時間がないからできない、

ということばが僕はきらいである。

忙しくてどうのこうの、

というのもやはりきらいである。



時間がないくらいで、できないことは、しょせんやりたくなかったことなのだと思われる。


人生はいっかいしかない、と思う。

(生まれ変わるって言う人もいるけど、
記憶に残せるのがいっかいなら、それはいっかいなのだ。)

そのいっかいの人生も、せいぜい60年くらいである。

たいていの人間は60を過ぎると、体力的にはかなり寂しいことになるはずだ、
と僕は思うからである。

ということは、僕にはあと30年も残ってないじゃないか。

いや、20年とちょっとといったほうが、あるいみ正確かもしれない。

だとすると、カレンダーが、20枚と少し。

まっしろなカレンダーは、あと20枚かそこらなんだなあ。


なんて頼りない、だからこそ貴重な、人生の余白たち!



あと何冊、本が読めるのだろう。
あと何回、海に行って心から楽しいと感じるのだろう。
あと何人の、素敵な人たちに出会えるのだろう・・・。

そんなことを考えていたら、焦りと期待のいりまじった、妙な気持ちになりましたね。


ここはもう、
太く短く生きてみたい。
なんて。


こんなへんてこなことを、「つい」考えてしまうのも、
秋のしわざなのかもしれない。


急に、日が短くなったもの。


きっとそうだ。

そんな気分のときに、村上春樹の短編は、王道。


村上 春樹
「象の消滅」 短篇選集 1980-1991