住宅借入金等特別控除を確定申告にて適用を受ける場合に、住宅借入金等特別控除額の計算明細書 の記載が必要となりますが、この計算明細書から住宅借入金等特別控除の適用要件等を読み解いていこうと思います。

 住宅借入金等特別控除額の適用を受けるために申告書を提出する方は、年末借入金残高の1%(百円未満切捨)を、申告書の住宅借入金等特別控除額に直接記載したらいいはずなのに、どうしてこの計算明細書が必要であるのかと思うかも知れません。この計算明細書を記載するのはどういう意味があるのでしょうか?

 計算明細書の役割は、①居住開始年月日の確認、②面積要件の確認、③自分の取得対価の額と借入金の額との比較等を行うこと、の三点にあると思います。

 ①は、「2.新築又は購入した家屋等に係る事項」の「居住開始年月日」を記載することにより、平成21年に住宅借入金等特別控除(以下、「ローン控除」と呼びます。)を受けるための要件である、物件を取得した日から6月以内に居住していること、そしてその居住日が平成21年であることの確認が行われます。

 ここでいうローン控除を受ける場合の取得の日は、通常添付書類である登記事項証明書に記載された所有権移転登記の日をさしますので、その日から6月以内に居住している事実がない場合には、適用が受けられなくなってしまいます。

 次に②の面積要件ですが、まずローン控除を受けるためには、床面積が50㎡以上の家屋でないといけません。ワンルームマンションなどは通常対象外となっています。それゆえ、「2.新築又は購入した家屋等に係る事項」の総(床)面積の記載は、50㎡以上でなければなりません。

 また、店舗併用住宅である場合は、その50%以上を居住の用に供していなくてはいけません。それゆえ、「2.新築又は購入した家屋等に係る事項」の「ハ.総面積」を登記事項証明書から、そして「ニ.うち居住用部分の面積」を測定等して記載していただき、「5.居住用部分の家屋又は土地等に係る住宅借入金残高」の「7.ニ/ハの居住用割合」が、50%未満なら適用が受けられません。50%以上なら適用要件を満たします。
 なお、事業で使用している部分が10%以下の場合、つまり居住用割合が90%以上の場合は居住用割合は100%とみなされますので、「7」の居住用割合の欄には100%と記載します。

 最後に③の居住用部分の自分の取得対価の額と借入金の額との比較についてです。

 ローン控除額を求める算式は平成21年居住の場合には、「年末借入金残高×居住用割合×1%」となりますが、この場合の年末借入金残高は住宅の取得対価を超えることは出来ません。
 もし超える場合には住宅の取得対価×居住用割合×1%(百円未満切捨)がローン控除額となるのです。

 この場合の取得対価については、以下の二点の注意事項があります。
 一つ目は、「2.新築又は購入した家屋等に係る事項」に記載する取得対価とは、建物・土地本体部分の価額のみになります。つまりローン控除の計算上は、譲渡所得の計算では取得費に入れることが出来る仲介手数料や登記費用の額は、取得対価に入れることは出来ません。

 二つ目は、取得対価は、共有で取得した物件の場合、購入価格に自分の持ち分割合を乗じた金額となります。よって、「4.家屋や土地等の取得対価の額」の①の欄で、登記した自分の持ち分割合を記載していただき、物件の取得対価と自分の持ち分割合を乗じた額が、申告する者の取得対価の額となるということです。

 また、年末借入金の残高の方も、仮に銀行から夫婦で連帯政務で借りる場合は、当事者間で合意した債務負担割合を乗じた額が、年末借入金残高となります。よって、「5.居住用割合の家屋又は土地等に係る住宅借入金等の年末残高」の欄で、「連帯債務に係るあなたの負担割合」を記載(連帯債務でない場合は100%と記載)し、その割合を借入金残高に乗じた金額が、申告する者の年末住宅借入金残高となります。

 この比較後の低い方の金額に居住用割合を乗じ、その1%を乗じた金額が、ローン控除の適用を受けることが出来る金額となります。


 以上のように、この計算明細書は、適用要件の確認及び、正確なローン控除額を求めるために必要となるのです。