書くこと、学ぶこと~ESや職務経歴書を書くのって苦しい? | 『稼げる資格』編集長の<資格とキャリアについての覚書き>

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資格やキャリアに関する本を作っています。日々、誤解があるなあ、とか、もったいないなあ、と残念に思うことがあります。
ただ自分の中にしまっているのももったいないので、覚書としてここに書いておくことにしました。

新卒の就活でのエントリーシートや転職時に記述する職務経歴書。
上手くいかなかった場合に
自らの人格を否定されてしまうと感じてしまう厳しさがある一方で、
こうした自らのキャリアを書くという経験には
非常に大きな価値があります。

「書く」こと。
小学校での作文の時間が思い起こされるかもしれません。
「自由に書いてもいいんだよ」と言われても、
何も書くことがない、と悩んでしまった経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
結局、その、
「書くことがなく苦しんでいる今」について書く羽目になってしまったり。

「先生たちは楽だよな、俺たちに書けって言ってればいいんだから」

いえいえ。
実は、先生たちもこの問題に苦しんできたらしいのです。

教員も、資格のひとつ。
通信制の大学に通って学校で教えてらっしゃる方々の事例もこれまで、
何度となく取り上げてきました。

学校ができて作文教育が始まって以来、
それまでの「模範文を書き写して使えるようになる」のではなく、
自分で考えて書けるようにするためにどんな教育をしていけばいいか。
明治の末ごろから、
多くの先生たちがこの課題に取り組み、現場で奮闘してきたのです。

その努力の流れは、今の「総合的な学習の時間」や「キャリア教育」へと連綿と続いている。

それは、「書く材料は自分の中にある」という先入観との闘いでした。
ネタは、経験を通じて、自分にインプットしているもの。
そのバリエーションが多ければ、
取捨選択をして他人に通じるストーリーを組み上げることがやりやすくなる。
自然な論理だから先生や友達にも通じやすいし、
「受け」たりすれば、自信も生まれる。また書きたくなる。
そしてその書くことを通じて、より強い自分が形成されていきます。
(だからそういう人は、ESも職務経歴書も、書くのに苦労しません)

そこで、先生たちが取り組んだのは、
・生徒たちの行動量を増やすこと
・よく観察してネタを自分の中にインプットするように促すこと
・それをヒトに伝えたくなるよう、教室を楽しげな場にすること

作文教育(戦後すぐまでは、「綴り方教育」といいました)で
伝説的な実績を残した東井義雄という先生は、
それを「土づくり」と言っています。
いきなりいい文章を書かせようとするのではなく、まず環境づくりだと。

さて。
学校から出てしまった私たちが、
一人ひとりで自分を育てるためにはどうすればいいでしょう。

まずは、「先生」役をしてくれる人を探す。
メンターと言われますが、社内の別部署や社外にそういう人を見つける。

そして、できるだけ自分がスムーズに発表したくなるような、
楽しげな場に身をおくこと。

専門にしたい分野や、興味のあることについて、
学校に実際に入ってしまう手だってあります。

というか、社会人になってから一度「学校」を体験するといろいろ学び続けてしまうのは、
その愉しさがクセになってしまうせいなのかもしれません。

参考文献;
東井義雄『村を育てる学力』(明治図書)

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