サッカーのフランス語 1(続き) | フランス語発音上達ブログ!

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TOEIC980。早稲田英文→早稲田仏文修士→上智外国語学部修士→上智博士課程在学中の井上がフランス語の発音を上達させるための方法について話します。

さて、昨日の続きですが、今日はいよいよ試合の内容に入って生きたいと思います。レアル対バルサといえばいわゆる「クラシコ」こと伝統の一戦ですが、そのことをレキップとフィガロではこんな風に表現してました。



Le fameux Clasico 伝統の一戦

une victoire offrait bien plus que trois points. 

三点以上の価値がある勝利

le prestige de battre un rival de toujours

永遠のライバルを倒す特権





まず一番上の"Le fameux Clasico"ですが、こうやって名詞の前につくと日本語で言う”あの”って感じになります。これは日本語に訳しにくいですね。「伝統のクラシコ」みたいに適当にごまかすのが一番だと思います。次の"une victoire …"ですが、「三ポイント以上の価値がある勝利」というのはあくまで比喩なので、条件法が使われています。そして、最後の"le prestige de …"ですが、ここではun rival de toujoursというのが面白いなと思います。一目見れば「永遠のライバル」という意味だとすぐわかるのですが、実際に使いこなすのは結構難しい表現だと思います。



さて、試合のほうですが、まず15分にエトーが一点目を決めます。この一点目をフィガロではこんな風に表現してます。



Profitant d’un bon travail de Messi côté droit, Samuel Eto’o récupérait le ballon à la limite de la surface et ajustait Casillas d’un pointu remarquable

右サイドを突破したメッシからのパスをPKエリアぎりぎりで受けたエトーがトゥーキックでカシージャスの横をつく見事なゴール。




まず2行目に出てくるla surfaceですが、ここはPKエリアの事を指してるのだと思います。辞書にはこの意味は出てませんでしたが、やべっちFCの映像を見る限り間違いないと思います。次に面白いのは、ajustait Casillasという表現です。ajuster un cerfのように何かを狙うという意味でajusterが使われるのは知ってたのですが、ここみたいに「狙いすましてキーパーをはずす」という意味でも使われるとは知りませんでした。なお、最後のd'un pointu remarquableですが、これはトゥーキックのことだと思います。これも辞書には載ってません。



さて、次に噂のロナウジーニョのゴールですが、じつはそれほど描写をされてません。まあ、あんなのゴール文章にしろっても無理ですよね。フィガロのほうではこうなってます。



Se débarassant de Roberto Carlos, Helguera et Sergio Ramos, le Brésilien se présentait seul face à Casillas, pour l’ajuster dans la surface (0-2, 62e). ロベカル・エルゲラ・セルジオラモスの三人をぶち抜いた後に、エリア内でカシージャスと一対一になったロナウジーニョは落ち着いてゴールを決めた。

Héritant du ballon dans la surface, le peut-être futur Ballon d’Or ajustait Casillas malgré le retour de Sergio Ramos (0-3, 79e). 「エリア内でボールを受けたロナウジーニョは、セルジオラモスのマークにもかかわらずカシージャスを横を抜くシュートを決めた」




多少事実と違うんですけど、まあ現地で試合見た後に即効速報書くとこんなもんですかね。一方のレキップでは



L'ancien Parisien s'est baladé dans les trente derniers mètres des buts de Casillas et a inscrit deux buts d'anthologie (60e et 77e). ゴールまでの30メートルを自由に切り裂いた後、ロナウジーニョは伝説となるゴールを決めた。



となってます。ここで注目すべきは、主語にロナウジーニョではなく、le Brésilien・L'ancien Parisien・le peut-être futur Ballon d’Orというロナウジーニョを説明するような単語が使われていることです。英語やフランス語では、新情報は目的語の部位に入るのに対し、旧情報は主語の位置に入るというルールがあります。言い換えれば、同じ事柄を続けて扱うとき、黙っていてもその事柄が文章の主語となるということです。そのため、文脈から前の文章の主語がその後の文章でも続けて主語となることが明らかな場合、主語の位置にはその人物を補足的に説明するような語句が用いられます。このような説明形式に日本人は慣れてないので知らないと意味を見失いがちですが、慣れていれば「へー、そうなんだ」とか思いつつさらっと読めるようになります。もっと詳しく知りたい方は、村上英二著『英語の文章の仕組み』などを参考にしてください。



そして、ロナウジーニョのこのプレーを見たレアルサポの中には思わず拍手をしてしまった人もいたそうです。これは実にマラドーナ以来の出来事らしいですね。



En fin connaisseur, les Socios du Real ont salué le génie de l'artiste en l'applaudissant, ce qui est rare.

Des socios quittant le stade, et même applaudissant Ronaldinho à chaque fois qu’il touchait le ballon




なお最初の文章のenですが、これはよく資格を表すenといわれます。parler en ami(友達として話す)やagir en soldat(兵士として行動する)みたいな表現で使われますが、どうしてこんな使い方になるかはよくわかりません。



そして、この一方的な試合のことをこのように表現しています。

C’est le genre d’affiche qui cristallise toute l’attention de l’Europe du football. ヨーロッパ中の注目を結晶化したパフォーマンス。

les Catalans ont donné une véritable leçon de football à des Madrilènes. カタルーニャ人がマドリッドのやつらにサッカーがどんなものかを教えてやった




最初の文章では、cristalliser toute l'attentionというのが面白いですね。普通注意を引くという意味では、attentionはretenirやattirerといった表現をとるのですが、ここではcristalliserという変わった表現が使われてます。こういうのはそのまま直訳してみるのも面白いかもしれませんね。



こんな風に今回のクラシコは、ロナウジーニョのツバサ・オオゾラもびっくりの活躍で幕を閉じたわけですが、次回のクラシコはどうなるんでしょう。今度はバルサのホームなんで、ロナウジーニョのいっそうの活躍に期待したいですね。さて、以下は気になった表現を散発的に集めたものです。



siffler copieusement le Camerounais Eto'o エトーに対して徹底的なブーイングを行った

avant que l’arbitre ne siffle la fin du match レフェリーが試合終了の笛を吹く前に




ブーイングも審判のホイッスルもsifflerなんですね。後、二つ目の文章のneは虚字です。



offrir un coup franc dangereux qu’il expédiait dans le mur フリーキックの狙いはよかったものの、壁に阻まれた

le buteur camerounais envoyait une frappe qui filait hors du cadre エトーのシュートは枠の外に

Beckham dont la frappe était repoussée par Victor Valdes ベッカムのフリーキックはヴィクトール・バルデスに阻まれた




日本語だと簡単に言えるけど、フランス語だというのに苦労する表現集って感じです。



とまあ、以上で「サッカーのフランス語」の第一回目は終了です。今回はロナウジーニョのプレーにあまりにびっくりしたんでこれだけ詳しく説明しましたが、次回もこんな風になるかはわかりません。英語みたいに単なる表現集になる可能性もありますし。すべては試合の質しだいです。ではでは。