腸内フローラの大切なことを、コアラが教えてくれる!?
神戸大学教授大沢朗氏は、
「病気で保護したコアラの治療に抗生物質を使うと、
病気そのものは治るのに次第にコアラがエサを食べなくなり衰弱死するという事例が頻発する」
という難題にぶつかりました。
これを講演で話すと、腸内細菌研究の世界的権威 東大名誉教授の光岡知足博士が、
「コアラの腸内細菌を調べてみたらどうだい?」
と、アドバイスしました。
コアラが主食とするユーカリの葉は、消化を妨げるタンニンを多く含むため、他の動物はほとんど食べられません。
なぜコアラだけがユーカリをたべられるのか、その理由は詳しくわかっていませんでした。
光岡博士の指摘は、そのことでした。
「コアラの腸内には、タンニンを分解する菌がいるのではないか。
抗生物質を使うとその菌が死んでしまい、 ユーカリを消化できなくなったコアラも死んでしまうのだろう」
この言葉を聞いた瞬間、大沢氏は「そうに違いない」と確信しました。
大沢氏は、コアラの腸内細菌を培養し、タンニンを含んだ寒天でその菌を育てました。
さまざまな菌の培養を続けた大沢氏は、タンニンを分解する菌を見つけました。
これを、「ロンピネラ・コアララム」と名付けました。
「ユーカリを食べられる」ことは、
〝コアラの特技”だと思っていたら、
じつは〝腸内細菌の特技”だったのです。
コアラの「盲腸」の長さは、およそ2メートル。
その内側には、びっしり緻密な「ひだ」のような構造があります。
これが、コアラがロンピネラ菌のために用意した住処なのです。
コアラはロンピネラ菌に盲腸という「住処」とユーカリという「エサ」を提供し、
ロンピネラ菌は「ユーカリを食べられる」という特技を提供して、
お互い助け合って生きています。
こうした関係は「共生」という言葉で表されます。
すべての生き物が、腸内細菌と共に生き、共に進化してきた
ロンピネラ菌の発見によって、コアラの生態のもう一つの面白い謎も解けました。
コアラの赤ちゃんは、お母さんの大便を離乳食として食べるのです。
いったいなぜそんなことをするのか?
そう、ロンピネラ菌を受け継ぐためです。
その証拠に、離乳食となる便は、ただの便ではありません。
普通の弁はコロコロとして、わりあい乾燥しているのですが、離乳食となる便は、緑色がかってドロドロしています。
その時期の母コアラだけだ出す、「パップ」と呼ばれる特別な便で、中には腸内細菌が豊富に含まれています。
赤ちゃんはこれを食べて盲腸の中にロンピネラ菌を棲みつかせることで、
ユーカリの葉を食べられるようになるのです。
こうして代々、ロンピネラ菌はコアラのお腹の中に受け継がれ、
ふたつの種は共に生き、共に進化を遂げてきました。
こうした営みには「共進化」という言葉が使われます。
何千万年という長い時間をかけて、
互いに助け合う仕組みが自然にできあがってきたのです。
大沢氏によると、コアラの赤ちゃんは離乳食の時期になると、
パップが出やすいように、お母さんのお腹を揉むのだそうです。
そして、出てきたパップをおいしそうに食べるといいます。
誰が教えたわけでもないのに、コアラの本能がそうさせているのです。
なんという精巧な仕組みでしょうか!
最近、腸管免疫を高めるものとして「乳酸菌発酵エキス」と呼ばれるものが脚光をあびております。
この乳酸菌発酵エキスは、本来腸内で善玉菌により生産されているものですが、これを体外で生産することもできのです。
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