第284回 「イノベーション・プレイス」
12月27日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。
「イノベーション・プレイス」
新型コロナパンデミックに直面し、多くの企業は受け身の経営を強いられた。
当社も「イントレプレナー塾」の運営方法や、キャリア相談の面談方法の見直しを余儀なくされ、オンラインへと切り替えた。
社員の働き方もテレワークへと移行した。
リモートで仕事をするようになり、通勤時間も通勤のストレスも無くなり、ワークスタイルが激変した。
オンラインでの会議や面談はどこにいても対応でき、移動時間もかからない。
情報共有が容易になり、様々なメリットが生まれた。
一方、雑談など他社とのコミュニケーションが起きにくいといった課題も浮き彫りになった。
人はリアルなコミュニケーションでないとウエット感が出ず、脳が回らないのかもしれない。
同じ空間で時間を共有し、熱量の高い話し合いから気づきを発見することが多いのではないだろうか。
イノベーションの「元祖」シュンペーターは「イノベーションとは会社に価値をもたらす革新であり、
異分野の人と人との新結合が起点だ」と言っている。
当社のインキュベーションオフィスを「イノベーションが起こる場」とするため、
緊急事態宣言中に全面リニューアルし、新たに「出島インキュベーション・プレイス」としてオープンした。
コンセプトは「異業種の人たちが集い、価値が生まれる共創の場」とした。
企業間の枠を超えて開放的なオフィス空間を共有し、偶発的なコミュニケーションや雑談など、オンライン上では生まれにくい交流を創るため、円形テーブル、ソファシート、カウンター席、スタンディングデスクなどの多様な席を設置した。
また、企画に集中できる一人用の個室やミーティングルームも導入し、事業案を創出するための環境を整えた。
イノベーションは異分野の人と人が共鳴することかた生まれる。
それには互いの会社から離れたところで、率直な対話ができる「場」が必要だ。
区切りのない曖昧な空間で、たわいもない会話から新鮮な生きた情報が飛び交うことが多い。
新規事業を立ち上げるテクニックはスクールで学べるが、肝心なのは熱量を持った様々な人との語らいだ。
それが事業発案の源泉となる。
フェイス・トゥ・フェイスで心を開放して話し合い、互いの理解が深まり共感が生まれる。
共感する人の輪が広がってくると、目的を実現するにはどの企業の誰がキーマンとなるのかが見えてくる。
企業の枠を超えたダイバーシティが、新たな価値を生むことにつながる。
出島インキュベーション・プレイスが、イノベーションが起こるプラットフォームになることを期待している。