できなくなって「ご出身は北陸ですか?」と聞いた。その言葉が鍵だったようだ。結果、郷土は隣町、高校が一緒、つまりは大先輩だった。事実は小説よりも奇なり、なんて表現があるが、あまりにベタな三流ドラマの展開のような話に思わず笑ってしまった。

ご縁というものの不可思議なおもしろさを再確認し、感謝した。

STONE SCULPTURE-風の沢陶器1

このギャラリーで展示するために狙って制作した陶器の作品が並ぶ。もはや陶芸というジャンルではない。生け花とも通ずるが、これは立体造形であり空間構成。

STONE SCULPTURE-風の沢陶器2

相当な月日がかかったと思われる。後で制作過程を撮影したDVDを拝見、やはりものすごい日数と関係スタッフ。そしてこの展示における陶器に使用した粘土の総量は20トンらしい。

STONE SCULPTURE-風の沢陶器3

最初ノーマークだったがこの展示はなかなか見応えがあった。このためだけに来る価値は十分にある。ギャラリーだけでもその価値はあるのだから何とも贅沢。さらにこの日は舞踏まであるのだから。
STONE SCULPTURE-風の沢舞踏

15年ほど前、学生時代に森さんの舞踏に傾倒した同級生がいて、ビデオを見せてもらったことがあったが、その時は全く興味がなかった。今回の舞踏はその際のものとは趣が異なるものだったが、それを受け取る自分自身の変化が大きいためかとても新鮮に感じた。初めてそのジャンルに触れるといってよい。
STONE SCULPTURE-風の沢陶舞踏2

自然な自己表現、混じりけがなく、そぎ落とされている。何かが自分をノックしているのを感じた。


この日はお気に入りの格好をしていたこともありかなり注目を浴びた。それとオーナーの先輩の存在もあって、いくつかのご縁が生まれた。さらに夏のイベントへのお誘い。ものすごい収穫。多すぎて濃すぎていっぱいいっぱい。なにも一日にこんなに集中することないのに至福のごほうびがてんこ盛り。来てよかったなぁと思いつつ、ここでゆっくりすることなく次の場所へと急いだ。


STONE SCULPTURE-毘沙門堂

シーナさんが興奮気味に、「坂田明と田中泯が来てるのよ!」なんて言っていたのだが、無知な自分は彼らがどんな存在か見当もつかない。偶然入手した情報をたよりに岩手は一関へと向かった。場所は達谷窟毘沙門堂。この場所もすごいなと感じた。ここも目指してくるに十分価値ある場所。今日はなんて日なんだ。超一流の2枚看板の演技演奏にしてはひっそりと催されていた。あえてそういう形態にしたのだろう。その理由も鑑賞してすぐ知ることとなった。仕事というよりも彼ら自身がこの場所でやりたいから好きでやってるという印象。鑑賞者がいようがいまいが関係なさそう。この日集まった人はとても贅沢なひとときを共有した。自分は音楽も舞踏も素人だが、それでもその研ぎ澄まされた表現には感じ入るものがあった。うまく言葉にできないがとにかくすごい。最後田中さんは汗だくで階段を下りていった。入り口で見ていた自分は偶然、彼がスタッフに漏らした言葉を聞いた。「途中憑かれちゃったよ。びったりくっついてたね。」確かに後半狂気に近いものが感じられた。それだけの凄味があった。

5年分くらいの贅沢をした気分。盆と正月が一緒に来たような、って表現を遙かに超える一日。ひとつひとつがメインになりうるもの。それだけでご飯3杯食べられます、って感じなのに。怒濤の勢いで濃密で濃厚なものが連続すると現実から遊離しているような錯覚に陥りそう。

でも、常日頃当たり前のものに焦点を当てれば同じような感動、気づきがあるんでしょうね。



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