【台湾海峡と南シナ海における軍事的緊張について】
台湾海峡と南シナ海において、緊張が高まっています。
7月2日、台湾軍の巡航ミサイルが、操作ミスにより誤って発射され、中国本土方向へ飛来、台湾漁船を直撃するという事件がありました。もし、中国漁船を直撃していたら、あるいは、中国本土に着弾していたら、中国側から台湾に対し、報復攻撃があったかも知れません。[1]
台湾は、すでに国産の短距離弾道ミサイルと巡航ミサイルを配備しています。5月に就任した、独立派の蔡英文台湾大統領が、ひとつの中国の原則を認めていないため、現在、中国と台湾当局との間の対話が停止していますが、そのような状況の下で起こった今回の巡航ミサイル誤射事件は、台中関係が、非常に危うい状態にあることを再認識させるものでした。
なお、これは個人的な意見ですが、今回の巡航ミサイルは、誤射にもかかわらず自爆装置が働かず、台湾島から約50キロ西方、台湾領土の澎湖諸島沖合にいた台湾漁船を正確に直撃しており、もしかしたら、誤射に見せかけた台湾の中国に対する威嚇だったのかも知れません。
日本政府は、台中関係が平和的に推移するよう、台湾と中国の平和的・民主的な統一へ向けてのロードマップの作成・提案を含む、最大限の外交努力を行うべきであると思います。それが、アジアと日本の平和につながるからです。
一方、南シナ海の領有権をめぐっては、中国とベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイが対立しています。フィリピン政府は、問題をオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所へ提訴、その判決が今月12日に下される予定になっています。
中国政府は、すでに、フィリピンの提訴を無効とし、その判決を受け入れないことを表明していますが、さらに、判決に先立つ今月5日から11日の期間、南シナ海において、軍事演習を行うと発表しました。
アメリカ政府は、かねてより、南シナ海の航行の自由を守るという立場から、中国が南シナ海に建設した人工島付近において、アメリカ軍の艦艇を航行させていますが、先月、フランス政府も、EU諸国に対し、南シナ海の航行の自由を守るため、合同で軍艦を派遣し、南シナ海で定期的にパトロールの任務につかせるべきだと提案しました。イギリスおよびオランダは、すでに南シナ海に単発的に軍艦を派遣したことがあります。[2]
フランスは、2013年にベトナムとの間で戦略的パートナーシップ協定を結んでおり、南シナ海の領有権問題について、フランスがベトナムを支援することを約束しています。フランスは、かつて仏領インドシナと呼ばれる、ベトナムからラオス、カンボジアに至る地域を植民地として支配していました。フランスがEU諸国に対し、軍艦を合同で派遣することを提案した背景には、南シナ海に埋蔵すると推測される石油・天然ガス権益を獲得したいフランスの国際石油資本TOTALの思惑があるのかも知れません。
ちなみに、イギリスは、かつてマレーシアを植民地として支配し、オランダは、インドネシアを植民地として支配していました。イギリスとオランダが軍艦を派遣している背景には、南シナ海に埋蔵すると推測される石油・天然ガス権益を獲得したいイギリスとオランダの国際石油資本、ROYAL-DUTCH SHELLの思惑があるのかも知れません。
また、先月、アメリカは、これまで日付変更線以東を担当していた第3艦隊の活動地域を東アジアにまで拡大し、横須賀を母港とする第7艦隊と合同して任務に当たらせることとしました。第7艦隊に所属する空母は1隻ですが、第3艦隊には4隻の空母が所属しています。アジア地域を担当する水上艦艇と潜水艦の数が大幅に増えることになります。[3]
仮に、今後、フランス、イギリス、オランダが軍艦を派遣し、アメリカとともに、南シナ海のパトロールを開始すると、中国軍との緊張が一気に高まると予想されます。
中国は、今月予定されている軍事演習において、場合によっては、中国本土から南シナ海へ弾道ミサイルあるいは巡航ミサイルを発射するかも知れません。南シナ海が中国の弾道ミサイルと巡航ミサイルの射程範囲内にあることを示すためです。さらに、中国は、すでに東シナ海に設定した防空識別圏を、南シナ海へ拡大するかも知れません。今後、南シナ海における軍事的緊張が高まることが予想されます。
