闇鏡 | 個人的読書

闇鏡

闇鏡/堀川 アサコ
¥1,575
Amazon.co.jp

「闇鏡」
堀川アサコ・著
新潮社・出版


『室町時代の京を舞台にしたミステリ』


 本書は、私が、個人的に御贔屓にしている日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作です。
この賞については、書き出すと止まらなくなるので、意図的に自粛。

 一応、歴代受賞者をずらずらと、、。

酒見賢一
佐藤亜紀
恩田陸
北野勇作
小野不由美
池上永一
浅倉三文
沢村凛
宇月原晴明
畠中恵
森見登美彦

(大賞、優秀賞、候補も含む)
凄いでしょ、、と。


 本書。都の検非違使が活躍するお話しと聞いて、
ははーん、平安朝期を舞台にしたやつだなぁ、
と勝手に思っておりましたら、なんと時代設定は、室町時代。
 予想を勝手に裏切られ、今までにない設定にこれは、おもしろそうだと。

 武士の台頭と乱世の匂いがぷんぷんする室町時代の都。
五条河原で遊女の死体が発見されます。そしてその死体の傍では、
死んだはずの女性(死体とは、別の女性)の姿が、、。
検非違使の清原龍雪、その放免(検非違使の部下です))、清輔と蚕児は、
この事件の取り調べを行うのですが、、、。


 登場のキャラ立ちもよくて、
検非違使の清原龍雪は、あやかしなんかが嫌いで、いつも怯えています。
で、この龍雪は、どっちかというと頼りないキャラ。
部下である放免の清輔と蚕児に頼りっきりです。
清輔は、めちゃめちゃ頼りになります。この三人だれが主人公かわかりません。
 
 ファンタジーノベル大賞受賞から容易に想起されるように
かなりファンタジー色といいますか、怪しげな雰囲気充分の始まり方です。
 途中まで事件といいつつ、ミステリはそっちのけでこの世界観、雰囲気を楽しむ小説かと
思いきや、なんと、これミステリとしても、めちゃくちゃしっかり作りこまれております。
伏線で、一人の人間が見せる、別の顔なんてのがバリバリ張られているのですが、
それが、、、。(ネタバレでこれは、書けません)
 読後は、よく作りこまれたミステリを読んだなぁと、いう感想のほうが、大きいです。
 室町時代の風俗や世界観なんかだけで充分に読ませられるのに
ミステリとしても完成度が高く、ちょっとそのギャップにあれれとも思うのだけど、
創りこまれている作品も好きです。


 著者の方、この後、あんまり本を出されていないと思うのですが、
読者としては本書、一冊で二度美味しいって感じでしたが、
個人的には、室町時代の正邪が入り乱れた、乱世の世界観をだしまくったのを
次に期待したいです。