二宮正治小説:魔性のもの:広島の物語:新連載:第3回 | 二宮正治文芸コーナー

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 健太は夜の帳があたりを囲んだ時間に比治山へと向かって行った。
由紀子は必死で後をつけた。
健太は人が立ち入らない木々がうっそうと茂った場所へ向かって行く。
「健ちゃん、どうしたの」
 由紀子はびっくりしてこう呟いた。
やがて、
「健ちゃん、来てくれたんじゃねうちとの約束を守ってくれた。うれしいよう」
 この声が聞こえてきた。
由紀子は声の主をじっと見る。
ボロボロの上着にもんぺを履いている。
「何この子」
 由紀子はびっくり仰天した。