婚姻制度の問題点を顧みず拙速に同性婚法制化したとき大きな問題になることのひとつはおそらく「貞操権の濫用」だと思う。
これまでは
・人は異性愛者なのが当たり前
・性的な関係は男と女の間にのみ起こるもの
・男と女が2人きりでお泊まりとかしちゃったら性的な関係が生じて当然（ていうかそれで男がヤラないわけがない）
という大前提（偏見とも言う）が一応共有されていた。
だからこそ，具体的な性行為の証拠（ハメ撮り画像とか）がなくても男女2人で温泉旅行とかしちゃってたら不貞があったものとして責任を問うこともできたし，一方で男同士女同士で温泉旅行しても不貞とみなされることは基本なかった。
しかし同性婚が法制化されれば，男性間・女性間の性的関係が男女間と等価なものとして公認されることになる。
男性間・女性間でも性的関係は生じ得るし，一方男女間でも必ず性的関係が生じるとは限らない，ということが，「暗黙」ではなく「公然」の話になる。
そうなれば，不貞においても「男女間」だけ特別扱いするのおかしいだろ，という話に当然なる。ならなかったら差別だ。2人で温泉旅行しただけで不貞と見做すというなら，あるいは見做さないというなら，それは男女間も男性間も女性間も等しくそうしなければ不公平だ。
そして，個々人のセクシュアリティというのは客観的に判断・測定できないものだ。異性愛者か同性愛者かそれ以外かなんて，本人以外に分かるわけがない（下手したら本人にすら分からない）。すべての人にあらゆるセクシュアリティの可能性がある。
そう考えると，これは単純に同性カップルの不貞行為についてどう判断するか，という問題じゃない。
たとえば異性と婚姻した者であっても，「同性と不貞行為に及んだ！」と訴えられる可能性がある，とうことだ。
そうなると怖いのが先述した「貞操権の濫用」だ。「2人で温泉旅行したら不貞」レベルの不貞ジャッジを同性間にも適用してしまうのなら，品行方正に暮らしていても不貞の疑いをかけられる危険性は極めて高くなる。人を陥れるために同性間の友人関係を「不貞行為！」と主張して訴えるということは十分にあり得る。
しかもとんでもないことに，現代日本では不貞行為に及んだ既婚者のみならずその相手方の者まで法的責任を問われてしまう。婚姻していようがしていまいが関係なく，言いがかりでいつ訴えられるのかわからない状態になるわけだ。
「言いがかりで訴えられたって勝てば問題ない！」なんて話じゃない。訴えられて裁判で争わなければならなくなった時点で大変なストレス。「嫌がらせ訴訟」というやつだ。
そしてきっと，こういう話で一番割りを食うのが私みたいな独り者バイだ。婚姻制度の恩恵にあずかることもなく，訴訟リスクを抱え込むだけ。訴えられれば過去の性行動も調べ上げられアウティングされるだろう。
そういうリスクを回避するため，ハメ撮り画像など「不貞の動かぬ証拠」がない限り不貞とは見做さない，ということにする手もあるが，そうすると今度は人を不貞行為で訴えるということがおそらく極めて困難になる。
そうやっていろいろと考えていくと，「そもそも不貞行為で法的責任を問うことは妥当なのか」「不貞行為に及んだ既婚者のみならずその相手方にまで法的責任を問うことは妥当なのか」という根本的な問題にぶちあたる。同性婚法制化したいなら，本当は真っ先に考えなきゃならないことだと思う。
こういうリスクがあるから同性婚法制化やめろ，なんていう話じゃない。ただ，法制化するならするで，生じ得るリスクをできるだけ回避するために，被害者を生まないために，事前にしっかり考えて欲しいということだ。
もっとも，不貞みたいなデリケートな話を持ち出したら議論がとてもややこしくなるし，同性婚法制化推進派としては回避したいのが本音かもしれない。そんな話は脇に置いといてとりあえず同性婚法制化して，「不貞で訴えられたら弁護士にご相談を！訴訟一緒にガンバりましょうね！」といったところか。
しかし貞操権はある意味婚姻を婚姻たらしめている根本なわけで，本来無視できるわけがない。無視するくらいなら「婚姻」はセレクトしない方が良いんじゃないか。オルタナティヴなパートナーシップ制度などを検討した方が良いのではないかと思う。
同性婚法制化後の不貞問題，法制化した諸外国ではどうなってるんでしょうね。ていうかそもそも不貞に対する考え方自体もともと国によって相当違うんだろうけど。詳しい方いたらぜひ教えてください。
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レズビアンふうふの「不貞」とは
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※この記事はTwitterに投稿した文章（↓の一連のツイート）をまとめ直したものです。