3.審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止


・ 審決の予告とは、特許無効審判の手続において審理の終結を通知する前に、審判合議体が特許の有効性の判断を当事者に開示することをいう。


・ 平成5年の改正特許法の下においては、審決取消訴訟を提起した後、訂正審判を請求することができた。この場合、特許請求の範囲を減縮する訂正認容審決が確定すると、無効審決が自動的に取り消される裁判実務が定着していた。

・ しかし、再度の審決に対してはさらに審決取消訴訟の提起が可能とされていたため(キャッチボール現象)、審理遅延や審理の無駄といった弊害が指摘されていた。

・ そこで、平成15年の一部改正により、訂正審判の請求は審決取消訴訟提起後の90日の期間内に限るとともに、特許権者が訂正の意思を有し、特許無効審判においてさらに審理させることが相当であると認めるときには、裁判所は実体判断をせずに、柔軟かつ迅速に事件を差し戻すことができることとした。


・ しかしながら、著しい審理遅延や審理の無駄は生じなくなったが、キャッチボール現象は依然として発生し続けており、手続として非効率であるとともに、当事者(特に、審判請求人)に訴訟に関して手続上及び金銭上の無駄な負担を強いているという指摘がある。

・ また、審決取消訴訟の提起ごとに、その都度訂正審判の請求が可能であるから、争いがなかなか決着しないという問題もあり、キャッチボール現象の完全なる解消が望まれている。

・ 一方で、審判合議体が審決において示した特許の有効性の判断を踏まえた上で特許権者が訂正できるという利点は、確保するべきである。


・ そこで、審理の促進および特許権者の利点確保の観点から、特許無効審判の手続において、審決の予告をし、特許権者がこれを踏まえて訂正請求できるようにした上で(164の2)、審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求は禁止することとした。