参考(にした)文献。

発達心理学の基礎Ⅰ(ミネルヴァ書房、p54-57)

やさしい教育心理学(有斐閣アルマ、p174-176、190-193)

教育心理学(学芸図書、p81-82)


0. Introduction

前回、発達とは何かについて書いた。

発達とは、生涯を通して環境との相互作用の中で起こる個人の変化全般を指すのであった。

その発達の過程は、成熟と学習と言う2つの側面によって説明される。発達の規定因(特に1と2)で概説した、遺伝vs環境の図式に当てはめるコトが出来て、成熟は遺伝、学習は環境に対応する。

成熟、学習、レディネス、最適期ついて概説する。


1. 成熟と学習

1.1 成熟

外界の刺激とはあまり関係が無く、内的に、主に遺伝などの要因に依って、自生的に生じる変化を成熟と言う。

例えば、特に歩行の訓練を施さなくても、子供はある年齢に達すると勝手に歩行をするようになる。これは、歩行をさせようと言う外部的な力が無いにもかかわらず生じる発達である。

こう言った発達を成熟と呼び、発達は主に成熟に依るのだと言う考え方を成熟優位説(遺伝優位説)と言う。


1.2 学習

成熟に対し、環境との相互作用の中で経験によって生じる持続的な変化を学習と言う。

成熟に依る発達は生得的、学習に依る発達は後天的と言えよう。

学習と言うと一般的には良いモノと見なされがちであるが、心理学ではそうとは限らない。酒を飲んで気分が良くなったと感じた未成年者が飲酒を覚えると言ったようなコトも、心理学では学習に含まれる。

また、一夜漬けで試験に臨んでその結果良い点が取れたとしても、試験が終わった直後にそこで覚えたものを忘れてしまうならば、これを学習の成果と呼ぶコトはできない。

成熟優位説(遺伝優位説)に対し、発達は主に学習に依るのだと言う考え方を、経験説(環境説)、学習優位説と呼ぶ。


2. レディネス

レディネスとは、簡単に言うと、発達をするための準備条件のコトである。身体や神経系の成熟、あるいは既得知識や興味、関心、態度なども含んでレディネスと言う。

例えば、歩行が出来るようになるためには、最低でも立っているコトが必要条件である。このような条件もレディネスに含まれる。

レディネスには、レディネス待ちとレディネス促進と言う二つの捉え方がある。

前者は、成熟優位説的な考え方であり、子供がレディネスを身につけるのを待ってから、訓練や教育を始めると言うものである。レディネスを身につけるまでに行われた訓練や教育は、効果が薄いか、寧ろ発達に害を及ぼす可能性さえあると言う考え方である。

一方、後者のレディネス促進と言う考え方は、適切な環境からの刺激を与えるコトでレディネスの形成を促進できると言う考え方である。実際、教材の工夫や学習への動機づけを高めるコトでレディネス促進がされるコトが明らかにされたと言う研究結果もあるようだ。


3. 臨界期と最適期

3.1 臨界期

オーストリアの動物行動学者ローレンツの研究に依れば、一部の鳥類は、生後十数時間以内に見た動いているものを親と認識し、追従する行動が現れる。しかもその認識は、一生涯残るのである。(つまり、学習の定義にあった持続性を満たしている。)

この追従反応は、生後30時間を超えると、ほとんど生起しなくなる。

こう言った、一部の鳥類における追従反応などの、限られた時間内に習得し、再学習するコトが不可能な学習現象を、ローレンツはインプリンティング(刷り込み)と呼んだ。

また、このインプリンティングが行われるための時期を臨界期と言う。上の例に関して言えば、生後20時間以内が臨界期である。


3.2 最適期(敏感期)

上の臨界期のような時期が、人間にもあるだろうか。

実際、人の身体機能の発達や言語の獲得などに関しても臨界期のようなものはある。が、臨界期と言うほど極端ではない。(その時期を超えてからも、ある程度の時期であれば学習、習得するコトが出来る。)

そこで、これを最適期(敏感期)と呼んだ。

例えば、言語の獲得であれば、最適期は幼少期頃とされており、臨界期は思春期頃とされている。

レディネスと、最適期の考え方はある意味で反するところがあるが、最適期の状態にあるコトもレディネスの一要件として見れば特に問題は生じないのではないかと私は思う。



このあと早期教育についても少し書こうかと思っていたのだが、疲れたのでパス。

実際、そこまで書くようなコトも無いし、心理学の範囲では無い気がしてきたので。

心理学と言うよりは、教育社会学とかの範囲かな?

まぁ、どうでもいいか……。