【アメンバ限定】カメは月のウサギに会いにいけるのか!?(解答編) | 数学美術館 

【アメンバ限定】カメは月のウサギに会いにいけるのか!?(解答編)

こんにちは。

数学学芸員のようじ こと 八田陽児です。



さて、カメが38万kmの距離を1日目に1m、2日目に1/2m、3日目に1/3m…N日目に1/Nm進んでいきます。

果たしてカメは月に到着できるのでしょうか???


これは


1+1/2+1/3+1/4+…1/N+・・・


と無限に続く和です。


ちなみに

1, 1/2, 1/3, 1/4, 1/5…

という数列を調和数列と言います。



ではカメが歩く距離がどうなるか、計算してみましょう。



数学美術館 -調和級数の和1

この計算は、小学校で習った分数計算のように「通分して、足して…」とできません。


ですので、以下のようにちょっと変えてみます。



数学美術館 -調和級数の和2

何をしたかというと、


1/3を1/4に

1/5, 1/6, 1/7を1/8に

1/9, 1/10, …1/15を1/16に

(以下略)


置き換えた数列の和を考えます。


それぞれ、もとの数よりちょっと小さいかつ2の何乗かになっている数に置き換えました。


これがミソなのです!!!!


1/3はちょっと小さい1/4に。1/5, 1/6, 1/7はそれぞれ1/8に置き換えました。



ちょっと小さい数に置き換えているのですから、全体的に元の式よりも小さくなりますね。



次に全体的に小さくなった数列の和を考えて見ましょう。



数学美術館 -調和級数の和3

2の何乗かになっている1/4や1/8, 1/16に置き換えたのには意味があります。

上のように、まとまりで考えるとすべて1/2に置き換えられます。


ですので、結果として級数の和は

1+1/2+1/2+1/2+…

と1/2をたくさん足す計算式になります。


さて、1/2をたくさん(無限回)足すとどうなるのか?


もちろん無限大(∞)になりますね!




さて、ここで最初の式に戻りましょう。


結果として、もともとの式(1+1/2+1/3+…)は∞になってしまうのです!





カメはいつか月に到着できるということになります。



感覚的には∞にならないような気がするのですが、計算してみると∞になるのです。


この発散式は、現代のコンピューターで足し算を計算していっても、ず~~~~っと∞に発散する様子が見られないそうです。二次関数や指数関数ならあっという間に∞に発散する様子が分かりますが、この調和級数の和はコンピューターで計算しても発散する様子が分からないのですね。


それも不思議なものです。。。