今月、日本は、国連安全保障理事会の議長国を務めます。このような状況の下、安倍政権は、日本も自衛艦を南シナ海へ派遣し、パトロールの任務にあてると決定するかも知れません。
しかしながら、南シナ海の領有権問題は、軍事力では解決出来ません。外交を通じた話し合いによってのみ、解決出来るものです。
日本は、速やかに尖閣諸島の領有権問題を棚上げし、中国との正常な外交関係を回復するとともに、南シナ海の領有権問題の外交的解決のため、最大限の外交努力を行うべきであると思います。それが、アジアと日本の平和につながるからです。
ちなみに、南シナ海の領有権問題を常設仲裁裁判所に提訴したフィリピンでは、大統領が、対中国強硬派のアキノ氏から対中国宥和派のドゥテルテ氏に交替しました。ドゥテルテ新大統領は、中国政府から、南シナ海問題を棚上げにすることと引き換えにマニラ首都圏と国際空港とを結ぶ鉄道建設の支援を打診されており、基本的に受け入れる方針であることを明らかにしています。[4]
日本政府に、台中関係の平和的推移、並びに、南シナ海の領有権問題の外交的解決のため、最大限の外交努力を行うよう求めるためにも、来たる参議院選挙において、野党の議席数を増加させるべきであると思います。
参照資料:
(1) "Taiwanese warship accidentally fires missile towards China", The Guardian, July 1st 2016
(2) "France to Push for Coordinated EU Patrols in South China Sea", Bloomberg, June 5th 2016
(3) "U.S. Third Fleet expands East Asia role as tensions rise with China", June 15th 2016
(4) "Duterte willing to back down on sea dispute with China", April 11th 2016
台湾海峡と南シナ海において、緊張が高まっています。
7月2日、台湾軍の巡航ミサイルが、操作ミスにより誤って発射され、中国本土方向へ飛来、台湾漁船を直撃するという事件がありました。もし、中国漁船を直撃していたら、あるいは、中国本土に着弾していたら、中国側から台湾に対し、報復攻撃があったかも知れません。[1]
台湾は、すでに国産の短距離弾道ミサイルと巡航ミサイルを配備しています。5月に就任した、独立派の蔡英文台湾大統領が、ひとつの中国の原則を認めていないため、現在、中国と台湾当局との間の対話が停止していますが、そのような状況の下で起こった今回の巡航ミサイル誤射事件は、台中関係が、非常に危うい状態にあることを再認識させるものでした。
なお、これは個人的な意見ですが、今回の巡航ミサイルは、誤射にもかかわらず自爆装置が働かず、台湾島から約50キロ西方、台湾領土の澎湖諸島沖合にいた台湾漁船を正確に直撃しており、もしかしたら、誤射に見せかけた台湾の中国に対する威嚇だったのかも知れません。
日本政府は、台中関係が平和的に推移するよう、台湾と中国の平和的・民主的な統一へ向けてのロードマップの作成・提案を含む、最大限の外交努力を行うべきであると思います。それが、アジアと日本の平和につながるからです。
一方、南シナ海の領有権をめぐっては、中国とベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイが対立しています。フィリピン政府は、問題をオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所へ提訴、その判決が今月12日に下される予定になっています。
中国政府は、すでに、フィリピンの提訴を無効とし、その判決を受け入れないことを表明していますが、さらに、判決に先立つ今月5日から11日の期間、南シナ海において、軍事演習を行うと発表しました。
