イベントのコンペに負ける要素について | イベントやエンタメの周辺、バックステージ

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イベントのコンペに参加することがある。広告代理店の下でやる場合もあるが、例えば装飾会社やプロダクションの下で、主に演出セクションとして参加することも少なくない。

勝つこともあるが、負けることもある。負けるのはプランが悪い場合だ。その悪いプランとは何か。殆どがクライアントから予算を提示されている。代理店やプロダクションがまず、法外な利益を始めに差っぴいて、残りの予算でプランをつくると、当たり前だが負ける。1000万の予算から400万を取って、残りの600万でできること。600万が実行予算となるので、どうしてもしょぼいプランしかできず、800万の実行予算には勝てない。

もうひとつの負けるパターン。クライアントの意向に沿っていないプラン。オリエンでは、クライアントから「こうしてほしい」「こういった条件でプランしてください」が提示されている。そこをプラン側が勝手に「こういうのが面白い」と主張し、全く違うものを作れば、それは評価されない。それが如何に良いものであろうと、クライアントの思惑よりは効果があるものであろうと、ダメなのだ。また予算を大きくオーバーしたプランもダメだ。高かきゃいいに決まっている。基本予算からしてオーバーしているのは言うに及ばず、プレゼンで散々説明した挙句、「尚、これと、これと、これと、これはオプションです」と締めるやり方があるが、クライアントからすれば「殆どオプションじゃん!」となってしまう。

まだある。例えばPRを目的とした展示ブースとPRイベントの展開を求められているとする。そのコンペを装飾会社が受ける。その会社のデザイナーはブースの設計を担当し、例えば私のような演出プランナーがPRと演出をプランニングする。装飾会社が受けているので、予算の多くを施工に持ってゆき、特徴を出そうとするのはわかる。だが施工予算が7割を占め、残りの3割で演出、キャスト、映像ソフト、音効、現場進行、ブース運営を賄うのは不可能で、要は予算のバランスが悪いのだ。施工には映像・照明・PAのハードを含むことが多いが、そのシステムがショボすぎて、どこかの会社の会議室レベルのAV環境しかなく、調光もできない。映像はビデオではなく、自ずとPPTになり、音はOLもせず、マイクのON/OFFはナレーター自らが行い、ステージの照明は点きっぱなしとなる。キャストの衣装もユニクロレベルか、下手すればずべて自前だ。これでは中学校の文化祭だ。

またプレゼンが下手な場合もある。上記のような場合、代理店機能を果たす装飾会社が、自社で全て請け負っている感を演出したいあまり、PRのプランナーや演出担当者をプレゼンに参加させず、プレゼンを全てデザイナーが行う。デザイナーはブースデザインをしているので、当然、デザインのコンセプトを語ることはできる。だがその上位のPRについてはロジックがなく、与件をそのままコンセプトとして語ってしまったりする。また演出についても同様で、デザイナーが畑違い演出を説明することはできない。もちろん演出のコンセプトや、具体的な演出の一つ一つが何故、クライアントのPRにかなっているのかは、企画書に記述しているのだが、その機微までは理解していないので、演出ページの朗読にとどまってしまい、人の理解共感を得ることは出来ないで終わってしまう。企画書の朗読がプレゼンと考えている人間は驚くほど多い。企画書に書いている以外のことを、直接、身振り手振りを交えて伝えるパフォーマンスがプレゼンテーションなわけで、負けるデザイナーにこの資質が備わっていないことが少なくない。

昨今のプレゼンではブースやステージはCGパースで表現される。それを見せながら、「向かって右側にはこれがあり」「左手奥にはこれをレイアウトし」とする。そんなことはパースを見ればわかるのだ。ブーズの威容、プレゼンスがブランドや商品にどう影響するのか、パースに描かれていない部分を説明するのが、デザインのプレだ。ましてや施工素材をいちいち説明し、それがどう環境に配慮しているかを語るのは、エコロジーの展示会でしか通用しない。

イベントのプレゼンでは、プランナー、あるいは演出担当がデザイナーに成り代わり、デザイン施工を説明することは多い。何故ならば、企画、または演出の意向で「こういったものを作って欲しい」とデザイン側に依頼するからだ。全ては企画コンセプトのもとにプランニングされ、企画コンセプトに串刺しされたプランとなる。ブースデザインコンセプトの下に、PRや演出がくるようでは説得力が無い。

プレゼンはプランのパフォーマンス性と説得力、そして「この会社に任せていい」という信用を得るものだ。ここのプランのクォリティの高さだけではない。



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