逃亡くそたわけ | 個人的読書

逃亡くそたわけ

絲山秋子
逃亡くそたわけ

 「逃亡くそたわけ」
  絲山秋子・著
 中央公論社・出版


 『精神病院からの逃亡、九州縦断』


 タイトルに吃驚して、読んでみようと
思いました。


 九州北部の精神病院に入院している
絶えず、幻聴が聞こえる躁病の女子大生と、
鬱病のサラリーマン"なごやん"が、
いっしょに脱走、逃亡、九州縦断を目指します。


 "なごやん"は、鬱病なので、ちょっと暗め
かつ、論理的で消極的、
躁病の私は、テンション高めで、かなり気分屋さんです。
 "なごやん"のちょっと古い年式の、マツダのセダンに、
乗って、逃げます。
 途中もう怖いもんなしで、軽犯罪を重ねながら、
逃げます。
 泊まるところなくて、車中泊をして、
逃げます。
 ちょっと怖そうな人が乗っているポルシェに車を
こすっても逃げます。


 精神病院に戻ると、個室と呼ばれる
窓の無い部屋に収容されるかもしれないし、
なんか、きつい、薬を飲まされて、
どよーんとした日々をすごさないと、
いけないかもしれない。

 なにより、落涙しそうになったのは、
逃亡中の二人が、山間部を走破して、
普通の生活をしている人々に出会うところ、
もし、自分にこの病がなければ、こんな風に、
みんなといっしょに、生活しているのに、、、、。


 でも、これは、なにも、彼ら二人だけのお話しでは、
ないのですね、、
 みんな日常から逃げたい、と思うことのない人
なんか、居ないはずです。
 今自分のかかわっている嫌なことの無い世界に
行きたいと誰もが、思うはずです。

 そんなことを、思いました。


 面白かったので、「袋小路の男」
も読んでみようかなぁ。