昨年来続いている中国における農産物価格、にんにく、緑豆に続いて、トウモロコシも価格が高騰していると、6月2日付21世紀経済報道紙が伝えています。その中で興味を引いたのが、その「犯人探し」です。





 農業部の発表によると、今年2月よりトウモロコシの価格は上昇傾向をたどり、その上がり幅は33.3%、5月の昨年同期比の値上り率は26.9%になったとのこと。食物価格は消費者物価指数にも大きな影響を与えるということで、これらの数字は注目を集め始めました。この理由を巡る一つの派閥は「供給不足」説:昨年夏から遼寧省、吉林省などで干ばつが始まり、収量は2-3割は落ちたとされるからです。





 しかし統計局は2009年のトウモロコシ収量は十分としており、同年の1.64億トンと言う収量は事前の予想である1.4億トンを上回っていると主張します。しかも、今年は4年ぶりにアメリカからトウモロコシの輸入が行われそうで、しかもその量はこれまでで最大になりそうとのこと。ますます供給量不足という説明は難しくなります。





 それではどうして値上りするかというと、そこには「国有企業悪者」説の指摘が。国家備蓄のためにトウモロコシ購入を行う国営企業の活動に問題があるとの指摘があります。トウモロコシは国家による買い上げの対象となる穀物であり、それを実際に買い上げる企業は多くが「中国・・・」という名がつく「中字頭」企業(多くが国有企業)なのです。昨年、一昨年から国家買い付けが多くなり、「以前は7,8割は市場に流れていたのに、今では7,8割が国家備蓄倉庫に入ってしまうよ」と嘆く加工企業の経営者の声も紹介しています。





 しかし、その後の備蓄トウモロコシのオークションでは、再びこういった東北地方の備蓄購入企業が安く買い叩いて行っています。これはもしかして「自作自演」、国家買付で買っておいて国有企業に安く卸して、そして利益を出させている・・・、という疑念がこの新聞記事の趣旨。にんにく、緑豆に比べても影響の大きいトウモロコシのこのような値上がりが、インフレにつながる懸念を示し、記事を閉じています。





 6月7日付時代周報は緑豆の値上りを伝えつつ、ここでも統計局の見方(基本的には天気の影響による減産、それによる価格高騰)と、国家発展改革委員会による見方(投機的な資金の流入による買いだめ)との見方があり、5月26日には温家宝総理が国務院常務会議を開き、地方政府の金融管理と、悪質な投機資金による農産品価格のつり上げを取り締まるように指示したと言います。株価、地価の落着き(低迷?)により、投機筋はこういった一次産品にも目を向けているとも示唆されています。これらは「ホットマネー犯人」説とでもいえるでしょうか。





 本日5日付のChinaDailyでも5月の昨年同月比消費者物価指数は3.2%増と、価格上昇傾向は止まりません。北京市が最低賃金を20%上げて、960元/月に上げるなども(7月1日より実施)最近の物価上昇を考慮したものでもあるでしょうし、そうなると更には低廉な労働力と言う中国の「工場モデル」への影響も!?CPIを計るバスケットの3分の1は食品が占めているということで、小さな緑豆やトウモロコシから深読みしていると、中国経済全体を見渡せる視点でもありそうです。