最近またニュースを騒がすことが多くなってきた食の安全の問題。ポジティブなものもネガティブなものもありますが、春節、テト前の2月10日には自分の参加するプロジェクトにも重要そうなニュースが目を引きました。今日そのうちの一つは食の安全に関わるニュースです。
 
 国務院が「国務院食品安全委員会」を設立したとのニュース。率いるのは共産党政治局員で次期リーダーの呼び声高い李克強・副総理、それに農業担当の回良玉・副総理、王岐山・副総理が名を連ねます。この委員会の設立自体は、昨年6月1日に施行された食品安全法によって1年以内に設立されるよう決められているので驚くことではなく、やっと設立されたかあと言うところです。これまで、食品安全の問題は衛生部、工商部、農業部、質検総局などの多くの部局が、流通、生産、輸出入など異なる局面においてばらばらと関与していたため、その省庁横断的対応の欠如が問題対応への不備を生んでいると懸念されてきていました。そこで、これを解消するためにできたのが、今回の委員会というわけです。ただのワーキンググループではなく、30名のスタッフを抱え、独立のオフィスを構えた、準省庁クラスの組織となっているというのは、より実質的な作業がなされそうと期待をする声もあります(2月25日付南方週末より)。

 この委員会発足と機を一にするかのように、最近になって再び世間を騒がせたのは、もう収まったはずのメラミン混入ミルクの問題。これらが未だに中国国内で流通しているというのです。陝西省の会社が販売していた粉ミルクにメラミンが発見された最近のケースでは、地元市の質検総局が同商品に検査合格を出したとして非難される一方、同局の食品検査担当者は「検査のために送られたものは合格のものであった」として、非はあくまで会社にあると主張。結局2月2日には同社の幹部が逮捕されましたが、あれだけ世間を騒がしたメラミン事件が再び発覚したことで、地元メディアも大きく取り上げていました。2月26日付けニュースでも、2008年のメラミン混入ミルク事件後に、再び故意にメラミン混入を行い捕まった上海の企業関係者の裁判が始まり、最高では死刑の可能性もあると伝えられています。

 そうこうしているうちに、ここ数日では海南省産のササゲ(小豆の小さいような、お赤飯にも使われる豆です)から残留農薬が発見されたとして、これまた報道が激しくなってきました。確かに人体に影響がどのくらいあるかいう議論よりは、とにかく指標を超えていたという報道に徹していて、実際にどの程度深刻なものかはわかりませんが、今後冬での野菜栽培の拠点とするよう各種計画でも考慮されていた海南野菜が大きな痛手を受けたのは間違い無さそうです。

 日本においても引き続き中国製食品への疑念は消えていないですし、鳩山総理も昨年10月に中国に来た際の一つの成果として「日中食品安全推進イニシアティブ」設定ということで温家宝総理とも合意しています(以下リンク参照)ところ、日本政府もこういった中国の新しい動きに注目していくのでしょうか。新しく設立された委員会がこういった問題にどういった役割を果たすのか、実際にどの程度の権限を持つようになるのか。まずは省庁を超えたメンバーによるこういった委員会ができたことを評価しつつ、それらの効果を見るにはもう少し時間がかかりそうです。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/jc_sk_0910.html