『彼らが本気で編むときは、』

 

<ストーリー>
優しさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコと、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ


そんなカップルの前に現れた、愛を知らない孤独な少女トモ

桜の季節に出会った3人が、それぞれの幸せを見つけるまでの心温まる60日。


小学生のトモは、母ヒロミと二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。


ひとりきりになったトモは、いつものように叔父であるマキオの家に向かう。ただ以前と違うのは、マキオはリンコという美しい恋人と一緒に暮らしていた。


リンコの美味しい手料理や母親が決して与えてくれなかった家庭のぬくもりとトモへの愛情・・。最初は戸惑うトモだったが、リンコのやさしさに閉ざした心を少しずつ開いていくのだった・・・。


本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、自分らしさと本当の幸せを教えてくれた。


嬉しいことも、悲しいことも、どうしようもないことも、それぞれの気持ちを編み物に託して、3人が本気で編んだ先にあるものは・・・。

 

 

こんにちは☆ ちぃです

 

生田斗真さんがトランスジェンダーの女性役を熱演したとして話題の『彼らが本気で編むときは、』の感想です。

 

私は映画とその映画を元にしたノベライズも拝読させていただきました。

 

メディアでは「LGBT映画」としてさまざまな場面で紹介されましたが、個人的にはLGBT映画というより、家族……特に母親というものに焦点を当てた作品だと感じました。

 

率直な感想を言うと、とても面白い作品だったと思います。

 

育児放棄をする母親、溺愛する母親、愛にあふれた母親などなどさまざまな母親が描かれ、それぞれにドラマがあるような感じがあって、改めて「家族とは何をもって家族なのか」というものも考えさせられます。

 

その反面、私自身が元男子だということもあって、少々厳しい目かもしれませんが、トランスジェンダー女性の表現方法はいささかだったかなという印象です。

 

今回はその点について触れていきたいかなと思います。

 

【煩悩を編む】

 

作中でキーになってくる“編み物”ですが、トランスジェンダー女性のリンコは自身の男根への供養として棒状のものを煩悩と称して最終的には煩悩の数と同じ108個編んでいます。

 

これを108個編み終え燃やして供養したら、戸籍の性別も女性に変えるということなのですが、正直に言うとこの感覚はよく分からなかったです。

 

私自身は女性として生活する上で、戸籍が男性で不便なことが多すぎて、さっさと変えたかったですし、何よりも男性であった身体のことを考えたくなかったので、それを編む行為自体がよく分からない。

 

ただ、ムリヤリ納得する理由を述べると、過去の自分と向き合う行為だったのかなと、そしてリンコは編み物がストレス発散のように言っていたので、理にはかなっているのかなと……。



【トランスジェンダー女性のリンコと他の女性との対比】

 

個人的に気になった“トランスジェンダー女性のリンコと他の女性との対比”

 

愛溢れるリンコとネグレクトの母親ヒロミ

 

やさしさに満ち溢れたリンコと偏愛気味の母親ナオミ

 

女性的なリンコとボーイッシュな同僚の佑香

 

などなど、他にも愛はあるが言葉が雑なリンコの母・フミコ、差別的な対応をする女性看護師など、全体的に他の女性を極端なまでに生々しく描いてる要るのに対して、リンコをまるで聖母のように描きすぎじゃないかなと思う場面もチラホラ。

 

なんというか、リンコの存在そのものが現実離れしてるというか、個人的にそこまで女性的にしなくても……と思ってしまいました。

 

【トランスジェンダー女性の描かれ方】

 

先ほど「そこまで女性的にしなくても」と言いましたが、ところどろに男性っぽい表現も入ってきます。

 

例えばパートナーのマキオとのちょっとした自転車競走の時に雄たけびを上げたり、ノベライズの方では“男声でトモを叱る”場面があったり(その後の展開として「男が出てる~」というやり取りがあったり)と、

 

全体的に過剰なまでに女性的に創られているリンコ像なのに、ところどころ男性っぽい要素をいれてくるので、ものすごくアンバランスさを感じます。

 

また個人的に気になったのは、初対面のトモ(パートナーの姪)に対して胸を触らせようとする、目の前に年頃の少女がいるのに平気で「ち●こ」と発言したり、


大らかで自然体と言ってしまえばそれまでだけど、なんとなくひっかかりのある表現だと感じました。

 

【作中のどの女性よりも女性的に描かれるリンコ】

 

リンコは服装や仕草など、作中のどの女性よりも女性的に描かれています。室内着や寝間着まで女性的なファッションです。

 

どこを切り取っても女性的で、逆に言えば“女性を演じてます感”がにじみ出てて現実味がない感じ。


逆に他の女性陣や同棲しているマキオがとても生活感があって現実味がある分、そこにリンコがいることに違和感さえ感じるくらい過度に女性的に描かれている印象でした。

 

入院着の上からでも女性もののジャケットを羽織る始末だったので、そうでもしないと男優さんの男性的なボディラインが如実に出ちゃうのかなと勘ぐってしまいましたね。

 

【男優がトランスジェンダー女性を演じることについて】

 

今回トランスジェンダー女性のリンコ役に、男優である生田斗真さんが起用されました。

 

