温泉街は恐ろしい!!という古臭いイメージ
教育県N県庁所在市N市において、校内暴力などの荒れは少ないように思われた。「教育県だからこその体面」か?あるいは本当は荒れが見られはしたが、いつの間にか揉み消されたか?
県の玄関とも言うべき駅周辺で、肩をイカらせ周囲を威圧する少年の集団を確認した。いずれも黒い特攻服に身を包み、解りやすいといえば解りやすいが、しかし少々アナクロな?
これをみた当地N市出身、しかも県庁所在地の名門中学卒業後県トップクラスの進学校卒業後県内国立大学卒の県内エリート一直線の男が、少しいたずらめいた笑顔を湛えてワタシのほうに振り向いた
「あいつら絶対に下山田のやつら、あいらみてえのを下山サル、っていって俺たちバカにしてましたよ」
つまりはイナカの人をバカにした、どこにでもあるような話?
『でもね、俺厨房時代に「テメエ?市内の奴か?俺らは下山田だ!」っていうからびっくっちゃって、でもって「おい、下山田まで帰るから金かせ!!」って。一瞬びびっちゃったら、思いきり頭突き食らっちゃって、ああ、もうだめだわーって、しかたなしに財布の中みせたら、「交通費だけでいいかんな」って。一瞬いい人たちかなーって、今思うとバカみたいですけどね』頭突き、というのが彼の出自をあらわしているのか?あるいはどっかのヤンキーマンガの影響か?とにかく彼の話を聞くに?というのがいくつか
下山田といえば、この県庁所在地から少々離れた温泉郷、というイメージしかない。人口10万人に満たない、農業と、前述の如く温泉で栄えている街だ。一度この県の出張ついでに温泉でも寄るか、と参考程度にパンフレットを見せてもらったことがある。「のどかな風景にいやされて」どこの田舎町のパンフレットにでも書いてありそうなありふれたフレーズと、またいかにもなのどかな、緑あふれる風景の写真から、どんな町なのかと想像してみた。静かでのどかな温泉に浸かった後、山菜料理と川魚で・・・
「じゃあさ、宿泊先は、自費で、っつうんで経費じゃなくていいよ、この下山田温泉ってとこに泊まる、っていうんでさ」というなり軽く鼻で笑う奴もいた。
彼の鼻でせせら笑いの意味がわからず、つい「は、ナニがおかしい?」というなり奴は「そこってね、日本で一番のピンク温泉街なんですよ。N県民でそこ男でいくっていうと、大概怪訝な目つきされちゃいますよ」
のどかな田園風景の真ん中にピンク温泉?第一ピンク温泉というのが理解できなかった。はあ?お父さん連中が、家族の目を逃れて出張で「みんなやってるから仕方ねえな!」とばかりに旅の恥をかきまくる、という奴だろうか?そんなの平成の世になってまだあるのだろうか?第一若い奴らが行くのだろうか?
『でね、下山田の奴らって怖いんですから。何せあのイナカの田んぼの真ん中の温泉街に「暴力団対策課」なんてもんがあるんですからね、でもっていつだったかな?人身売買の県で大量摘発されて、地元の』というなりほほを指差し上下させて『かなりの人数摘発されましたよ。あとね、あの下山田の中学生に刺青いれた、って捕まえてみたらすげえ彫り物だらけの中学生っていうんで、まああれって一種の見栄ですよね、こんなに堪えてくれる子分がいるって、でもまだ中学生ですからね・・・』下山田について勝手に想像していたことを思い出しながら、彼の話に耳を傾けていた。当地の名物川魚の煮付けはうまい。また地酒もうまい。しかし翌日の仕事に差しさわりが出ないように、というので軽く一合のみで済ませた。
この男の話を聞いているうちに、疑問がわきあがっていった。曲がりなりにも教育県だというのに、またこの県庁所在地をみて、健全だとしか言いようのないこのN県で、そんな恐ろしいことが?
『あ、ウチの県ってHIVの感染率日本でトップクラスでしょ?一応教育県とか言ってるけど、下山田の温泉郷ですっきり、ってんがここのデフォルトですから』
いつも出張で泊まるのは全国どこにでもあるビジネスホテルのT。職場のほうで宿泊先を勝手に決められ、早期予約割引の分まで計算され、別に金に困っていないし、自費で好きなとこに泊まりたいくらいだ。
一ヶ月ほどして、あくまでプライベートで、土曜の朝出発で一泊してから日曜日に帰る、というゆっくりとは程遠い旅。けれど下山田という町の実状が知りたくて、またどんな風景が広がっているのか?という疑念を抱きながら。
よく考えてみたら、温泉街といっても健全なところしかいっていない。また勉強会で地方に出向き当地の名門ホテルに宿泊するも、いままで色っぽい話なんてないままだった。もともとそういう方面は疎い。また温泉街のそいういうものなんて、多分思い切り下品で、自分の嗜好に合いはしないだろう。どこかのお笑い芸人の「温泉街のストリップのオバちゃん」ねたよろしく、そんな次元でしかない、というような。
長距離バスで県庁所在地に正午ごろに着き、駅前のバスセンターから下山田温泉郷行きのバスに乗り、1時ごろに目的地にたどり着いた。まだ怪しい光を放つものはない。温泉街は目覚めてはいない。しかしふと道行く人の会話に耳を傾けると、明らかに広東語でしゃべっていた。町が目覚めるまでどのくらい待てばいいんだろうか?
東南アジアの少女?と思しき女性の肩に手をやるデブな目つきの悪い男、この町で供されるサービスとやらの一端を見た。
行ってもないのに妄想を書いてるw