隣の家の少女 | 個人的読書

隣の家の少女

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)/ジャック ケッチャム
¥720
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「隣の家の少女」
ジャック・ケッチャム・著/金子浩・訳
扶桑社・出版/扶桑社ミステリー


『真のホラー、しかし、これだけ読者に衝撃を与えるフィクションは、そうない』


 本書も、色々噂はずーっと聞いていたんですが、
それに全く違わぬ、すごい作品でした。
 今回は、ちょっとネタバレっぽいので、読書予定の方は、要注意でおねがいします。


 構成の妙で、最初から伏線といいますか、暗示を充分二分に示したのち、
アメリカの50年代、60年代のノスタルジックな雰囲気いっぱいに
少年の思い出として、叙情的に作品は始まります。
 少年期の甘酸っぱい思い出として、隣に引っ越してきた、思春期真っ只中の美しい少女。
河原での出会い、お祭りに行ったり、楽しい出会いと楽しい会話、、、。
 こういう少年を描いた成長小説、青春小説は、たくさん名作があります。 
それが、、、、。


 善良な一般の読者は、どうしてこっちに行っちゃうの?止めて!!。と叫んでしまうでしょう。
私も善良かはわかりませんが、そうでした。
 悪役に徹っし加害者となる隣の母子家庭の一家の行動の理由もわからないまま、
それに付き合わされる、主人公、いや、読者。
それを止めることが出来ない、主人公、いや、読者。
 ここも、作者もテクというか、構成の、妙だと思いますが、
主人公を傍観者(一部違いますが)にとどめその罪悪感を目いっぱいあじあわせる。
見てみぬふりが、一番悪いことではないかと。
 恐らく、そこまで、しなくても、そうなる可能性はあんたたちにもあるだろうと
ケッチャムは語りかけているようです。
 心がかき乱されて、心の不協和音がなり続ける、正に、真のホラーです。

 ホラーというのは、基本的に嫌で悲しいお話し多く、読者に最後まで読ませるには、
相当、感情曲線のラストでのプラスマイナスの一致を行わないといけないのですが、
本書は、最低レベルで一応、プラスマイナスは整えられるものの
読後感も最悪です。(というより、内容が、凄すぎて尾を引くだけかもしれませんが)


 これ、解説をキングが書いているのですが、なぜキングが書くか、めちゃめちゃわかります。
このケッチャム、この壮絶なテーマだけがすごいんじゃなくて、
書き手作家としてもすごい書き手です。
 キングほど、文芸表現というテクに溺れている感じじゃないですが、相当なレベルで
正に、キング・スタイルでキングが書いたって言われても、やっちゃったかと理解できます。
 又、キングは、自作の序文なんかで、内容如何を問わず、本を通じて読者をわしづかみ
その心になんらかを与えるのが、傑作だし、そういうものを書きたいって言っていましたが、
これが、それなんじゃないでしょうか?。


 多分、ケッチャムは、これしか読んでいませんが、
子供を絶対的な弱者でありながら残虐さをもつ不可思議な存在として描きたい、もしくは、
そんなことを一番育ってくる時に感じたのだと思います。
 
 この話に恐怖し、こんな話を書いた著者に恐怖し、
そしてこんな話を読み続ける自分に恐怖する小説です。
 (最後にもう一回ブログに書いている自分に恐怖します)

 万人にオススメできませんが、小説なんてたいしたことねぇなぁとか、思っていて、
小説でガツン言わされたいあなたにオススメします。