別にトランスジェンダー女性役に男優さんが起用されること自体は珍しくなく、映画『リリーのすべて』ではエディ・レッドメインさんが、映画『彼は秘密の女ともだち』ではロマン・デュリスさんが男優でありながら見事にトランスジェンダー女性を演じています。

 

※「彼は秘密の女ともだち」の場合、トランスジェンダー女性というよりクロスドレッサー(異性装)に近い


【関連記事】

『【感想】リリーのすべて(原題:The Danish Girl)【映画】』


『【感想】彼は秘密の女ともだち【仏映画】』

 

もちろん生田斗真さんもトランスジェンダー女性を見事に演じてくれました。

 

ただ一点、気になる点を言えば例に出した「リリーのすべて」「彼は秘密の女ともだち」の両方とも、男性から女性に性別移行するさまが描かれているので、必然的に男性のシーンと女性のシーンが存在するために男性キャストが起用されるのも納得がいきます。

 

今回の作品では、リンコはすでに女性として生活しており、あとは戸籍を変えるだけという状況なので全編女性のシーンのみ


なので男性キャストと言うのはミスキャストと言わざるを得ないかなと。

 

ノベライズではリンコは母の理解もあり、10代で睾丸摘出手術をしています。リンコの年齢は分からないのですが、キャストの年齢を考えると大体30前後かなと。

 

そう考えると、かなり女性化していないとおかしいのに、男性キャストなのでどうしても男性っぽさが残ってしまうので違和感しかない。

 

リンコのようにすでに女性として生活しているトランスジェンダー女性役で女優さんが演じた例ももちろんあります

 

一例を挙げれば映画『トランスアメリカ』フェリシティ・ハフマンさん、ドラマ『ママは昔パパだった』戸田恵子さんなど。


【関連記事】

『【感想】トランスアメリカ【映画】』

 

なので、こういった役どころであれば、女性キャストでも良かったんじゃないのかなと思いますね。

 

でもまぁ、生田斗真さんがトランスジェンダーの女性を熱演!って言った方が話題にもなるし、注目もされやすいのでそういった商業的ニュアンスを感じなくもない。


 

【トランスジェンダー女性の描かれ方】

 

生田斗真さんが起用されたと同時に気になった作中でのトランスジェンダーの女性の描かれ方がちょっと不思議でした。

 

パートナーの姪のトモはリンコを間近で見て、話をして、そして探り探りではありますが、男性だと見抜きます。

 

それに対して、トモのクラスメイト・カイの母親・ナオミは遠目で見ただけでリンコを男性だと判断します。

 

それだけでも不思議なのに、パートナーのマキオはリンコを男性だと気づかずに交際を申し込みます。

 

「女性の方が勘が鋭い」という表現なのかなんのか。そこに一貫性がなくて変な感じでした。

 

おまけに先ほども言ったように、リンコは早い段階から女性になる準備をしているので、かなり女性化している設定でもおかしくないハズなのに、その差が生まれてしまう不思議。

 

なんとなくトランスジェンダーの女性の描かれ方については詰めの甘さを感じずにはいられませんでした。

 

【作中におけるトランスジェンダーの女性の描かれ方まとめ】

 

作中のリンコは自分とも違う不思議な存在でした。

 

題材としては非常に面白いのに、どこか不完全で、もったいない感じ。

 

映画を観て、ノベライズを読んで、どこかで見たこのトランスジェンダー女性の描かれ方はなんだろうとしばらく考えました。

 

そして個人的ひとつの考えにたどり着きました。

 

「テレビで見るニューハーフタレントさんのソレだ」と。


男性的な雄たけびを上げる。ドスを利かせた声を出す(ノベライズ)。「男が出てる~」などの表現。


一見して、もしくは話してみて男性だと分かる。乳房を触らせようとする。下ネタ的な単語を言う。過度に女性的な振る舞いをする。

 

もちろん例外はあるけれど、テレビでよく見るニューハーフタレントさんがよくするパフォーマンスに似てるなと。

 

だから「女性として生活している(元男性であることを売りにしていない)トランスジェンダーの女性」としての違和感が強かったのだと感じました。

 

【まとめ】

 

この映画の魅力のひとつは役者陣だと思ってます。


リンコを熱演された生田斗真さんをはじめ、小役の柿原りんかさん、込江海翔さん、マキオ役桐谷健太さんも素晴らしいですが、


個人的にネグレクトの母親・ヒロミ役ミムラさん差別的な言動をして息子を追い詰めてしまうナオミ役・小池栄子さんがとてもいい味を出されています。

 

またリンコの中学生時代を演じた高橋楓翔さんも思春期のあの絶妙な感じをうまく表現していて……とにかく役者陣が素晴らしいなと感じました。

 

映画そのものとしても「トランスジェンダーの女性」の描かれ方に若干の甘さはあるものの、ほんわかとした空気感の中に、グサリと来る鋭利なものを感じて、ときどき唸るほど課題を与えくれるような映画で、とても面白いです。

 

あと個人的に男根を模して編むのってどうかなと思ってたんですが、見てみたらカラフルでファンシーだったのも印象的でした。

 

そういったのほほんとした編み物シーンからトランスジェンダーの女性の描かれ方までいろいろと注目してみるのも良いかもしれません。

 

良かった是非(*┃ω┃*)ノシ


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