習近平・国家副主席が軍事委員会副主席に任命されたことばかりが日本では報道されているこの第17期5中全会。まあこの報道ぶりも、日本が中国にこれだけ注目しているという証ではありますけどね。そんな中、引き続き地味に(笑)、自らのテーマに近いところをこの第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)の結果報告などから見ていきましょう。

 まずは比較的(中国国内では)報道もされている、環境対策、特に省エネルギーに関する目標について。今回の5中全会では2011年から始まる第12期5か年計画についてというのも大きな議論の焦点で、同計画がほぼ承認されたそうです(これは党大会なので、手続き上は来年3月の全人代を待たなければいけませんが)。その中でGDP単位当たりのエネルギー消費という、第11期5か年計画でも掲げられた目標が議論されたようです。その第11期5か年計画では2006年から2010年までにGDP単位当たりエネルギー消費を20%削減することが目標として掲げられました。

 本日付の新京報によればそれが達成されるかは「微妙」、2009年までに15.61%を削減、今年に入っては前半の6か月では削減どころか僅か0.09%ながらそれが増える厳しい状況。これには上級政府からの「ハッパ」が相当かかっていたようです。河北省安平県では「電気を止めて」までの強制的省エネに臨む始末。さすがにこれは「成長の質を高めるという趣旨に沿ってない」と批判されたそうですが、それだけ政治目標としての指標達成が地方指導者の重圧になっているのでしょう。

【新京報】
http://epaper.bjnews.com.cn/html/2010-10/19/content_158262.htm?div=-1

 また、南方週末紙によりますと、国家エネルギー局エネルギー節約及び科学技術設備司の黄鵬副司長の話として、第12期5か年計画ではその目標が更なる17.3%削減、そして更に第13期5か年計画では16.6%削減が目標に決定したとなる旨伝えました。既にこの数年間で極端な汚染企業は相当整理したところ、これ以上高い目標は掲げられないと、今の5か年計画より若干低めの目標という相場観のようです。上述副司長によると、次の焦点は電力業界の産業構造調整。水力、原子力、風力などのエネルギーを更に奨励することで、次期5カ年計画の内に第1次エネルギーに占める石炭の割合を70%から62%にしたいとしています。

【南方週末】
http://www.infzm.com/content/51377

と言っていると、同じ南方週末では、中国がこうしたクリーンエネルギー産業に補助金を与え過ぎていて、アメリカがスーパー301条発動に向けた調査を始めたなんて言う記事も。ちょっとこれは本筋と離れますが、数ある米中貿易摩擦の更なる火種になるかも。

【南方週末】
http://www.infzm.com/content/51390

 その他の今回の焦点は、国内の所得再配分の問題や、それに連なる新しいスローガン(候補)の「包容性成長」、政治改革には大きく触れられていないようです。あれっ、「三農問題」色はあんまり目立たないなあ?胡錦涛・温家宝の三農問題路線からの変化!?と政治的に読むよりは、これはまあ三農問題としてよりは、「城郷統籌発展」(都市と農村の足並みをそろえての発展)という感じの農村都市化の流れで考えようという論調と、自分には解釈されました。確かに今年最初の「中央一号文件」でも農村「外」に策を凝らして三農問題を解決していこうという論調でしたしね。

 まあ、今後実際に表に出てくる第12期5か年計画の書き振りは、以前の社会主義計画経済時代ほどの強制力は無いですが、今後5年間の方向性を示すという意味で注目です。特に何かの数値が「指標」とされてしまうと、本当にそれの達成に向けた有無を言わさぬ強制的努力がなされるので、その辺りにどんな指標と政策が割り振られるのかは、今後の動きを見る参考になります。