中国ネット社会で良く表れる言葉の一つ「五毛党」。まあ、正式な定義はないのでしょうが、大雑把に言えば「ネット書き込みで収入を得ている人たち」でしょうか。こちらのリンクでの用語解説などにもあるとおり、元々はこれは政治的プロパガンダを盛り上げるために要請される形の人のみを指すのかと思いましたが、ここではビジネスの世界でも動員されている五毛党の体験記です。今回はある「五毛党になってみた」人の記事を、注目ブログ記事などを集めた雑誌「博客天下」5月16日号で見つけました。「これじゃあ、ネットの農民工だ!」と嘆く意外な苦労談などをご覧ください。(以下、内容を要約して訳しました。若干チャイナIT用語翻訳に自信が無いところあります、問題ありましたらコメントなどでご指摘頂ければ感謝です!)

China - Internet Cafe (网吧)
コメントはこんなところからも?「China - Internet Cafe (网吧)」Flickrより


「水軍」と「団長」、そしてネットさくら:五毛党ライフへ
 まずは「QQ群」(訳注:中国でメジャーなチャットツール「QQ」の中のグループ)で「水軍」募集を探す。水軍とは末端で書き込みをする一兵卒のことだ。それを束ねる人は「団長」、「じゃあやってみろ」と仕事をくれた。ある電気製品に関するコメント入れ。40か所に渡り、「異なるIDで、10文字以上」でコメントが条件。記入状況をエクセル表にまとめ団長へ返す。報酬は1コメント2角(訳注=2.5円ほど)、日払、アリペイ(原文「支付宝」:中国でのオンライン決済で最もメジャー)決済。初日は緊張しつつ51個コメント、10元は貰えるのかと思っていたら何と40個は無効との非情の回答!IPアドレスが同じだったのがバレたのだ。結局収入は2.2元、電気代ネット代6元、昼ご飯23元、マッサージ60元(訳注:そんなん行ったらそりゃ赤字だろ!)の89元で大赤字!

 IPアドレス変換方法を学び、メルアドも100以上ゲット。次の仕事は牛乳へのコメント。90以上書いているうちにもう書くネタが尽きてきた自分は「この牛乳良いよ、メラミンもないし、うちのいとこの子どもの腎機能もバッチリ。おしっこも普通に出ます(笑)」とコメントしたら、団長からえらいお叱りが!「何やっているんだ!おまえのコメント見てみろ!」。すると、良く見ると自分のコメントに続いて「上に住んでいるうちのいとこの姉ちゃんもおしっこが好調!」みたいなバカコメントが続々!褒め言葉にも「ある程度のレベルが必要」と諭された・・。

 ある日は130コメントしてようやく収入が26元、それが「水軍」の平均収入だと言う。これじゃあ、まったくネットの農民工だよ。(訳注:「農民工」は農村からの出稼ぎ労働者、概して3K仕事を担い、都市労働者より低収入な場合が多い。)

「オレの彼女が裏切って他のカップルと…」でどう稼ぐのか?
 こんな依頼もあった。「オレの彼女は自分が出張から帰ったら、何と男女を連れ込んで3Pしてたんだ!」という男のスレッドに対して、この話題を盛り上げる書き込みをしろと言うのだ。「はぁっ?その話題を盛り上げて誰が儲かるんだ?」と思いつつ、次々とコメントを入れていった。嘆く男の怒り・悲しい感情が高まるうちに、段々自分も「可哀想に・・・」と感情移入しかけたその時、男は「わかった、オレの彼女は××出会いサイトで連れ込んだカップルを探したらしいんだ。誰かアカウントを持っていないか、探し出してボコボコにしてやる!」。その時にやっと気がついたんだ、このサイトのためにコメントしてたのかあ、と。団長曰く「こんなのはレベルの低いトリックだよ」。

そして五毛党から「ネットマーケティング」へ・・・
 じゃあ、レベルの高いのはって?それはもう「インターネットマーケティング」会社になって、本当に組織的に「団長、水軍」を組織して稼いでいるのだ。2010年のネットマーケティンブ業界は総収益8.8億元、大企業は少ないがマーケットは大きくなっている。ある業界関連セミナーでは、昨年10月に蒙牛が伊利に対して(訳注:共に中国の牛乳大手企業)あるネットマーケティング会社を通じて誹謗中傷のネット攻撃をかけていた事件が話題になった。「ネットマーケティングに業界規範とかあるの?」と周りに聞くと「新しい業界で、法律も追い付いていないから、個人の道徳の判断だね」。

 2011年、国務院新聞弁公室は国家リーダーも注目しており、ネット水軍の管理措置に関して研究を行っている旨明らかにした。自分もしばらくQQをしていなかったある日、団長から突然連絡があった。「おまえ騙しただろう!記者だな!」「記者が水軍になっちゃいけないのか(逆ギレ)」(訳注:文章中明示的にありませんでしたが、そうだったようです)その後、QQ群もブラックリストに載ってしまったようだ。これで、関係は完全に切れてしまった。(以上記事要約・翻訳)

【考えたこと】
 五毛党って、何か家にいるだけで楽して小銭稼いでいそうだなあと思っていたら、意外とシビアで大変そう(この記者さんが慣れていないからかもしれませんが)。それに、こんな感じで軽くリクルートされているなら、報酬の支払とかでトラブルも絶えなそうですね。

 政府五毛党の話の方がよく聞いていましたが、確かにどの商品やらにもやたらコメントが付いている、そしてめちゃめちゃ伸びているらしい中国のネットショッピング市場も考えると、こちらの民間五毛党の方が勢力的には多数なんでしょうね。でも、若い(人が多いであろう)青春のパワーは、やっぱりもう少し違うところに使って欲しいなあと思うのは、自分だけではないでしょうね。