きつい目で私を睨み、
ふんと一瞥して、その客は帰っていった。
あなたの言葉は信用出来ないわ、と言わんばかりに。
営業をしていると、よくあるいつものシーンである。
が、私も人間である。それを受けて、私は傷つき、ときに心で悪態をついて、いつも自分を守っていた。
しかし、昨日はそうしなかった。
何故なら、その客が私の中の「拒絶の恐れ」を引っ張り出してくれたことが分かったから。
嫌な気分がわき起こるのは今までと同じだが、私はそれを意識の中に迎えいれ、その気分を充分味わった。
その酸っぱさを。
その惨めさを。
やがて、気分は落ち着き、徐々に心に平安が訪れた。
今までと決定的に違うのは、
その一件は完全に消化され、
もうそのことを何度もグルグル考えなくなったことである。