能力か、知略か。
マウ、リーチの外国人選手だけでなく、日本代表の木津選手を擁する東海大の突破力は大学随一。
一方、林監督率いる慶応は、相手の力を封じ込め、勝ち抜いていく戦略が選手に染み込んでいる。
慶応にとって重要なのは、前への推進力がある東海の選手をゴール前に近づけないか。
いかに敵陣で戦うかが、この試合の焦点だった。
前半、慶応は自陣での戦いを強いられた。
東海は慶応のキックに圧力をかけ続けた。
能力に秀でるあまりに、献身に徹しきれないチームは多い。だが、東海は違った。
キックを蹴ろうとする慶応の選手に襲い掛かったのは、ニュージーランド人のマウ選手。
身長180センチの体が一本の棒のようになり、蹴り足に飛び込んだ。伸びきった両腕の先にボールは引っかかった。
外国人選手に要求されるのは、愚直さより、突破力。このプレーに東海の強さがにじみ出ていた。
昨年、同じ準決勝の舞台で早稲田を相手に力を出し切れなかった東海。
深い攻撃ラインを敷き、前に出る早稲田の防御に飲み込まれた。
今年は違った。一つか二つ。少ないパス数で、突破力ある選手を敵に当てた。
ボールを後ろに下げずに、前で接点をつくった。
そこからマウ、リーチ、木津選手が力強く足をかく。
先制したのは東海。こだわった接点からだった。
ラックでボールに絡み、ノットリリース(倒れた選手がボールを離さない)の反則を奪った。
キックで敵陣深くに入り込み、ラインアウトモールから木津選手が抜け出し、最後はロックの三上選手がトライ。前半29分、7対0。力でねじ伏せた。
さらに前半33分、慶応のキックを受けたウイングの田村選手がカウンターを仕掛ける。ゲインしてからのラックで、狭いサイドにフルバックの豊島選手が走りこんでトライ。ゲイン後に空きやすいスペースを確実に突いた。
12対0。前半が終了。
接点で圧力を受け、順目に展開できずに東海の選手を振り回せなかった慶応。
前半はあえて風下を選び、勝負をかけた後半。カウンターを仕掛け、ボールを動かし始めた。
一方の東海は、前半と同様に敵陣で戦いたかった。、だが、ラインアウトを獲得できず、キックミスも続いたために地域を自ら失った。
後半18分まで得点は動かず。ここが勝負の分かれ目だった。
勢いづく慶応はテンポ良く展開したが、流れを寸断したのは東海の木津選手がジャッカルだった。
ここからウイングの宮田選手がゲイン。裏に蹴り上げ、自らキャッチしてトライ。19対0。
慶応はエイトの小澤選手の突破で何とか追い上げた。
後半23分、ボールを動かし、小澤選手のゲインから展開の速度が上がり、最後はロックの立石選手がトライ。
さらに後半31分、スクラム押し込んでから、小澤選手が個人技でトライまで持っていった。19対14。
ラインアウトもスクラムも優位に戦った。だが、やはり、届かなかった。
昨年、国立の舞台で浮き足だったかのように何もできなかった東海。
あれから1年。よりシンプルに、力強く決勝進出をもぎ取った。
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