ページをめくれば | 個人的読書

ページをめくれば

ゼナ・ヘンダースン, 安野 玲, 山田 順子
ページをめくれば

「ページをめくれば」
ゼナ・ヘンダースン・著
河出書房新社・出版/奇想コレクション


『女性と子供のもつ感性の豊かさと優しさ』

 

 早川書房で訳されていない過去の名作SFなんかを丁寧に拾い集めている感じの、
河出書房新社の奇想コレクションです。
 今回は、ゼナ・ヘンダースンの日本でのオリジナル編集の短編集です。


 知的な男性経済評論家が、商品のブームや、ヒットとは、
女性や子供に受けた時にそういうだけです。と以前何かで聞いたことがあるのですが、
 つまり、女性と子供は、がちがちの理屈では割り切れない、評論家からすれば知的でない
なにかによって、行動しているとこの評論家は、言いたいのでしょうが。
 本作を読み限り、女性と子供の持つ豊かな感性(特殊な能力かもしれません)
が、物語に羽を与え、感動をさらに深める要因になっていることが、判ります。
 これは、逆にいうと、男性作家には、書けません。


 最初、女性のSF作家ということで、漫画家の高橋留美子作品みたいなのを、
(「一番近い学校」は、高橋留美子作品に近いかもしれません)
想像していましたが全然違いました。
 殆どの作品が、女性と子供の、視点から描かれていて、
一言簡単に言うと、とても優しいんですね。
 今流行りの、癒し系です。
題材は、SFでは、定番中の定番のファーストコンタクトものだったりするのですが、
マッチョな男性の価値観からは、180度反対から描かれ、多様性を受け入れ共存共生
の優しい価値観が、見られます。
 巻末の解説を読むとこのふわーっとした優しい価値観をフェミニズムに攻撃されたそうですが、
しかし、その価値観こそが、この作家の作家としての資質なのです。


 又、ゼナ・ヘンダースンは、実際小学校の教師だったそうですが、
この学校での先生と子供のほんのちょっとした会話なんかが、
物凄いリアルです。 
 そうそう、子供ってこんな感じって何回思ったことか、、。
難しいことは判っていないような感じなのに
本質的なことは、きちっと頭でなく心で理解しているそんな感じです。


収録作品

忘れられないこと 光るもの いちばん近い学校 しーッ! 先生、知ってる?小委員会 

信じる子 おいで、ワゴン! グランダー ページをめくれば 鏡にて見るごとく-おぼろげに 


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