アメリカ政府は、かねてより、南シナ海の航行の自由を守るという立場から、中国が南シナ海に建設した人工島付近において、アメリカ軍の艦艇を航行させていますが、先月、フランス政府も、EU諸国に対し、南シナ海の航行の自由を守るため、合同で軍艦を派遣し、南シナ海で定期的にパトロールの任務につかせるべきだと提案しました。イギリスおよびオランダは、すでに南シナ海に単発的に軍艦を派遣したことがあります。[2]
フランスは、2013年にベトナムとの間で戦略的パートナーシップ協定を結んでおり、南シナ海の領有権問題について、フランスがベトナムを支援することを約束しています。フランスは、かつて仏領インドシナと呼ばれる、ベトナムからラオス、カンボジアに至る地域を植民地として支配していました。フランスがEU諸国に対し、軍艦を合同で派遣することを提案した背景には、南シナ海に埋蔵すると推測される石油・天然ガス権益を獲得したいフランスの国際石油資本TOTALの思惑があるのかも知れません。
ちなみに、イギリスは、かつてマレーシアを植民地として支配し、オランダは、インドネシアを植民地として支配していました。イギリスとオランダが軍艦を派遣している背景には、南シナ海に埋蔵すると推測される石油・天然ガス権益を獲得したいイギリスとオランダの国際石油資本、ROYAL-DUTCH SHELLの思惑があるのかも知れません。
また、先月、アメリカは、これまで日付変更線以東を担当していた第3艦隊の活動地域を東アジアにまで拡大し、横須賀を母港とする第7艦隊と合同して任務に当たらせることとしました。第7艦隊に所属する空母は1隻ですが、第3艦隊には4隻の空母が所属しています。アジア地域を担当する水上艦艇と潜水艦の数が大幅に増えることになります。[3]
仮に、今後、フランス、イギリス、オランダが軍艦を派遣し、アメリカとともに、南シナ海のパトロールを開始すると、中国軍との緊張が一気に高まると予想されます。
中国は、今月予定されている軍事演習において、場合によっては、中国本土から南シナ海へ弾道ミサイルあるいは巡航ミサイルを発射するかも知れません。南シナ海が中国の弾道ミサイルと巡航ミサイルの射程範囲内にあることを示すためです。さらに、中国は、すでに東シナ海に設定した防空識別圏を、南シナ海へ拡大するかも知れません。今後、南シナ海における軍事的緊張が高まることが予想されます。
今月、日本は、国連安全保障理事会の議長国を務めます。このような状況の下、安倍政権は、日本も自衛艦を南シナ海へ派遣し、パトロールの任務にあてると決定するかも知れません。
しかしながら、南シナ海の領有権問題は、軍事力では解決出来ません。外交を通じた話し合いによってのみ、解決出来るものです。
日本は、速やかに尖閣諸島の領有権問題を棚上げし、中国との正常な外交関係を回復するとともに、南シナ海の領有権問題の外交的解決のため、最大限の外交努力を行うべきであると思います。それが、アジアと日本の平和につながるからです。
ちなみに、南シナ海の領有権問題を常設仲裁裁判所に提訴したフィリピンでは、大統領が、対中国強硬派のアキノ氏から対中国宥和派のドゥテルテ氏に交替しました。ドゥテルテ新大統領は、中国政府から、南シナ海問題を棚上げにすることと引き換えにマニラ首都圏と国際空港とを結ぶ鉄道建設の支援を打診されており、基本的に受け入れる方針であることを明らかにしています。[4]
日本政府に、台中関係の平和的推移、並びに、南シナ海の領有権問題の外交的解決のため、最大限の外交努力を行うよう求めるためにも、来たる参議院選挙において、野党の議席数を増加させるべきであると思います。
参照資料:
(1) "Taiwanese warship accidentally fires missile towards China", The Guardian, July 1st 2016
(2) "France to Push for Coordinated EU Patrols in South China Sea", Bloomberg, June 5th 2016
(3) "U.S. Third Fleet expands East Asia role as tensions rise with China", June 15th 2016
(4) "Duterte willing to back down on sea dispute with China", April 11th 2016