日経ビジネスオンライン連載:本場インドで日本のカレーは売れるか | インフォブリッジグループ社長 繁田奈歩のブログ

日経ビジネスオンライン連載:本場インドで日本のカレーは売れるか

ひょんなことから始めさせていただいた日経ビジネスオンラインでの連載とりあえず終わりました。実は私08年頃に某日本の食品会社へレトルトカレー、インドでも可能性あるからやりましょうよ、と提案に行ったことがあったのです。その当時、その会社からの結論は「いやいや、インドなんて今できませんよ」の一言でした。しかもその当時、インド国内で売られていたレトルトカレーはほんの数社で売れ筋は1社だけ。

最初にこの手の商材が出てきたのはたぶん2000年前半頃だったと思うのですが、利便性というコンセプトではなく、高級レストランの味を家庭でも、だったかな。その後あっという間に利便性コンセプトは浸透し、カレーに限らず加工食品の種類も量も一気に増えていったわけです。今ではレトルトカレー、インスタントパスタ、マカロニ、インスタントヌードル、スパイスミックス、スープ等などカテゴリは拡大、さらに拡張の様相を見せています。

まあそんなこんなでカレーに限らず色んな市場で、市場が急激に変わるのを忸怩たる思いで見てきたのですがあまりに日本の人たちがインド市場を色眼鏡で見ているかというところからスタートしようということでした。

今回は連載5回。

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Vol01.「中国に進出した日本企業2万社超に対し、インドへは1000社に満たず:難しい、合わないだけで諦める前に」
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インド進出ブームとか言われますが、まだまだインドへの進出企業は800社強。つい数日前に大使館がが2011年10月時点でインド進出日系企業812社、2008年対比で3倍になったと発表していましたが、結局まだ1000社を超えません。インドブームといいますが、中国やその他アセアン市場から比べれば全然ブームじゃないです。なぜそんなに少ないのか、ともよく聞かれるのですが、一番大きいのはインドに対して完全に腰が引けているというのが実は一番大きいのかも。だいたいすでにインド進出している企業ですら、誰かが出張に行くというだけで「え?インドですか...」と聞かれるのもまだまだ普通だったりします。インドに来ても必ずしもおなかは壊しません、インドでもカレー以外の食べものの選択肢もあります(あくまで都会だけですが)、インドでもお酒飲めます、物静かなインド人もいます、おしゃべりばかりじゃありません、デリーには冬もあります、年がら年中暑いわけじゃないです。誤解は尽きないです。

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Vol02. 「1200万店舗の中にどう流通網を作る:モノを置いてもらうのも大変、売ってもらうのは至難の業」
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よくインド展開の難しさの一つにウォルマートやテスコ、カルフール等のチェーン系リテールが整備されていないから、というのがあげられます。勿論、それも一理あります。しかしながら、この環境に苦労しているのは日本企業だけではありません。インドはある意味で公平な国で、日本の会社も韓国の会社も欧米の会社も、インドの会社も苦労するようにできているのです。そういった意味では機会平等、そして愚直にやりきった人が勝つ可能性が高い。よって、コツコツと5年やっていればふと気付いたときにポジションは作れる可能性が高いということかと。さらに進出前から1200万店舗を狙う必要はどこまであるのか、というのもあります。まずはどこかの切り口でナンバー1を狙うという考え方もこれだけ人口が多く国土が広い国であれば成立するのではないかと思うわけです。それに、一昔前の中国もパパママストア全盛だった気がするんですけどねぇ...。

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Vol03. 「IT大国インドのネット事情。いまや夜明け直前:動き始めたネット通販、facebookでブランド認知も」
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インドは一言でいえばダイバーシティの国。世界最先端に触れるどころか世界最先端を満喫する層もいれば、江戸時代をはるか越えてさらに昔に近いような生活をしている層もいる。平均値を表現するようなインド人というのは正直いない。そんな世界でパーセント議論はナンセンスで、実数をいかに見るかというのも重要なこと。ネット利用率はまだまだ低いが都市部若者等の特定層ではすでに一部からテレビからFacebookシフトが起きたりもしているわけです。さらにこういった層はオンラインショッピングなどにも抵抗感はない、という兆しもあり、こういった層が今後さらに拡大する可能性も高いわけです。何年先をみるのか、そこまでに何が起きるのかといったことをスコープに入れることも面白いネタです。

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Vol04. 「スズキ、パナソニックも狙うインドの地方都市と農村:市場争奪戦の舞台は大都市だけではなくなった」
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広い国でどこまでを目指すのか、という話です。インドはまだまだ都市農村比率は7:3、そしてTier1と呼ばれるメガシティ以外にも意外とミドルクラスも散らばっている。それらを考えると、インド全体のトップ3シェアに食い込もうとすれば、大都市だけという選択肢は限りなく無理があるというのが実態です。その一方で裏を返せば、Tier2、Tier3のような地方都市にも十分に市場もオポチュニティもあるわけで、トップ3に入るから地方都市を攻めるという考えもあれば、地方都市からテストケース的にインド市場に食い込むという考え方も成立するのではないかと。

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Vol05. 「インド発!美しくなりたい気持ちは、男性も女性も同じ:沸騰する美・健康市場に、化粧品、医薬、食品業界が群がる」
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インドと言えばベジタリアン、ベジタリアンと言えば健康的というイメージもなんとなくあるかもしれませんが、正直インドのベジタリアンは健康とは程遠いイメージかと。油、塩をしっかり使った食生活。さらに昔からの価値観で豊満が好まれていた世界です。しかしながらウェスタナイズされていく、さらに生活習慣病大国の道をまっしぐらに歩いていく中ではこういった価値観も変わっていくわけです。しかも、楽して痩せたい、というまあ相当難しいことをいうわけなので、何がしかの代替品という市場というのはかなり大きな機会があるのではないかと。さらに、インド人男子、世界で一番鏡を見る時間が長い民族だと個人的に思います。一大メンズコスメ市場というのも狙える可能性があります。草食男子で培った(?)美というのかちゃんと見せるという市場は大いにあると思うんですけどね。

というようなことを徒然と書かせていただきました。それにしてもまだまだインド市場の誤解とか勘違いとか腰が引ける理由とか色々ネタはありますね。インド、ネタの宝庫です。